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2012年3月28日 (水)

診察室内への防犯カメラの設置について

病院の院内暴力防止・防犯の観点から救急外来の診察室に防犯カメラを取り付けたいと思っています。プライバシーの侵害に当たるのでしょうか」という質問をネット上で見つけた。

この問題に対する回答はこうなる。

まず押さえるべき基本は、病院という「施設」の内部に防犯カメラを設置することは、この病院の施設管理権に属する。「施設管理権」とは、文字通りその施設を管理する権限のことだから、誰をその施設に入れ、誰を入れないかを決定する権限でもある。従って、施設管理者は、その施設内に防犯カメラを設置することも自由だし、撮影を拒否する人の来場を拒否することも自由だ。これが基本である。

だが、施設管理権といえども、常に必ずプライバシー権に優位するわけではない。プライバシー権の保護がとりわけ強く要求される場所では、施設管理権が劣後する場合もある。例えば、施設管理権が最も強く働くのは私邸だが、だからといって、トイレや浴室にカメラを設置して良いとは言えない。また、駅や市役所など、公共性の強い施設、百貨店など、本質的に不特定多数の来場を前提にしている施設では、公道に準じたプライバシー保護が要求されよう。

結局のところ、問題となるプライバシー権の保護の強さと、当該施設の性質、防犯カメラ設置の目的や撮影方法、事前告知の有無内容等を考慮していくことになる。

病院内での防犯カメラ設置は、基本的に、当該病院の施設管理権者の自由だが、病院の持つ公共性や、本質的に不特定多数人の来場を前提にした施設であることからして、プライバシー保護の要請も軽視できない。また、特に強いプライバシー保護が要請される診療科目もあろう。

冒頭の質問は、「院内暴力防止・防犯の観点から救急外来の診察室に防犯カメラを取り付けたい」というものである。救急外来はその性質上、泥酔者やせん妄状態の患者を比較的多く診察するため、院内暴力等の問題発生も多いようだ。したがって、防犯カメラ設置の目的には正当性が認められる。あらゆる種類の患者を取り扱う以上、画角の調整等によってプライバシーへ配慮することは必要だろうが、撮影方法に問題が無い限り、防犯カメラの設置は法律上許される。

なお、質問者は、「防犯カメラ作動中」とのステッカーを貼付すれば良いのではないかとお考えのようだが、緊急外来の場合、意識を失い、あるいは意思能力を失って搬送される患者も多く、これらの患者は、ステッカーの中身に同意して診察を受けるわけではない。ステッカーの貼付は必要だが、それが免罪符になるわけではないことに、注意を要する。

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