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2012年1月27日 (金)

大動脈解離顛末記(5)  〈食事中は読まないでください〉

大動脈解離の直接の原因は、血管内膜の傷と高血圧とされている。血管内膜に傷があると、血流が中膜に進入する。そのうえ血圧が高くて中膜が弱いと、血流が中膜を破りつつ、外膜と内膜の間をこじ開けて進む。さらにその原因としては、加齢のほか、酒・煙草、ストレス、高脂血症などがある。ある種の血管の病気は、内膜を弱くする。大動脈解離には遺伝的要因もあるらしく、血管・心臓系の病気で早死にした親戚がいれば要注意とのこと。医師との雑談によれば、ある人種、ある種の体型、ある種の手指の形をした人間には大動脈解離発生の確率が高いのだそうだ。非常に興味深い話だったが、不正確ではいけないので、ここには書かない。若い女性には少ない。これは女性の方が出産時の高血圧に備え、血管が丈夫にできているかららしい。若い女性の体は、だいたいにおいて男性より頑丈だ。

動きとしては、体幹をねじる動きが、一番悪いらしい。二重構造のホースを渡されて、「指や物を突っ込まずに、外膜と内膜の間に隙間を作ってください」と言われたら、たいていの人は、ホースを捻るだろう。自動車の運転席から振り返って後部座先の荷物を取ろうとするときに、大動脈解離が発生した事例は多いという。

私の唯一の運動と言えばゴルフだが、ゴルフも、体幹を捻るから良くない、と言われた。ゴルフをしない方も、石川遼の体のねじりを見れば、納得されるだろう。私もいったんは納得したが、その後、「そもそも自分のゴルフは体幹を捻っていたのか?」という根本的な疑問がわいた。素人ゴルファーは、体幹をひねる動きより、体を右から左に振る(スウェー)動きによってクラブを振るからだ。

大動脈解離になった有名人としては石原裕次郎〈1981〉、加藤茶〈2006年〉などがいる。最近では日本のキーボード奏者の草分けである深町純氏が64歳で亡くなった。

さて私であるが、48歳の「メタボ気味」中年だから、清廉潔白とはいえない。弁護士という仕事柄、ストレスも多い。8月以降週三日という出張がつづき、12月までは講演やら雑誌原稿の締め切りやら何やらを抱えて多忙だった。

他方、定期健康診断で再検査を指示されたことは一回もなかったし、動脈硬化の検査値は正常だった。もちろん体調上の前兆は一切無い。多忙とはいえ、他の弁護士と比べ、私だけが特段多忙なわけでもない。ストレスも同様だ。また、発症当時、私はトイレの個室にいたが、トイレットペーパーが信じがたい場所にあって無理に体をひねった事実もない。近親者に血管・心臓系の病気で早死にした人もいないし、統計上発症の多い体型でもない。

要するに、思い当たる節がないのである。あのときトイレの中に悪魔がいて、命を奪う相手を探していた、という話の方が、腑に落ちる。

司法研修所同期同クラス50人のうち、この20年で二人を失った。二人とも不摂生とは無縁の、健康な男だった。結局のところ、病魔が誰の命を狙い、誰の命を奪うかは、人知を越えたところにある、といわざるをえない。予防の手を尽くすに超したことはないが、悪魔がその気になれば、易々と飛び越える。

確実なのは、私の大動脈の腰のあたりに、なぜか不明ながら、弱い箇所があって、様々な要因が重なり合って破れた、ということだ。逆に言えば、ほかに弱い箇所が無かったことが、私の命を救ったともいえる。内膜から中膜に進入(エントリ)した血流は、再び内膜を破って本流に戻る。これをリエントリという。リエントリが多ければ多いほど、また、リエントリが心臓に近いほど、事態は深刻になる。

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コメント

こんにちは、吉野と言います。

体幹をねじる動きが、一番悪いらしい。。

なるほどそうなんですか、
運動は言い事だけではないんですね。

素晴らしい記事で大変
参考になりました。

ありがとうございました。

また遊びに来ますね。

投稿: アミノ酸で若返り◆吉野ゆう | 2012年2月 4日 (土) 13時51分

4月に大動脈解離を発症し入院退院。 今はノンビリ休業中。体を捻った覚えはまるでなし。自覚症状らしきものも一切なし。何なんだ一体!!と 救急車の中で 悪魔とやらにツッコミを入れてたのを覚えてます(-"-;)

投稿: 山本まちゃこ | 2013年6月 2日 (日) 16時18分

父が大動脈解離で今年の3月亡くなりました…
前兆?というのがなくて、いきなり倒れてそのまま帰らぬ人になりました…
事前に病院に連れて行っていたら早期発見できたのかなぁと思う毎日です。医者には見つけるのが困難というか、自覚症状もないし病院に来ていたとしても今どうなっていたか分からない状態と言われました。
怖い病気です、、、

投稿: airi | 2013年6月14日 (金) 20時42分

大動脈乖離第二段leftrightつい最近念のためにCTとったら乖離が進化してて しょうがないからステント治療する事になりまして…down ヘタすると脚が動かなくなると言われて…優先順位で脚より命ってとこでしょうかdowndown
とりあえず明後日手術します。脚が無事であるように 祈ってねwink

投稿: まちゃこ | 2013年11月17日 (日) 14時50分

まちゃこさん、お気持ちお察し致します。脚ということは、解離箇所が私と同じということですね。私はステントをまだ入れていませんが、担当医の話によれば、現代医学の水準では、さほど心配する必要はないようです。ご無事をお祈りします。

投稿: 小林正啓 | 2013年11月17日 (日) 17時20分

それっきりでごめんなさいsweat01ステント手術は無事終了、脚にも障害が出ず、術後2ヶ月たった今は、背中の重い感じも殆ど無くなり、全く安心の日々です。ただ 新しい技術なので10年間の追跡が必要だそうで 最初は半年に一度、あとは一年に一度の感じらしいです。CTで血管内に収まったステント…いやぁ たいしたもんだと。
大瀧詠一さんが同じ病気で救急車の中で亡くなったと聞き、私も一歩間違えたらと…sweat02 ほんの少しの違いが生死を分けた この病気の不可思議な所です。大抵の病気には発症するまでの過程がありますが この病気は普通の健康診断では見つけにくく ある日突然 何の前触れも無くドーンとやってきますsweat01時間が勝負なので すぐに救急車にて心臓血管外科のある 病院に行く事をお薦めします。常日頃から調べておくのがいいでしょう。

投稿: まちゃこ | 2014年1月18日 (土) 18時42分

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