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2012年2月27日 (月)

「むやみに」と「みだりに」と「みだらに」

問題です。市営バス運転席の貼り紙として、正しいのはどれでしょう。

①「運転手にむやみに話しかけないでください」
②「運転手にみだりに話しかけないでください」
③「運転手にみだらに話しかけないでください」

大阪府堺市が、「堺市防犯カメラの運用等に関するガイドライン(案)」について、パブリックコメントを求めている。「むやみに」はその案文中以下の2箇所、使われている。

  人には、むやみに自分の姿や行動を撮影されない自由(プライバシー)がある。

  設置者等、管理責任者および操作担当者は、防犯カメラの画像と、画像から知り得た個人に関する情報をむやみに人に漏らしてはならない。

この「むやみに」の使い方は正しいだろうか。

『大辞林』によると、「むやみに」の意味は「①結果を考えずに行うこと。あとさきを考えずにすること。また、そのさま②度を超しているさま」とある。

一方、「みだりに」の意味は、「①(規制などを受けずに)勝手気ままなさま。ほしいまま②考えの浅いさま。思慮のないさま。無分別③『みだらに』に同じ④秩序のないさま。筋道の立たないさま。」とある。

これでは、ニュアンスの差はよく分からない。そこで冒頭の問題に戻るわけだが、「むやみに」と「みだりに」では、どちらが、話しかけることに対する規制の度合いが強いか。これは、「みだりに」の方が強いだろう。つまり、「みだりに」は「用がないのに、必要が無いのに」という意味だが、「むやみに」は「必要が無くても良いが、限度を超えてはいけない」という意味になる。平たくいうと、運転手と天気の話など世間話をすることは「むやみに」には当たらないが、「みだりに」には当たりそうだ。そうだとするなら、乗客や通行者の安全を守るという目的に照らせば、正しい言葉遣いは「むやみに」ではなく「みだりに」だと思う。

ところで、「堺市防犯カメラの運用等に関するガイドライン(案)」で問題となるのは、プライバシー権との調整問題だ。このプライバシー権は、最高裁の判例によって、憲法に由来する基本的人権とされており、判決文上、このように表現されている。

何人も、その承諾なしに、みだりにその容ぼう・姿態(以下「容ぼう等」という。)を撮影されない自由を有する。

ここで使われているのは「みだりに」であって「むやみに」ではない。また、「法令検索システム」で検索すると、「みだりに」を使用する法令は147件あるが、「むやみに」を使用する法令は存在しない。

以上からして、本ガイドラインに「むやみに」を用いるのは、法令に使用する言葉としては異例だし、最高裁判所の判例に照らしても問題がある。まして、「みだりに」と「むやみに」のニュアンスの違いを意識してあえて最高裁判例と異なる表現を用いたというのであれば、このガイドラインは当該判例を実質的に曲げようとするものであり、判例違反として違法無効になる可能性がある。

そう思ってパブコメを投稿したが、採用してくれるでしょうか。

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