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2012年4月 9日 (月)

裁判官よ、腹が減ったら飯を食え。

1215分にならないと、昼飯を食いに行けないんだ」と、友人の裁判官がぼやいていた。公務員である以上、指定された時間にならなければ、昼休みを取れないのだという。時計とにらめっこしたあげく、1215分になると「それっ」とばかり飛び出すが、裁判所回りの店はすでに満員。帰るころには午後の法廷時間が迫っている。それでも「上がうるさくて」と、彼は言った。

馬鹿げた話である。しかも絶望的だ。

裁判官は国家公務員だが、労働者ではない。自分の時間を使用者に売り、その対価を得て、口を糊する者ではない。そうではないと言うなら、5時に法廷を途中で打ち切る裁判官や、残業代を請求する裁判官を認めなければ一貫しない。

裁判官は、法廷の時間を守る以外は本来自由だ。勤務時間を遵守したか否かで評価される職業ではなく、事件処理の中身(結論の妥当性や処理件数や迅速性、進め方など)によってのみ、評価される職業なのだ。だから、盆も正月もなく働いてもらうこともあれば、英気を養うため、平日一日寝てもらうこともある。昼休みの時間くらい何なのだ。腹が減ったら飯を食え。

「赤の他人の昼休み時間に何を熱くなっているのか」と思うなかれ。これは、司法の根源に関わる問題である。なぜなら、裁判官は法と良心のみに従い(憲法763項)、国民の権利を守るため必要なら、会社の業務命令、法令や行政処分を無効にする強大な権限を有する。とはいえ、「強きをくじき、弱きを助ける」のは、それなりに度胸が要ることだ。「上」が怖くて時計とにらめっこするような裁判官に、違憲判決など、書けるはずもない。裁判官に昼休み時間を厳守させることは、つまるところ、司法の自殺であり、国民のためにならないのである。

同じ話は、いわゆる高級官僚にも当てはまる。公務員給与削減に溜飲を下げた国民もいるようだが、彼らは、結局のところ自分の首を絞めていることに気づかないのだ。官僚各位も、ストをしろとは言わないが、国会期間中に、5時になったら、一人残らず帰宅されたらいかがだろう。

1215分にならないと昼休みを取れない裁判官」の話が絶望的なのは、この話が、それによって不利益を受ける、当の国民に端を発するからである。具体的なクレームがあったか否かは分からないが、「公務員たる者、勤務時間を厳守するべし」との「国民の声」を慮った裁判所内の馬鹿上層部が、昼休み時間の徹底遵守を下達したのだろう。上記のような「正論」もあったかもしれないが、「国民の理解が得られない」と退けられたのだろう。

こうして、嫉妬を行動原理とする国民と、一部のクレームを針小棒大に受け取る裁判所上層部と、ヒラメ裁判官が、この国をどんどん駄目にしていくのだ。

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コメント

>国会期間中に、5時になったら、一人残らず帰宅されたらいかがだろう。

国会議員は官僚に頼らずに自らの頭で考えて法案をつくるようになるので、民主主義が発達すると思います。また、官僚が余計な規制を考える暇がなくなるので、自由主義も発達するでしょう。

官僚の仕事はもっと減らしたほうが良いですね。

投稿: sate | 2012年4月14日 (土) 03時13分

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