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2012年1月10日 (火)

「クラウド」普及に法的課題?(その2)

19日の日経朝刊は、クラウドサービスが外為法の特定技術情報規制に抵触する場合がありうるとして、つぎの「経産省安全保障貿易管理課のコメント」を掲載した。

「外国にあるサーバーで管理する情報が、原子力や武器などの外為法の規制対象技術である場合でも、暗号などを用いて実質的に外国のサーバー運営会社が入手できないようにしてあれば(経産省の)許可は不要」。

これは間違いだ。しかも、二重、三重に間違っている。

第一に、「特定技術でも、暗号化していれば許可は不要」というのが経産相の公式見解であるとすれば、大問題だと思う。暗号化していようがしていまいが、法の定める特定技術に該当する限り、外為法25条に違反することは明白だ。

第二に、サーバーに情報を記録する行為が、外為法の規制する「取引」に当たるとする解釈も間違いだ。レンタルサーバーというのは、たとえるなら賃貸マンションのようなものであって、店子は賃借部分を契約の範囲内で自由に使えるし、大屋は賃貸部分に勝手に立ち入ったり、使用したりすることはできない。日本から中国内に借りている自分の部屋宛に荷物を送ったところで、その荷物を受け取るのは自分自身であって大屋ではない。同じように、サーバーに情報を記録しても、その情報をサーバー運営会社は見られないのだから、外為法の定める「取引」には当たらない。要するにサーバーに情報を記録する行為は、同一法人内での情報処理に過ぎないのだ。万一、サーバーの運営会社が、契約違反を犯して記録情報を読み取ったとしても、それは情報を書き込んだ者との合意に基づく情報の授受ではないから、やはり「取引」に当たらない。大屋が勝手に部屋に侵入して冷蔵庫の中のケーキを食べたとしても、店子との間にケーキの「取引」があったとはいえないのと同じだ。これは取引ではなく窃盗である。情報を盗まれた方は、しっかり暗号化しなかったことを非難されるかもしれないが、それは、外為法違反の問題ではない。

第三に、外国にサーバーがあったとしても、外国間で国境をまたぐ特定技術情報の授受には、原則として、外為法の適用はない。外為法は日本の法律である以上、原則として、日本国内にしか適用がないからだ。この日経記事は、日本から海外のサーバーを経由して、情報共有を行う場合を前提にした記事であることに、注意する必要がある。

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