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2012年3月28日 (水)

診察室内への防犯カメラの設置について

病院の院内暴力防止・防犯の観点から救急外来の診察室に防犯カメラを取り付けたいと思っています。プライバシーの侵害に当たるのでしょうか」という質問をネット上で見つけた。

この問題に対する回答はこうなる。

まず押さえるべき基本は、病院という「施設」の内部に防犯カメラを設置することは、この病院の施設管理権に属する。「施設管理権」とは、文字通りその施設を管理する権限のことだから、誰をその施設に入れ、誰を入れないかを決定する権限でもある。従って、施設管理者は、その施設内に防犯カメラを設置することも自由だし、撮影を拒否する人の来場を拒否することも自由だ。これが基本である。

だが、施設管理権といえども、常に必ずプライバシー権に優位するわけではない。プライバシー権の保護がとりわけ強く要求される場所では、施設管理権が劣後する場合もある。例えば、施設管理権が最も強く働くのは私邸だが、だからといって、トイレや浴室にカメラを設置して良いとは言えない。また、駅や市役所など、公共性の強い施設、百貨店など、本質的に不特定多数の来場を前提にしている施設では、公道に準じたプライバシー保護が要求されよう。

結局のところ、問題となるプライバシー権の保護の強さと、当該施設の性質、防犯カメラ設置の目的や撮影方法、事前告知の有無内容等を考慮していくことになる。

病院内での防犯カメラ設置は、基本的に、当該病院の施設管理権者の自由だが、病院の持つ公共性や、本質的に不特定多数人の来場を前提にした施設であることからして、プライバシー保護の要請も軽視できない。また、特に強いプライバシー保護が要請される診療科目もあろう。

冒頭の質問は、「院内暴力防止・防犯の観点から救急外来の診察室に防犯カメラを取り付けたい」というものである。救急外来はその性質上、泥酔者やせん妄状態の患者を比較的多く診察するため、院内暴力等の問題発生も多いようだ。したがって、防犯カメラ設置の目的には正当性が認められる。あらゆる種類の患者を取り扱う以上、画角の調整等によってプライバシーへ配慮することは必要だろうが、撮影方法に問題が無い限り、防犯カメラの設置は法律上許される。

なお、質問者は、「防犯カメラ作動中」とのステッカーを貼付すれば良いのではないかとお考えのようだが、緊急外来の場合、意識を失い、あるいは意思能力を失って搬送される患者も多く、これらの患者は、ステッカーの中身に同意して診察を受けるわけではない。ステッカーの貼付は必要だが、それが免罪符になるわけではないことに、注意を要する。

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2012年3月26日 (月)

AIJ事件に群がる弁護士

321日の日本経済新聞朝刊は、「ある大手法律事務所はAIJの被害にあった総合型年金基金などに一斉に『委任同意書』を送った。この法律事務所の弁護士が資産返還や損害賠償などで必要な折衝・交渉の代理人を務めると申し入れる内容。関係者によれば、20日までに30以上の企業年金がこの法律事務所への委任への同意書を返送したという。同法律事務所は損害賠償請求などの集団訴訟を視野にAIJなどと折衝・交渉を進めるとみられる」と報じた。

「委任同意書」とは聞き慣れない言葉だが、要は「当事務所に依頼してください」という勧誘だろう。この「大手法律事務所」は、何らかの方法でAIJの顧客名簿を入手し、しらみつぶしに営業をかけているようだ。

「アンビュランス・チェイサー(Ambulance chaser)」という言葉がある。直訳すれば「救急車追跡人」だが、意味するところは、事故(=人の不幸)を商売の種にする悪徳弁護士である。アンビュランス・チェイサーに問題があるのなら、この「大手法律事務所」の営業のやり方はどうなのだろう。

日弁連は、「弁護士の業務広告に関する規程」を定めており、その6条は、「弁護士は、特定の事件の当事者及び利害関係者で面識のない者に対して、郵便又はその他これらの者を名宛人として直接到達する方法で、当該事件の依頼を勧誘する広告をしてはならない。ただし、公益上の必要があるとして所属弁護士会の承認を得た場合についてはこの限りでない」と定めている。これは、わが国の弁護士による「アンビュランス・チェイサー」行為を禁止する規程だ。AIJの事件で被害を受けた年金基金は、「特定の事件の当事者」にあたるから、この「大手法律事務所」が、面識のない年金基金に対して「委任同意書を送った」行為が、「当該事件の依頼を勧誘する広告」に当たる場合には、「公益上の必要があるとして所属弁護士会の承認を得た」のでなければ、同規定違反となる。

この「大手法律事務所」はどこなのだろうと思って、FBで聞いてみたら、「お友達」から、直メールを含め、複数の法律事務所名を教えていただいた。何のことはない、東京の大手法律事務所は、AIJ事件の顧客争奪戦を繰り広げているのだ。

そうなると、冒頭の新聞記事も怪しくなってくる。これは、記事自体が、実質的に広告である可能性が高い。しかし、この法律事務所の行為が、万一、日弁連の規程に違反する場合は、この新聞記事も品位を問われることになる。

弁護士ではない一般市民は、このような弁護士の行動をどう見ているのだろう。ちなみに、FB上のコメントでは、「これこそ司法改革の求めた姿」と絶賛する弁護士の声が複数あった。もちろん皮肉だけどね。

それはさておき、AIJ事件に関し、法律事務所への委任を検討している年金基金には、契約条項をきちんとチェックするようアドバイスしておく。あとで、より好条件の弁護士に乗り換えても、違約条項に縛られて報酬をがっぽり取られないよう、気をつけられたい。

"Did you hear about the lawyer hurt in an accident?"
  "An ambulance stopped suddenly."

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2012年3月21日 (水)

勝者なき戦い~日弁連会長選挙再投票結果分析(5)~

以上を踏まえた場合、次回の再選挙に、山岸・宇都宮双方が立候補を行うだろうか。いいかえれば、立候補を辞退するべきはどちらであろうか。

山岸候補は、再投票でも14単位会しか獲れず、当選要件の18単位会の支持を得られなかった。しかし、各単位会での得票数を見ると、同点の静岡(0)、山梨(4)、三重(5)、山口(1)、秋田(4)、釧路(2)のうち4単位会を獲れれば当選していたことになる(括弧内は両候補の票差)。単純計算すれば、18単位会獲得に足りなかった票数は、たった十数票だ。

一方宇都宮は、再投票でも山岸候補に1072票の水を開けられ、これを覆すことは極めて困難である上、再選挙となった場合、18単位会を奪われる可能性は五分以上ある。

つまり、宇都宮は、再投票での獲得票数で山岸候補に敗れた上、再選挙で勝利できる可能性はとても低い。

したがって、「再投票でも動かなかった東京の浮動票を動かすほどの斬新で説得的な新公約」を打ち出さない限り、勝利の可能性がない。再出馬は、無用な混乱を招き、日弁連と弁護士全体に恥を上塗りする結果(=再選挙における再投票)に終わろう。

いいかえれば、再選挙を戦うか否かの選択は、宇都宮が新公約を打ち出すか否かにかかっていることになり、宇都宮陣営にイニシアティブが存在することになる。手ぶらでの出馬が許されないのは、宇都宮側ということだ。

しかし他方、2度にわたり18単位会の支持を得られなかった山岸側も安泰ではない。

日弁連会長選挙における単位会要件は、54単位会中「過半数の単位会の支持」を要件にしているのではなく、「3分の1の単位会の支持」を要件としている。従ってその趣旨は、単位会要件は「当選要件」ではなく、「資格要件」と解すべきだろう。平たく言えば、「最多票を取っても、3分の1の単位会の支持すら受けられないような候補には、日弁連会長の資格はない」ということだ。再投票で単位会要件を満たせなかったのは際どい勝負であったとはいえ、アウトはアウトである。

結局のところ、今回の日弁連会長選挙は、資格要件すら満たせない山岸候補と、そんな候補にさえ敗れた宇都宮候補の戦いであり、実質的に見るなら、勝者のいない戦いだった、ということになる。そして日弁連は、その代表者すら自力で選べない団体に成り下がった事実を、世間に晒した、ということになる。

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勝者なき戦い~日弁連会長選挙再投票結果分析(4)~

再選挙において、宇都宮候補・山岸候補が再出馬した場合、山岸候補が18単位会を獲る可能性は五分か、それよりやや多いと予想する。そうなると、宇都宮陣営としては、総得票数で勝利するほか無くなる。

再投票の結果を見ると、宇都宮陣営は、東京三会での失点が大きい。東京(1612)、一弁(947)、二弁(208)の合計2767票を東京三会で失っている(括弧内は票差)。宇都宮候補が総得票数で勝つためには、山岸候補の総得票数が減らない前提では、最低でも1000票を積み増ししなければならない。ところが宇都宮候補は、東京(1025.25960)、一弁(299309)、二弁(410630)と、得票数をほとんど増やせていない(括弧内は1回目と再投票時の得票数)。

東京三会における宇都宮候補の得票数の動きは、二つのことを意味していると思う。

一つは、再投票での得票数がほとんど増えていないという事実は、現職の宇都宮候補が、東京三会の浮動票に対して、ほとんど何のアピールもできていないことを示す。いいかえれば、給費制復活活動や、法曹人口問題、震災・原発対応等の取り組みが、全く票に結びついていないということだ。したがって、宇都宮陣営としては、この2年間の取り組みを宣伝するという従前の選挙戦を戦う限り、勝ち目はない。再選されたいなら、浮動票に訴える、よほど斬新で説得力のある新公約を打ち出さない限り、1000票を積み増しすることは不可能だ。

斬新な新公約とは、たとえば「司法試験合格者数年1000人」だ。私としては、実現できない公約を掲げることはいかがかと思うし、斬新なだけで説得力がなければ逆効果だと思うが、再選を目指すなら、他に選択肢はない。

もう一つは、投票率の減少にもかかわらず、東京三会における宇都宮候補獲得票は、あまり減っていないことだ。その示すところは、東京三会における宇都宮候補支持票は、かなりコアな支持層であり、いわば宇都宮候補派と言うべき存在ということだ。宇都宮候補の支持層も、結局のところ、派閥であり、それが東京三会では、山岸陣営よりかなり小さいということなのである。東京三会での支持母体が小さい宇都宮は、本来、東京三会の浮動票に訴えなければ勝てなかったのに、今回の選挙では、浮動票層に全くアピールできなかったのである。

もっとも、宇都宮陣営にとって有利な点もある。それは、東京弁護士会が、投票率(74.19%→53.62%)とともに、山岸候補票を大きく減らした(3151.752572)ことだ。この減り方は、やはり投票率を減らした一弁(45.2%→38.63%)が、山岸候補票をほとんど減らしていない(12781256)のと対照的である。

この事実が示すことは、東弁は、派閥の統制力がかなり低下しているということだ。再選挙になって東弁の投票率がさらに低下した場合、宇都宮候補勝利に必要な積み増し票数が減る可能性が高い。減ると言っても、最低500票は積み増さないと、勝利の可能性はないだろう。

「派閥の山岸候補、無派閥の宇都宮候補」という分類があるが、間違っている。宇都宮候補を支持する地方単位会にも派閥があり、投票行動を強く統率している。統率力という点では、むしろ東京三会の派閥の方が弱いくらいだ。浮動票が1、2票という地方単位会があるのに、東京三会(特に東弁・二弁)の浮動票が数千票あるのは、東京の方が派閥の拘束力が弱いことを証明している。ただ、弱いとはいっても、規模が極端に大きいため、統率力が及ぶ構成員の数において、地方の派閥を上回っているだけなのである。

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勝者なき戦い~日弁連会長選挙再投票結果分析(3)~

再選挙に宇都宮候補・山岸候補両者が再出馬した場合、勝敗を分ける第一の要素は、山岸候補が18単位会を獲れるか、である。

山岸候補にとって、12単位会は固いと思われるから、残りは6単位会。再投票で同点だった静岡(133133)をはじめ、愛媛(5242)、大阪(10121162)釧路(2725)、広島(144123)、三重(4944)、山口(4849)、山梨(4137)、秋田(2723)、長野(9082)が、票差が小さいことからして、激戦区となりうる(括弧内は再投票における宇都宮候補対山岸候補の得票数)。

そしてこのうち、大阪を除く9単位会では、「地元ボス」の意向が、投票行動を大きく規定するだろう。派閥選挙は東京大阪など大単位会にしかないという認識は誤りだ。

とはいえ、「地元ボス」には、彼らなりの考えがあって候補者を選定しているのだから、今回と次回の投票行動がそう簡単に変わるとは思えない(ただ、永遠に選挙が続くことを阻止するため、あえてどちらかに乗り換える地元ボスはでてくるだろうが)。再投票において、上記9単位会のうち、山岸陣営が獲得したのは山口だけだから、山岸候補が再び大阪を獲れたとしても合計14単位会にとどまる。その先は、血で血を洗う1票差の獲得だ。同点の静岡(0)、山梨(4)、三重(5)、山口(1)、秋田(4)、釧路(2)は、1票が勝敗を決することになる。このうち24単位会を山岸候補が獲ると仮定すると、16から18単位会になる。

宇都宮陣営にとって逆風となり得るのは森川の再出馬だ。第1回投票で落選した森川票の一部は宇都宮陣営にまわり、かつ山岸陣営にはまわっていないため、森川の再出馬は、宇都宮候補票を減らす可能性がある。森川の再出馬は、本人の意思とは真逆に、山岸候補を応援する行為に他ならない。しかし、それでも立候補するのが、教条主義者の所以だろう。

森川が再出馬した場合、静岡、大阪、その他12の単位会を山岸候補が獲ると思われる。これで1720単位会だ。

つまり、再選挙において、山岸陣営が18単位会を獲得する可能性は五分か、それよりやや多いと予想する。

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2012年3月20日 (火)

情けなくてうさんくさい提言をする弁護士たち

「一人一票の国民投票で首相候補を選ぶ会」の意見広告が、319日付日本経済新聞に載った。

メンバーは伊藤真久保利英明黒田健二升永英(五十音順)各弁護士ら。一票の格差の是正を訴えているメンバーと同一のようだ。

意見広告の中身は、やや分かりにくいが、ポイントは、「憲法を改正せずに、首相公選制を実現しよう」という点にある。

少し敷衍すると、こういうことのようだ。

①国民の7割以上が、首相公選制に賛成しています。
②しかし、憲法改正して首相公選制にするのは大変です。
③でも、憲法を改正せずに、首相公選制を実現する方法があります。
④それは、首相公選制を政権公約する政党に投票して、両院の過半数を取らせる、というものです。

⑤そうすれば、その政党が、首相公選制を定める「国民投票法」を制定してくれます。

⑥これで、日本は、変わります

この広告を、どう思われるだろうか。

私は、この提言を、とても情けないと思うし、うさんくさいとも思う。

情けなく思うのは、「憲法改正をせずに、法改正によって、実質的に憲法を変更しよう」という、「こすっからい」やり口だ。

首相公選制にしたいなら、堂々と憲法を改正したらよい。本当に国民の7割が首相公選制を望んでいるなら、できるはずだ。

おおもとの法制度に手をつけず、下位法規の改正で上位法規を骨抜きにするというのは、官僚の得意技だが、いやしくも弁護士が提唱すべきことではない。日本人のプリンシプルのなさを如実に反映した提案ともいえるが、そんな弥縫策を続ける限り、日本は、絶対に、変わらない

しかも、この提案には、法解釈上の疑義が山盛りだ。

「首相公選制を政権公約する政党」に両院で過半数を取らせたとして、公約の実現をどう保証するのか、国民投票法に基づいて選ばれた首相と国会との関係(例えば内閣不信任や解散権)はどうなるのか、このやり方で、広告通り首相の任期4年が保証されるのか、その他諸々の疑問がある。つまるところ、憲法が定める権力分立体制・議院内閣制と、法律で定める首相公選制との整合が全く考えられていない。

もっともうさんくさいのは、「国民投票法の制定」と「首相公選制を政権公約する政党」への投票がワンセットになっている点だ。いうまでもなく、立法は衆参両院が多数決によって行うものであり、特定の政権政党が行うものではない。現に、多くの法案は、複数の政党の賛成によって成立している。だから、首相公選制度を立法するには、それに賛成する議員が両院で過半数ずついればよく、政権政党単独で両院の過半数を占める必要は全く無い。

ところが、この意見広告は、どこか一つの政党が、「首相公選制を政権公約」し、その政党が単独過半数を取ることを前提としている。つまり、この広告は、実は首相公選制を目的とするものではなく、その公約を掲げ(ようとしてい)る「特定の政党」の応援を目的としていることになる。

広告の右側には、3つの政党名が記載されている。民主党・自民党は、第一党第二党だからよしとして、第三党でも何でもない「みんなの党」が、残りの一つに掲げられている。他の政党は名前すらない。なぜここに「みんなの党」が出てくるのか。同党と、「選ぶ会」の関係はどうなっているのか。うさんくさくて鼻が曲がりそうである。

私は、首相公選なら大いに結構と考えているし、一人一票も大いに賛成だし、みんなの党も嫌いではない。

だが、こういう、こすっからくてうさんくさいやり方は大嫌いである。

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2012年3月19日 (月)

勝者なき戦い~日弁連会長選挙再投票結果分析(2)~

再選挙に宇都宮候補・山岸候補両者が再出馬した場合、第一の問題は、山岸候補が18単位会を獲れるか、である。

端的には、再投票で同点だった静岡(133133)、愛媛(5242)、大阪(10121162)釧路(2725)、広島(144123)、三重(4944)、山口(4849)、山梨(4137)、秋田(2723)、長野(9082)か(括弧内は再投票における宇都宮候補対山岸候補の得票数)の動向が問題だ。

このうち、大阪を除く単位会においては、派閥の動向が鍵を握るだろう。

「え?派閥って、大阪にあるんじゃないの?地方の小単位会に派閥はないでしょう?」というのは誤解である。なぜなら、人は3人寄れば派閥をつくるからだ。小規模会でも、名前をつける必要がないだけのことで、もちろん派閥はある。いいかえれば、複数の「地方ボス」がいれば、ボスの数だけ派閥がある。

地方派閥の存否を検証してみよう。弁護士ブログの中には、再投票の投票率が減少した(全体で62.28%→52.82%)ことを嘆く向きが散見される。しかし素直に考えてみれば、投票対象が4人から2人に減り、従前投票した人がいなくなるのだから、投票率は減る方が自然だ。ところが、投票率を単位会ごとに見てみると、再投票の方が増えた単位会が10(和歌山、愛媛、奈良、山梨、長野、福井、三重、高知、静岡、京都)会あり、増減ゼロの単位会が2(富山、鳥取)、投票率減少率が1割に満たない単位会が25もある。これらの単位会では、1回目の投票で尾崎・森川に投票した会員のうち相当数が、2回目の投票で宇都宮、山岸いずれかに投票したことを意味している。全54単位会中、3分の2以上の37単位会で、自然な投票率減少が見られなかったという事実は、「地方ボス」の指令による組織的な投票先の変更があったことを推認させる。

支持者が落選したとはいえ次善の選択として誰かに投票したのであって組織的行動ではない、との反論はありうる。だがそれなら、10単位会で投票率が増えたことを説明できない。また、落選により失われた「尾崎+森川票」と、12回目の投票率の増減に、下記表の通り、全く相関関係がないことの説明がつかない。

組織的投票行動の存在が一番はっきりしているのは富山で、93会員中、1回目も2回目もぴったり63名が投票(投票率67.74%)。山岸候補の得票数は1回目も2回目も7票で1票も増えていないのに、宇都宮候補の得票数は49から567票増えた。これは、1回目に尾崎又は森川に投票した7人が、一人残らず宇都宮候補に投票したことを示している。偶然の一致である可能性はゼロではないが、組織的投票行動と考える方が自然だ。きっと富山県弁護士会では、誰が誰に投票したか、ほぼ完全に分かっているのだろう。

20120318

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勝者なき戦い~日弁連会長選挙再投票結果分析(1)~

日弁連の次期会長選の再投票と開票が14日に行われた。しかし、現職の宇都宮健児氏と、山岸憲司氏の両候補がいずれも、日弁連会則が定める当選要件を満たさず当選者が決まらなかったことから、改めて候補者を募る再選挙が行われる。日弁連の会長選で再選挙は初めて。再選挙は427日の予定。

正直ウンザリだが、「乗りかかった泥舟」なので、分析をしてみたい。なお、敬称は省略させていただき、順序は基本的に現職の宇都宮候補を先にした。

当面の問題は、再選挙に宇都宮、山岸両者が立候補するか否かだ(尾崎は立候補しないことを前提にする)。この問題は、両者が立候補した場合(そして森川が再出馬した場合)の結果をどう予測するかに関わることになる。事前に勝敗がはっきりしていれば、一方が立候補しないこともありうるからだ。

再投票の仮集計(括弧内は第1回投票の集計)を見てみると、宇都宮候補74886613.25)票、山岸候補85587964.75)票で投票率は50.8362.28)%。獲得単位会数は宇都宮候補3737)、山岸候補1412)、引き分け11)となっている。

つまり、総得票数では山岸候補が1072票差で勝ったが、獲得単位数が当選要件に4単位会及ばなかったのだ。したがって、山岸が当選するには、総得票数での勝利を維持しつつ、獲得単位会数を4つ上乗せする必要がある。一方、宇都宮が勝つには、山岸の18単位会獲得を阻止しつつ、1072票差を覆さなければならない。

しかし、宇都宮が1072票差を覆すのは、極めて困難だ。したがってまず検討すべきは、山岸が18単位会を獲得できるか否かにある。

そこで単位会ごとに検討してみると、1回目、再投票の両方で山岸候補が獲得した8単位会のうち、大阪を除く7単位会、すなわち東京、一弁、茨城、和歌山、長崎、函館、徳島は、票差がとても大きいので、再選挙でも山岸が獲るだろう。

1回目では尾崎が獲った二弁、引き分けだった高知は、再投票では組織的な尾崎票が山岸陣営に乗り換えているから、再選挙でも山岸が獲るだろう。

1回目の投票で宇都宮候補が獲ったが、2回目には山岸候補が逆転した3単位会(括弧内は宇都宮候補の得票数推移)、すなわち宮崎(3738)、旭川(2524)、香川(3632)は、宇都宮陣営が得票数を全く増やせていない。したがって宇都宮が再選挙で再逆転できる見込みは低い。

以上合計12単位会は、山岸が獲ると予想される。

従って、山岸陣営の目標は、残り6単位会ということになる。

激戦が予想される単位会としては、再投票で同点だった静岡(133133)をはじめ、愛媛(5242)、大阪(10121162)釧路(2725)、広島(144123)、三重(4944)、山口(4849)、山梨(4137)、秋田(2723)、長野(9082)であろうか(括弧内は再投票における宇都宮対山岸の得票数)。この10単位中、6単位会を獲れば、山岸が当選要件を満たすことになる。

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2012年3月13日 (火)

声優そっくりにしゃべるカメに関する法的考察

ファインディングニモ』というディズニー・アニメーション映画に、田中邦衛と似た顔のウミガメ“クラッシュ”(声優;小山力也)が登場する。このカメと話ができるというアトラクション「タートル・トーク」が、2009年、ディズニー・シーにオープンしたというので行ってみた。

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場所は1920年代の客船「コロンビア号」の船尾に設けられた海中展望室。窓ガラスの向こうに“クラッシュ”が表れ、カメ語を日本語に自動翻訳する特殊マイクを通じて観客と対話する、という趣向だ。

一見して子供だましのアトラクションであり、私も、「シーマン」に毛の生えた程度の、6歳の娘にちょうどと考えて入場した。ところがどっこい、大変なハイテクアトラクションだった。

ガイダンスの後、窓ガラスの向こうにクラッシュが現れ、観客を指名してイジリ倒したり、当意即妙のトークで盛り上げる。「はーい、前から4列目、通路から2番目の首に海草を巻いたお兄ちゃん、名前は?」「吉田です」「いい名前だな吉田。どこから来たの?」「伊豆稲取です。」「伊豆稲取かあ。いいところから来たね。知らないけど。で、質問は?」「チャームポイントはどこですか?」「ひれ。いい質問だったぞ山田。いや吉田か」といった調子である。

子どもはすっかり夢中だが、一体どういう仕組みなんだろう?と、しばらく考え込んでしまった。

本物のクラッシュが窓の外にいる

カメと会話する観客は皆「仕込み」であり、毎回(あるいは数パターンで)同じ会話が交わされている

人間並みの知能を持つコンピューターが開発された

という可能性を除外すれば、生身の人間が、隠しカメラを通じて観客席を見ながら話をしていることになる。とても感心するのは、ひれの動きや唇の動きが極めて正確な点だ。これは、声優の手や顔の動きを正確にCGに反映する「パフォーマンス・キャプチャー」と呼ばれる技術であり、「アバター」を初めとするCGには広く用いられている。

ここまでは見当もつくのだが、それでも不思議なのは、声が映画で聞いた“クラッシュ”とそっくりな点だ。この点については、

担当声優の小山力也が、365日生出演している

という可能性を除外すれば、

小山力也の「声のそっくりさん」が数名回り持ちで出演している

という可能性もあるが、声が似ている上に、一種のスタンダップ・コメディを演じる能力を持つキャストを通年で複数確保し続けるのは至難の業だろう。

そうなると残るのは、高性能の「ボイス・チェンジャ-」ということになる。

このことを確信したのは、別のアトラクション「モンスターズ・インク」で、ナメクジのモンスターおばさんロズ(声優;磯部万沙子)が、映画そっくりの声で、娘に対して「右側のお嬢ちゃん、ライトを戻しとくれ。あたしゃ何でもお見通しだよ」と話しかけた時だ。ディズニーランドのロボット達は、いつの間にか、録音された音声を再生するだけでなく、人間の言葉を話し始めたのだ。この技術を使えば、特定の人物の声に変換するだけでなく、鬼籍に入った人の声(藤村有弘や広川太一郎や細川敏之)を再現したり、エルヴィス・プレスリーやマイケル・ジャクソンに新曲を歌わせることも可能になる。

素晴らしき進歩だが、法律家としては気になる点が一つある。それは、再現される声の持主に、一種の法的権利が認められるべきではないか、という点だ。生死を問わず、俳優や声優の声には、莫大な財産的価値が存在するし、勝手に声を真似られては、一般人とて損害を被る。従って、「みだりに声を真似られない権利」は、法的権利として保護されるべきであろう。

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2012年3月12日 (月)

のびのびの日弁連会長選挙、くじで決着へ

日本弁護士連合会(宇都宮健児会長)の総会が525日、大分市で開かれ、選挙規程の改正などを決議して終了した。

選挙規程の改正は、日弁連会長選挙において、再投票を行っても決着がつかない場合、くじで当落を決するというもの。成立と同時に施行され、現在実施中の会長選挙から適用される。

平成244月から任期がはじまる日弁連会長選挙は、同年1月の公示に4名が立候補したが、210日の投票で決着がつかず、現職の宇都宮健児会長と山岸憲司候補の上位二名による再投票となったが、やはり決着がつかず、再選挙となった。そこで、森川文人候補が再度立候補し、同氏を加えた3人による再選挙が行われ、森川氏が敗退したが、宇都宮・山岸候補の決着がつかず、二度目の再投票となり、現在に至っている。再投票日は68日。なお、新会長が決定するまでの間、会長職は前職の宇都宮弁護士が務める。

決着がつかない原因は、日弁連の会則上、当選するためには最多票を得るほか、全国54単位会の3分の1である18単位会以上の支持を得る必要があるため。大都市会に支持基盤がある山岸候補は毎回最多票を得ているが、地方単位会がこぞって宇都宮候補を支持しているため、単位会要件をみたすことができない。このままでは、永遠に再投票と再選挙が繰り返される可能性がある。

日弁連内でも、「日弁連が永遠に終わらない選挙規程を定めているのでは世間の物笑い」との認識が広がり、5月の定時総会において選挙規程を改正することで両派が合意した。

だが改正作業は困難を極めた。大都市を中心に最多票を得ている山岸陣営は、決選投票での単位会要件を削除するよう求めたものの、地方単位会の支持が厚い宇都宮陣営が譲らなかったからだ。「弁護士会の一票の格差は天文学的。最小の函館弁護士会(43名)会員の一票の重さは、東京弁護士会(6622名)の154倍。いやしくも民主主義を標榜する弁護士会内に、これほどの格差は許されない」と、国政選挙で一票の格差是正を訴える窪利英明弁護士は語る。また、くじなど偶然に頼る方法で組織の代表を決めたのでは正統性を獲得できないという指摘もある。だが、「単位会要件は、大都市会の意向を阻止するという消極的機能しかないし、地方の声を中央に反映する合理性がある。全体多数決では都市部が全国を牛耳ることになる。」との意見も根強い。

結局、再投票を行っても決着がつかない場合には、くじで当落を決めることで決着した。他の方法を推す声もあったが、「ジャンケンで『あいこ』が続いたら恥の上塗り」「60歳過ぎの選挙管理委員長にコイントスは無理」「弁護士会が阿弥陀様の意思に従うのは政教分離に反する」などの意見が出て、結局、一方の先端に色をつけた二本の「こより」を引く方法になったという。

写真は「選挙、まだやってたんだ」と驚く新人弁護士

注;このエントリは、312日現在はフィクションですが、将来、ノンフィクションになる可能性があります。また、このエントリは杉田直樹弁護士のアイデアに基づいています。ありがとうございました。

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2012年3月 8日 (木)

オウム齋藤元信者による犯人蔵匿罪の解説

オウム真理教(もと?)信者で特別指名手配されていた平田信(まこと)容疑者(46)をかくまったとして犯人蔵匿(ぞうとく)罪に問われた教団元信徒斎藤明美被告(49)に対する初公判が6日、東京地裁で開かれ、同被告は起訴事実を認め、検察は懲役2年を求刑して結審した。

犯人蔵匿罪に関する私の知識は司法試験受験時(1989年)以来全く更新されていないが、本件に即して、この罪について解説すると、次の通りである。

犯人蔵匿罪(刑法103条)は、「罰金以上の刑に当たる罪を犯した者…を蔵匿し、又は隠避させた者は、二年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する」と規定する。

平田容疑者は「罰金以上の刑にあたる罪を犯した者」に該当するわけだが、厳密には容疑者に過ぎず、無罪になる可能性があるから、「罪を犯した者」とは言えないのではないか、とも考えられる。だが、この罪は国家の刑事司法作用の保護を目的としているので、結果的に無罪になったとしても、本条の「罪を犯した者」にはあたり、犯人蔵匿罪が成立するとされている。

もっとも、罪を犯していても、公訴時効成立等によって、処罰される客観的可能性がなくなっていれば、守るべき国家刑事司法作用は存在しないから、犯人蔵匿罪も成立しない。平田容疑者は国松長官襲撃事件でも容疑者とされていたようだが、これについては公訴時効が成立しているので、犯人蔵匿罪は成立しない。

一方、特別手配の根拠となった「島田裕巳宅爆弾事件」や「公証人役場事務長逮捕監禁致死事件」では、一見公訴時効が成立しているようにみえるが、その主犯とされる中川智正井上嘉浩各死刑囚への公訴提起により公訴時効が一時停止したため、その効果は平田容疑者にも及ぶ(刑事訴訟法2542項)。

「蔵匿」とは「官憲の発見・逮捕をまぬかれるべき場所を提供してかくまうこと」をいう。平田・斎藤両名は当初、東北地方を放浪し、その後東大阪市に落ち着いたようだが、放浪の際は、「隠避」は成立しえても、「蔵匿」とは言えないかもしれない。

ところで、本件は17年にわたり隠れていたわけだが、それでも時効は成立しないのだろうか。「蔵匿」は刑法学上、「継続犯」に分類される。継続犯は、法益(本件の場合は、国家の刑事司法作用)が妨げられている限り、犯罪は成立し続けるとされ、その一連の行為が終了して初めて、公訴時効が進行し始める、と一般に理解されている。だから検察は17年前の事実に遡って公訴を提起したのだろうし、弁護側も特に争わなかったようだ。だが、本当にそう考えるべきかについては、議論があってしかるべきだと思う。

犯人蔵匿罪については、他の犯罪にはあまり見られない、特別な条項が適用される。それは、「犯人…の親族が、犯人…の利益のために、犯人蔵匿罪…を犯したときは、その刑を免除することができる」(刑法105条)という条文だ。昭和22年以前は、「罰セズ」となっており、例えば妻が夫を匿っても犯罪にならないとされていたが、改正後は、親族でも蔵匿罪が成立し、ただ免除されうるものとなった。

さて、平田容疑者と斎藤被告だが、内縁関係にあったとみてよいだろう。「内縁の妻」は戸籍上配偶者ではないが、様々な法律適用場面において、妻に準じる地位を実務上認められている。そこで、弁護側としては、妻に準じるべきであるとして、刑の免除に近い酌量を求めたのではないかと想像する。

斎藤被告は、自ら警察署に出頭して逮捕されたのだが、これは刑法上「自首」にあたる可能性がある。刑法上の自首(42条)は、犯罪が発覚しても誰の犯行か分からない場合の出頭に適用されうるからだ(この部分、下記コメントのご指摘により訂正しました)

裁判所がなぜ東京地裁なのかについては、よく分からない。刑事訴訟法上は、「裁判所の土地管轄は、犯罪地又は被告人の住所、居所若しくは現在地による」(2条)とあるが、犯罪地は東京でないはずだ。斎藤被告の住民票上の住所が東京だったのかもしれない。斎藤被告は東京都の拘置所にいるだろうが、警察が連れて行けばどこでも「現在地」にあたるわけではないだろう。

犯人蔵匿罪の刑は、2年以下の懲役である。検察側は、上限一杯の2年を求刑したようだ。これはオウム事件という、日本史上まれにミル重大犯罪の係累だが、上述した時効の問題や、斎藤被告が内縁の妻であることを考慮すれば、本件は執行猶予判決が相当の事案であるように思われる。

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2012年3月 7日 (水)

「維新」という言葉が持つ危うさ

日本は今、20年以上続く閉塞状況にある。

閉塞状況に倦むと、日本人は「維新」と言い出す。

語源としての「維新」は、「革命」とほぼ同じ意味だが、「革命」と言わず「維新」と言うのは、「維新」には共有できる成功体験があり、共有できる偉人がいるからだ。

すなわち「明治維新」であり、「坂本龍馬」「勝海舟」「大久保利通」(以下略)である。

また、「維新」を唱える人はなぜか、偉人を輩出した時代を昭和前後で区切る傾向にある。

つまり、「維新」を唱える日本人はこう言っている。「明治・大正に比べ、昭和・平成の日本人は何と不甲斐ない。明治の偉人を見習い、明治の成功を再現しよう」と。

一種の「司馬史観」と言っていいかもしれない。

私は、明治・大正に政治的傑物がいたことを否定はしない。だが、昭和・平成には人物がいない、という見解には賛成できない。なにより、たった百年の間に、人間としての資質ががらっと変わってしまうなんて、生物学的にも統計学的にも信じがたい。

昭和・平成にも偉人はいた(いる)はずだ。我々が知らないだけだ。

目の前にいる(いた)人物に範を求めず、いたずらに明治の偉人と偉業を讃えるなら、懐古趣味と揶揄されても仕方あるまい。

そのうえ、「維新」には、懐古趣味にとどまらない、危険な歴史がある。

昭和5年(1930年)ころ、政争を繰り返す国会や、国際的に弱腰の姿勢を取る政府に反発して、「昭和維新」を唱えた人たちがいた。

かれらは、現状に対する不満を爆発させ、犬飼毅を初めとするリーダーを多数殺害した。

そして驚くべきことに、そのあと何をするか、何も考えていなかったのである。

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2012年3月 6日 (火)

炭素繊維屑は安全保障輸出規制を受けるか

東レ、三菱レーヨンなどの炭素繊維工場では、日々、大量の「炭素繊維屑」が生まれている。工程の途中で切れたり傷ついたりして完成に至らなかったものや、完成したが要求性能を満たさなかったものなど、理由は様々だが、とにかく、大量の炭素繊維屑が出る。この炭素繊維屑は、まとめて段ボール箱に入れられる。一本一本は髪の毛のように見えるため、大量の炭素繊維屑が段ボール箱に詰め込まれている様子は、まるで床屋のゴミ箱のようだ。巨大なボビンに巻かれ、整然と出荷される完成品とは雲泥の差だ。

炭素繊維工場にとって産業廃棄物でしかない炭素繊維屑だが、それでも、短く裁断した上、壁材や板材に混ぜて固めると、強度を増してくれる。昔の土塀にわら屑を混ぜていたのと同じ理屈だ。そのため、炭素繊維屑は、壁材等の材料として流通している。

さて問題は、これら炭素繊維屑は輸出できるのか?という点だ。

外為法に基づく輸出貿易管理令の細目を定める輸出等省令(輸出貿易管理令別表第一及び外国為替令別表の規程に基づき貨物又は技術を定める省令)によると、炭素繊維そのものの輸出が規制されているのは、次のいずれかの場合である。

輸出等省令1条(原子力関連)22号ロ
1)炭素繊維…であって、次のいずれかに該当するもの
1
 比弾性率が1270万メートル以上のもの
2
 比強度が235000メートル以上のもの

輸出等省令4条(先端材料)15号ロ
炭素繊維であって、次の(1)及び(2)に該当するもの
1) 比弾性率が1465万メートルを超えるもの
2) 比強度が268200メートルを超えるもの

国内の炭素繊維工場では、これらのスペックを充たす炭素繊維を製造しているから、この工場から出る炭素繊維屑の中には、これらのスペックを充たす炭素繊維も、混じっている可能性がある。だが、現実には、その要件を満たす炭素繊維と、満たさない炭素繊維を分別することは不可能だ。もちろん、蜘蛛の糸のように細い炭素繊維を、絡まないよう慎重に一本一本より分けて、その強度を計測すれば、理屈上分別は可能だが、途方もない手間暇がかかる。しかも、より分けたところで、所詮は不良品。比弾性率や比強度が規制値を満たすところで、どんな瑕疵があるか分からないから、それを原材料にして信頼できるミサイルが製造できるとは、とても思えない。

安全保障輸出管理制度の目的に照らせば、炭素繊維屑は、仮に輸出等省令に該当する炭素繊維が混じっていたとしても、それをもって、輸出規制品であるとはいえない、というべきだろう。

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2012年3月 5日 (月)

格安弁護士法人(LCLC)「ピーチ」営業開始(この記事はフィクションです)

日本初の格安弁護士法人(LCLC=Low Cost Legal Corporation)である「弁護士法人ピーチ」が東京で営業を開始した。

格安弁護士法人は、その名の通り格安の弁護士報酬が特色。例えば500万円の貸金返還請求訴訟を起こす場合、一般の弁護士に依頼すると「着手金3040万円、成功報酬は金額に応じて3080万円」が標準とされているが、弁護士法人ピーチに依頼した場合、「着手金3万円、報酬無し」で依頼できるという。

安さの秘密は徹底したコスト削減にある。事務所は賃料の高い都心を避け、すべて山手線の外か高架下。什器備品は全て中古品で、固定電話機もコピー・ファックス機も無い。「コピーはすべてスマホで撮影し、ファックスはネットサービスを使う」とのこと。

また、最低料金以外はすべてオプションとして費用に加算されるのも、格安弁護士法人の特色だ。例えば、弁護士が裁判所に往復する費用(1時間1万円プラス実費)や、打ち合わせ費用(102000円)、書面作成費用(A41300円)、コピー代(150円)、打ち合わせに出てくるお茶(緑茶1500円)、冷暖房費(1時間1000円)など、すべて有料だ。

すでに問い合わせが殺到しており、「平日の昼間のご相談は1ヶ月待ち。なお、17時以降の相談は105000円ですが、多少余裕があります」とのこと。

「安さをウリにする弁護士が訴訟に勝てるのか」という批判もある。しかし、「当事務所は事件に手を抜きません。価格破壊をしても、人権と社会正義の実現という弁護士の使命が果たせることを証明したい」(広報担当弁護士)と抱負を語る。

日弁連評論家の小林正啓氏「なんで書面よりお茶の方が高いんだ」

 

注;このエントリは、今のところ、フィクションです。

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2012年3月 2日 (金)

朝日社説と中坊の亡霊

226日朝日新聞社説「日弁連会長選―利益団体でいいのか」は、年約2000名の司法試験合格者数を年1500名以下に減らそうとしている日弁連を、「どんどん内向きになっている」と批判した。

この社説に対する弁護士ブロガーの反発が凄まじい。ニガクリタケ(以下略)氏は「もはや朝日社説は、弁護士に何か怨みがあるに違いない」と述べているし、他のブログも似たり寄ったりである(まとめはこちら)。総じて、朝日社説の批判は、何らかの悪意か間違った思い込みの、いずれかに基づくものだと言う。

だが、私は例によって、こういう反応は良くないなあ、と思う。

一般論として、公に他人を批判する者が、恨み嫉みといった悪意を動機にすることは、無いとみて間違いない。相手には相手の正義があって、こちらを批判しているのだ。このことは、弁護士業務上の常識なのだから、自分自身が批判された途端「あなた、私に恨みでもあるんですか?」と噛みつくようでは、修行が足りないと言われても仕方あるまい。なにより、(少なくとも主観的には)正論を唱えている相手に対して、悪意だ恨みだと反論しても、議論はすれ違うばかりで、およそ主張整理にならない。大事なことは、朝日社説の拠って立つ「正義」が何かを探ることであって、罵倒を浴びせることではない。

朝日社説は、「事務所で相談者が来るのを待ち、安くない報酬をもらい、法廷に出す文書を作るのが主な仕事で、あいまに人権活動も手がける」弁護士像を、「昔ながらの弁護士像」と批判する。この弁護士像は、「『御大師様の前の土産物屋』と揶揄されるように、裁判所の前に店を構え、立ち寄るお客だけをあてにする存在になり下が(り)、口では人権、人権と言いながら腹の中では金儲け主義に陥っている」弁護士像と、表現がよく似ている。

これは、中坊公平が『文藝春秋』199912月号『金権弁護士を法で縛れ』で用いた表現だ。

「弁護士は、法律事務の独占と弁護士会の自治という特権に見合うだけの役割を果たしているでしょうか」と中坊は続ける。「(弁護士人口が増えて小さくなった)パイにたくさんたかると分け前が減る、なんてケチくさいことを言わないで、パイを大きくする方法を今考えるべきではないか。そしてその方法とは、弁護士が積極的に社会的活動の場に出ていくことであり、また公益的な職務へ目を向けることだ」。

これが当時の中坊公平の主張であり、同時に、日弁連の主張であった。そして、朝日社説は、この主張を拠り所として、今の日弁連を批判している。確かに、当時の中坊の主張に比べれば、司法試験合格者数年1500人以下という主張が「内向き」なのは明らかだ。朝日社説は、論理としては一貫しているのである。

つまり朝日社説は、今の日弁連が以前の主張をなし崩しにしていると批判しているのであり、あのときの日弁連はどこに行ったのか、と怒っているだ。

「あれは中坊公平が勝手に言ったことで、日弁連の主張でない」と言えるなら話は簡単だ。だが歴史的事実は真逆である。当時、平成の鬼平ともてはやされ、首相候補とさえ言われた中坊を、日弁連は全面的に支持していたのだし、このときの態度を、公式には未だ、覆していない。

当時の中坊と日弁連の関係を象徴するエピソードがある。東京での会務を終え帰宅する中坊が京都駅で下車するとき、同乗していた幹部弁護士が我先にホームに降り、列を作って見送ったという。このときホームに降りた弁護士の多くは、未だ、中坊路線を継承し、日弁連の中枢にいる。

だから結論としてはこういうことになる。朝日新聞社説が間違っていると思うなら、闘う相手は朝日新聞ではない。日弁連に巣くう、中坊公平の亡霊なのである。

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2012年3月 1日 (木)

民間事故調、首相の対応を批判

注:この記事は全てフィクションです

尖閣諸島が中国海軍によって一時的に武力占拠された事件を受け、民間の有識者からなる「尖閣事件独立検証委員会」(民間事故調)は28日、400ページからなる報告書を首相に手渡し、その要旨を公表して、石波首相(当時)の稚拙な現場対応などを厳しく批判した。

報告書によると、突然の攻撃を受け、錯綜する情報に苛立った石波首相は、側近の制止を振り切り、尖閣諸島の視察に踏み切った。ヘリの機中では「俺は基本的なことは分かっている。俺の質問にだけ答えろ」と言い、守備隊が装備する小銃の種類やサイズについて熱心にメモを取っていたという。同席者は、「首相がそんな細かいことまで聞くというのは、国としてどうなのかとぞっとした」と述べた。また、島を放棄すると申し出た田中防衛大臣(当時)に対し、「玉砕してでも死守しろ。ここで退却したら防衛省は終わりだ」と怒鳴りつけた。防衛省は事件直後、「退却を申し出たのは非戦闘員だけ」と弁明しているが、民間事故調の調査には応じていない。

首相官邸に残った枝野官房長官(当時)は、「尖閣を失えば、次は沖縄が戦場になる。韓国も対馬に侵攻するだろう。このままでは悪魔の連鎖になると思った」と当時の心境を振り返った。

米軍との連携不足も明らかになった。事件発生直後、第七艦隊から日本政府に対し、日米安保条約に基づく援軍の申し出があったが、日本政府は「自衛隊で対処できる」として拒否。守備隊がほぼ壊滅した時点で初めて援助を求めたという。第七艦隊は直ちに「スケダチ作戦」を発動し、中国海軍を追い払った。

報告書はまとめとして、「軍ヲタの現場介入が事態を悪化させた」として、首相(当時)の稚拙な対応を断罪した。

この報告書には批判もある。日弁連評論家の小林正啓氏は、「尖閣事件の責任は、『まさか本当に攻めてくることはないだろう』と、中国軍による攻撃を『想定外』として準備を怠った自衛隊と政府にある。軍ヲタ首相の対応は稚拙で当たり前。事件の本質ではない。この報告書は、なんとなく、うさんくさい」と述べた。

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