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2012年2月 3日 (金)

法律相談センター廃止の損得

大阪弁護士会市民法律相談センターの赤字は年々増大し、平成23年度は15000万円を超え、数年後には2億円を超える見通しだ。

赤字の原因は減り続ける法律相談件数にあり、法律相談件数減少の原因は、法テラスの発足と発展にある。しかも、いわゆる過払いバブルの終焉は、今後の法律相談件数をさらに減少させるし、将来、法テラスが資力要件を緩和ないし撤廃すれば、弁護士会法律相談センターは壊滅的な打撃を受けるだろう。

歴代執行部は赤字解消に努めたが、どれも焼け石に水で終わった。弁護士会法律相談センターの赤字は構造的なものであり、増えこそすれ、減ることはない。

もちろん、弁護士会の財政規模から言って年2億円程度の赤字は許容範囲という見解もありうる。だが、会財政を支えるための、年50万円を超える会費負担は、多くの会員にとって限界を迎えつつある。今後弁護士会内で、会費減額への世論が興隆することは必至であり、その際、真っ先にリストラの対象になるのは、法律相談センターであろう。なにしろ、会員数3900名の大阪弁護士会は、会員数6500人を超える東京弁護士会より多い、100名の事務職員を雇用していて、その半分が法律相談センター業務に従事しているのだ。もし、法律相談センター(高齢者・障害者センターや遺言・相続センターを含む)を廃止し、これに携わる職員をリストラすれば、平成22年度ベースで、年36000万円もの経費を節減できる。会員1人あたり年12万円の負担減だ。

また、法律相談センターを廃止すれば、法律相談センターから受けた事件の弁護士報酬に課せられる負担金(上納金)もなくなるところ、これが年17000万円である。

さらに、破産管財人報酬等にかかる負担金も合わせて廃止してしまえば、法律相談センター分と合わせて65300万円もの負担減となる。

法律相談センター廃止分と合計して10億円超。3000人の会員弁護士1人あたり、年30万円以上の負担減だ。これは、会費を半分にしても、おつりが来ることを意味する。

但し、問題はそれほど単純ではない。

弁護士会が法律相談センターを廃止するということは、法律相談センター経由で事件を獲得している弁護士の収入の途を閉ざすことになる。単純計算によると、法律相談センターを経由して受任する事件が弁護士にもたらす売上は、約20億円であり、弁護士1人あたり約60万円を超える。ということは、平均ベースで見ると、弁護士会法律相談センターを廃止するとことは、弁護士1人あたり、年約30万円の会費を節約する代わり、60万円以上の売上を減らすことを意味する。

だから、平均ベースで見れば、法律相談センターの廃止は、弁護士にとって、明らかにマイナスだ。

だが、これはあくまで平均の話である。実際には、法律相談センター経由の事件を受任するのは若手が多く、ベテランは少ないと推定される。一方、ベテラン弁護士は、会費を負担させられているだけで、法律相談センター経由の事件を受任する機会は少ない。

つまり、法律相談センターは、その実態において、ベテランが運営経費を負担し、その果実を若手が受け取るという形で、所得の再分配機能を果たしている、ともいえるのである。(続く)

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コメント

弁護士会の法律相談は、最近は営業・集客的なものとしての面が強調されていますが、もともとはプロボノ的な側面の方が強かったのではないかと思います。
私の登録当時(平成12年)は、まだそんな雰囲気がありました。
そのためか、いまでも公益活動の単位に加えられています。

そうすると、廃止論議の中では、市民の権利擁護(というと大上段ですが)のための制度を経済的な損得だけで損なっていいのか、法相を廃止するなら、何も生み出していない人権系の委員会だって…、という声が上がってくるのではないかと思っています。

投稿: しんたく | 2012年2月 3日 (金) 10時47分

いつもありがとうございます。
赤字だから廃止してしまえ、というなら、弁護士会活動の大半は廃止されてしまうので、要はバランスの問題だと考えます。いいかえるなら、会費負担感が増大する中で、身の丈に合った弁護士会事業のあり方を検討するべき時期に来ているのではないか、さらにいいかえるなら、墜落していく飛行機からどの荷物を放り出して高度を保つか、という問題ではないかと考えます。その中で、弁護士(会)の公益性を声高に主張する人たちが出てくることは確実でしょうが、私はそのような主張に与しません。

投稿: 小林正啓 | 2012年2月 3日 (金) 11時14分

本筋と関係ない点での指摘で恐縮なのですが・・・

上納金廃止で弁護士一人当たりの負担額が減る、という話はわかるのですが、
これが「会費を半分にしても、おつりが来ることを意味する」というのがわかりません。
管財人の上納金は会の不労所得といってもいいくらいのものであり、これを廃止すれば会の収入は単純減となるはずです。
そうなると減収を補うために個々の会員の会費を上げるということになるのではないでしょうか。
実際、私の所属する単位会では数年前に上納金が廃止されましたが、会費は倍近くに増額されました。

投稿: ひこいち2 | 2012年2月 3日 (金) 11時40分

ひこいち2さん、コメントありがとうございます。
次のエントリに書く予定ですが、大阪弁護士会では、実は予算が余っています。だから、上納金を廃止しても、会財政は破綻しません。このあたりは、単位会によって事情が違うのだと思いますが、一般的には、都市の弁護士会の方が、会財政は健全なのかもしれません。

投稿: 小林正啓 | 2012年2月 3日 (金) 14時06分

私はいわゆる若手ですが、弁護士会の登録希望用紙にはすべて×で出しています。したがって、会費をとられるだけで何の恩恵もありませんので、こういう施設はすべて廃止してほしいですね。

ちなみに、上納金の率を下げてかわりに一般会費を上げる、ということも決められてしまったので、損するばっかりです。

投稿: a | 2012年2月11日 (土) 20時27分

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