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2012年3月26日 (月)

AIJ事件に群がる弁護士

321日の日本経済新聞朝刊は、「ある大手法律事務所はAIJの被害にあった総合型年金基金などに一斉に『委任同意書』を送った。この法律事務所の弁護士が資産返還や損害賠償などで必要な折衝・交渉の代理人を務めると申し入れる内容。関係者によれば、20日までに30以上の企業年金がこの法律事務所への委任への同意書を返送したという。同法律事務所は損害賠償請求などの集団訴訟を視野にAIJなどと折衝・交渉を進めるとみられる」と報じた。

「委任同意書」とは聞き慣れない言葉だが、要は「当事務所に依頼してください」という勧誘だろう。この「大手法律事務所」は、何らかの方法でAIJの顧客名簿を入手し、しらみつぶしに営業をかけているようだ。

「アンビュランス・チェイサー(Ambulance chaser)」という言葉がある。直訳すれば「救急車追跡人」だが、意味するところは、事故(=人の不幸)を商売の種にする悪徳弁護士である。アンビュランス・チェイサーに問題があるのなら、この「大手法律事務所」の営業のやり方はどうなのだろう。

日弁連は、「弁護士の業務広告に関する規程」を定めており、その6条は、「弁護士は、特定の事件の当事者及び利害関係者で面識のない者に対して、郵便又はその他これらの者を名宛人として直接到達する方法で、当該事件の依頼を勧誘する広告をしてはならない。ただし、公益上の必要があるとして所属弁護士会の承認を得た場合についてはこの限りでない」と定めている。これは、わが国の弁護士による「アンビュランス・チェイサー」行為を禁止する規程だ。AIJの事件で被害を受けた年金基金は、「特定の事件の当事者」にあたるから、この「大手法律事務所」が、面識のない年金基金に対して「委任同意書を送った」行為が、「当該事件の依頼を勧誘する広告」に当たる場合には、「公益上の必要があるとして所属弁護士会の承認を得た」のでなければ、同規定違反となる。

この「大手法律事務所」はどこなのだろうと思って、FBで聞いてみたら、「お友達」から、直メールを含め、複数の法律事務所名を教えていただいた。何のことはない、東京の大手法律事務所は、AIJ事件の顧客争奪戦を繰り広げているのだ。

そうなると、冒頭の新聞記事も怪しくなってくる。これは、記事自体が、実質的に広告である可能性が高い。しかし、この法律事務所の行為が、万一、日弁連の規程に違反する場合は、この新聞記事も品位を問われることになる。

弁護士ではない一般市民は、このような弁護士の行動をどう見ているのだろう。ちなみに、FB上のコメントでは、「これこそ司法改革の求めた姿」と絶賛する弁護士の声が複数あった。もちろん皮肉だけどね。

それはさておき、AIJ事件に関し、法律事務所への委任を検討している年金基金には、契約条項をきちんとチェックするようアドバイスしておく。あとで、より好条件の弁護士に乗り換えても、違約条項に縛られて報酬をがっぽり取られないよう、気をつけられたい。

"Did you hear about the lawyer hurt in an accident?"
  "An ambulance stopped suddenly."

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コメント

職務規程の名宛人は弁護士でしかないので、日経記事の規程違反を論じる余地はないと思いますよ。弁護士の常識が世間の常識だと思ったら大きな間違いです。ずれてますね。

投稿: 弁護士 | 2012年4月16日 (月) 09時49分

日経記事が規程違反をしているとは、どこにも書いていませんが。あなたは本当に弁護士ですか?読解力に疑問ありですね。

投稿: 小林正啓 | 2012年4月16日 (月) 10時16分

最近届いた,解説「弁護士職務基本規程」第2版21頁「4品位を損なう方法」の解説部分が,本件に妥当すると思いますが。

投稿: 上記とは別の弁護士 | 2012年4月17日 (火) 14時57分

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