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2012年3月13日 (火)

声優そっくりにしゃべるカメに関する法的考察

ファインディングニモ』というディズニー・アニメーション映画に、田中邦衛と似た顔のウミガメ“クラッシュ”(声優;小山力也)が登場する。このカメと話ができるというアトラクション「タートル・トーク」が、2009年、ディズニー・シーにオープンしたというので行ってみた。

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場所は1920年代の客船「コロンビア号」の船尾に設けられた海中展望室。窓ガラスの向こうに“クラッシュ”が表れ、カメ語を日本語に自動翻訳する特殊マイクを通じて観客と対話する、という趣向だ。

一見して子供だましのアトラクションであり、私も、「シーマン」に毛の生えた程度の、6歳の娘にちょうどと考えて入場した。ところがどっこい、大変なハイテクアトラクションだった。

ガイダンスの後、窓ガラスの向こうにクラッシュが現れ、観客を指名してイジリ倒したり、当意即妙のトークで盛り上げる。「はーい、前から4列目、通路から2番目の首に海草を巻いたお兄ちゃん、名前は?」「吉田です」「いい名前だな吉田。どこから来たの?」「伊豆稲取です。」「伊豆稲取かあ。いいところから来たね。知らないけど。で、質問は?」「チャームポイントはどこですか?」「ひれ。いい質問だったぞ山田。いや吉田か」といった調子である。

子どもはすっかり夢中だが、一体どういう仕組みなんだろう?と、しばらく考え込んでしまった。

本物のクラッシュが窓の外にいる

カメと会話する観客は皆「仕込み」であり、毎回(あるいは数パターンで)同じ会話が交わされている

人間並みの知能を持つコンピューターが開発された

という可能性を除外すれば、生身の人間が、隠しカメラを通じて観客席を見ながら話をしていることになる。とても感心するのは、ひれの動きや唇の動きが極めて正確な点だ。これは、声優の手や顔の動きを正確にCGに反映する「パフォーマンス・キャプチャー」と呼ばれる技術であり、「アバター」を初めとするCGには広く用いられている。

ここまでは見当もつくのだが、それでも不思議なのは、声が映画で聞いた“クラッシュ”とそっくりな点だ。この点については、

担当声優の小山力也が、365日生出演している

という可能性を除外すれば、

小山力也の「声のそっくりさん」が数名回り持ちで出演している

という可能性もあるが、声が似ている上に、一種のスタンダップ・コメディを演じる能力を持つキャストを通年で複数確保し続けるのは至難の業だろう。

そうなると残るのは、高性能の「ボイス・チェンジャ-」ということになる。

このことを確信したのは、別のアトラクション「モンスターズ・インク」で、ナメクジのモンスターおばさんロズ(声優;磯部万沙子)が、映画そっくりの声で、娘に対して「右側のお嬢ちゃん、ライトを戻しとくれ。あたしゃ何でもお見通しだよ」と話しかけた時だ。ディズニーランドのロボット達は、いつの間にか、録音された音声を再生するだけでなく、人間の言葉を話し始めたのだ。この技術を使えば、特定の人物の声に変換するだけでなく、鬼籍に入った人の声(藤村有弘や広川太一郎や細川敏之)を再現したり、エルヴィス・プレスリーやマイケル・ジャクソンに新曲を歌わせることも可能になる。

素晴らしき進歩だが、法律家としては気になる点が一つある。それは、再現される声の持主に、一種の法的権利が認められるべきではないか、という点だ。生死を問わず、俳優や声優の声には、莫大な財産的価値が存在するし、勝手に声を真似られては、一般人とて損害を被る。従って、「みだりに声を真似られない権利」は、法的権利として保護されるべきであろう。

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コメント

えっと、考察はおおいに役立つ内容でしたが、最後堅すぎ。法律家過ぎて最後引いちゃった。

投稿: | 2013年3月25日 (月) 13時13分

たまたま飛んできた者です。すばらしい着眼点ですね。確かに声優は自身の声で所得を得ているわけですから、財産的価値を有しているのは言うまでもなく、保護されるのが必要だと、貴方の文章を拝見して気づきました。物事を多角的にとらえて、的確な考察がくわえられる貴方のような社会人になりたいです。

投稿: 通りすがり | 2013年8月16日 (金) 20時56分

とても分かりやすく納得です。
私の夫と娘が好きなアトラクションなので彼らには内緒で私だけ知ってようと思います。
声についての貴方の見解はよくわかり、確かに声は固有財産として残していくべきだと思いますね。

投稿: | 2015年8月28日 (金) 16時31分

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