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2012年2月 1日 (水)

産業用ロボットはガラパゴス化するのか

ロボ・ステーション」によると、安川電機は、80Wのモーターを採用することにより、人間との共存を可能とするロボットを開発し、「2011国際ロボット展」で初公開したという。

これは産業用のロボットだが、産業用ロボットではない。解説しよう。

一般的な解説によれば、労働安全衛生法上の「産業用ロボット」には、80W以下のモーターしか備えないロボットは該当しない(労働安全衛生規則第36条第31号の規定に基づき厚生労働大臣が定める機械を定める告示)。「産業用ロボット」に該当しない場合、労働者の教育(労働安全衛生法59条)や、危険防止措置(労働安全衛生規則150条の4)が不要になる。80W以下のモーターしかないなら、労働安全衛生法上の「産業用ロボット」に該当しないから、これらの規制を外すことができる。その結果、同じスペースで人間の労働者との共同作業が可能になる。

同様の発想では、トヨタのスペアタイヤ搭載ロボットが先行しているようだが、安川電機の新型ロボットは、「自重補償」という機構によって、規制ぎりぎり80Wのモーターを搭載し、トヨタのロボットに数倍する可搬重量を達成したということだ。

素晴らしい技術革新だとは思う。

しかし、この種の事例に接するたびに気になるのは、労働安全衛生規則上は、「産業用ロボット」の要件を満たす場合であっても、必ずしも安全措置を講じる義務はないし、まして、安全柵を設ける義務もない、という点だ。安全措置を講じる義務があるのは、「産業用ロボットに接触することにより労働者に危険が生ずるおそれのあるとき」に限られるし、安全措置の内容は、「さく又は囲いを設ける等」とされており、安全柵を設けなければならない、とはどこにも書いていない。動画を見る限り、安川電機の人共存ロボットは、進行方向に人間を発見すると停止するし、万一人間に接触しても、人間が容易に押し戻すことができる。この機能が完備されている限り、法文上、80Wを超えるモーターを装備していても、法律上、何ら問題ないはずだ。もし問題があるとすれば、それは現実の運用の方が間違っているのではないか。

もう一つ気になる点は、現在、産業用ロボットの国際安全規格ISO 10218-1では、この数値が削除されていることだ。つまり、「人共存ロボット」は、外国ではアドバンテージを持たない、ということになる。

もちろん、80W規制があるからこそ、新技術が開発されたわけだし、この技術は、80W規制がない国でも、人との共同作業や労働安全の分野で有用となる可能性はある。

だが一方で、日本にしか存在しない規制をクリアーするため、多額の開発費を投じることは、ロボット産業の国際競争力を削ぐことになる。

こういった規制が、ロボット産業のガラパゴス化をもたらさないのか、少し心配である。

《参考》(注;下線部はブログ主)

労働安全衛生法59

3項  事業者は、危険又は有害な業務で、厚生労働省令で定めるものに労働者をつかせるときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該業務に関する安全又は衛生のための特別の教育を行なわなければならない。

労働安全衛生規則36

法第59条第3項の厚生労働省令で定める危険又は有害な業務は、次のとおりとする。

31号 マニプレータ及び記憶装置(可変シーケンス制御装置及び固定シーケンス制御装置を含む。以下この号において同じ。)を有し、記憶装置の情報に基づきマニプレータの伸縮、屈伸、上下移動、左右移動若しくは旋回の動作又はこれらの複合動作を自動的に行うことができる機械(研究開発中のものその他厚生労働大臣が定めるものを除く。以下「産業用ロボット」という。)の可動範囲(記憶装置の情報に基づきマニプレータその他の産業用ロボットの各部の動くことができる最大の範囲をいう。以下同じ。)内において当該産業用ロボットについて行うマニプレータの動作の順序、位置若しくは速度の設定、変更若しくは確認(以下「教示等」という。)(産業用ロボットの駆動源を遮断して行うものを除く。以下この号において同じ。)又は産業用ロボットの可動範囲内において当該産業用ロボットについて教示等を行う労働者と共同して当該産業用ロボットの可動範囲外において行う当該教示等に係る機器の操作の業務

労働安全衛生規則150条の4

事業者は、産業用ロボットを運転する場合(教示等のために産業用ロボットを運転する場合及び産業用ロボットの運転中に次条に規定する作業を行わなければならない場合において産業用ロボットを運転するときを除く。)において、当該産業用ロボットに接触することにより労働者に危険が生ずるおそれのあるときは、さく又は囲いを設ける等当該危険を防止するために必要な措置を講じなければならない

労働安全衛生規則第36条第31号の規定に基づく厚生労働大臣が定める機械(昭和58625)(労働省告示第51)

労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32)36条第31号の規定に基づき、厚生労働大臣が定める機械を次のように定め、昭和5871日から適用する。

労働安全衛生規則第36条第31号の厚生労働大臣が定める機械は、次のとおりとする。

一 定格出力(駆動用原動機を二以上有するものにあっては、それぞれの定格出力のうち最大のもの)80ワット以下の駆動用原動機を有する機械

二 固定シーケンス制御装置の情報に基づきマニプレータの伸縮、上下移動、左右移動又は旋回の動作のうちいずれか一つの動作の単調な繰り返しを行う機械

三 前二号に掲げる機械のほか、当該機械の構造、性能等からみて当該機械に接触することによる労働者の危険が生ずるおそれがないと厚生労働省労働基準局長が認めた機械

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