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2012年3月20日 (火)

情けなくてうさんくさい提言をする弁護士たち

「一人一票の国民投票で首相候補を選ぶ会」の意見広告が、319日付日本経済新聞に載った。

メンバーは伊藤真久保利英明黒田健二升永英(五十音順)各弁護士ら。一票の格差の是正を訴えているメンバーと同一のようだ。

意見広告の中身は、やや分かりにくいが、ポイントは、「憲法を改正せずに、首相公選制を実現しよう」という点にある。

少し敷衍すると、こういうことのようだ。

①国民の7割以上が、首相公選制に賛成しています。
②しかし、憲法改正して首相公選制にするのは大変です。
③でも、憲法を改正せずに、首相公選制を実現する方法があります。
④それは、首相公選制を政権公約する政党に投票して、両院の過半数を取らせる、というものです。

⑤そうすれば、その政党が、首相公選制を定める「国民投票法」を制定してくれます。

⑥これで、日本は、変わります

この広告を、どう思われるだろうか。

私は、この提言を、とても情けないと思うし、うさんくさいとも思う。

情けなく思うのは、「憲法改正をせずに、法改正によって、実質的に憲法を変更しよう」という、「こすっからい」やり口だ。

首相公選制にしたいなら、堂々と憲法を改正したらよい。本当に国民の7割が首相公選制を望んでいるなら、できるはずだ。

おおもとの法制度に手をつけず、下位法規の改正で上位法規を骨抜きにするというのは、官僚の得意技だが、いやしくも弁護士が提唱すべきことではない。日本人のプリンシプルのなさを如実に反映した提案ともいえるが、そんな弥縫策を続ける限り、日本は、絶対に、変わらない

しかも、この提案には、法解釈上の疑義が山盛りだ。

「首相公選制を政権公約する政党」に両院で過半数を取らせたとして、公約の実現をどう保証するのか、国民投票法に基づいて選ばれた首相と国会との関係(例えば内閣不信任や解散権)はどうなるのか、このやり方で、広告通り首相の任期4年が保証されるのか、その他諸々の疑問がある。つまるところ、憲法が定める権力分立体制・議院内閣制と、法律で定める首相公選制との整合が全く考えられていない。

もっともうさんくさいのは、「国民投票法の制定」と「首相公選制を政権公約する政党」への投票がワンセットになっている点だ。いうまでもなく、立法は衆参両院が多数決によって行うものであり、特定の政権政党が行うものではない。現に、多くの法案は、複数の政党の賛成によって成立している。だから、首相公選制度を立法するには、それに賛成する議員が両院で過半数ずついればよく、政権政党単独で両院の過半数を占める必要は全く無い。

ところが、この意見広告は、どこか一つの政党が、「首相公選制を政権公約」し、その政党が単独過半数を取ることを前提としている。つまり、この広告は、実は首相公選制を目的とするものではなく、その公約を掲げ(ようとしてい)る「特定の政党」の応援を目的としていることになる。

広告の右側には、3つの政党名が記載されている。民主党・自民党は、第一党第二党だからよしとして、第三党でも何でもない「みんなの党」が、残りの一つに掲げられている。他の政党は名前すらない。なぜここに「みんなの党」が出てくるのか。同党と、「選ぶ会」の関係はどうなっているのか。うさんくさくて鼻が曲がりそうである。

私は、首相公選なら大いに結構と考えているし、一人一票も大いに賛成だし、みんなの党も嫌いではない。

だが、こういう、こすっからくてうさんくさいやり方は大嫌いである。

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コメント

いつも楽しく読ませていただいてます。
私もあの意見広告には何ともいい難い違和感を覚えましたが,
先生のコメントを読んでだいぶすっきりしました。

投稿: | 2012年3月22日 (木) 13時08分

確かにうさんくさいですね。私も先生に同意します。

率直な表現やコミュニケーションを避けるという日本の文化(?)はこのような場面では必要ないと考えます。単に何を言いたいのかがわからないからです。行間やら空気やらを読んで推測できたとしても、価値観が多様化している現代ではそのような推測を裏付ける基盤は存在し得ず推測は結局推測でしかないので、不信や疑念を生んでコミュニケーションを阻害すると思います。

小説やエッセイであればそれでもいいのかもしれませんが。意見表明の方法としては不適切だと思います。

投稿: y | 2012年3月23日 (金) 13時06分

2015年10月21日朝日新聞広告「ナチス憲法・・・あの手口に学んだらどうかね。」の大きな文字に驚き。気味が悪い、うさん臭さ。
1、2をローマ字で表現するその感覚。日本人の感覚とはずれていますね。
気をつけた方がいいですね。
首相を直接に選ぶ?国が破壊されるだけ。

投稿: kei | 2015年11月 2日 (月) 18時05分

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