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2012年4月24日 (火)

給費制復活完全消滅と、修習専念義務の見直しへ

司法修習生に対する貸与金の返還条件に関する裁判所法改正案について、17日までに自公民の合意が成立した。

合意された改正内容は、現行裁判所法67条の2の第3項前段
「最高裁判所は、修習資金の貸与を受けた者が災害、傷病その他やむを得ない理由により修習資金を返還することが困難となったときは、その返還の期限を猶予することができる。」を、
「最高裁判所は、修習資金の貸与を受けた者が災害、傷病その他やむを得ない理由により修習資金を返還することが困難となったとき、又は修習資金の貸与を受けた者について修習資金を返還することが経済的に困難である事由として最高裁判所の定める事由があるときは、その返還の期限を猶予することができる。」
と、赤字の部分を追加するものであり、要は政府提出法案そのままである。

参議院の大臣問責決議により、やや政局含みとなっているため、今国会での成立は不確実だ。だが、貸与制の停止を内容とする裁判所法改正案を提案していた公明党が三党合意に応じたことによって、給費制が復活しないことは事実上確定した。

そして、法曹養成制度については、改正裁判所法の附則案や、裁判所法改正案の附帯決議等に基づき、合議制の検討組織が立ち上げられることになった。

その合議制の組織とは、附帯決議案によれば、次のようなものだ。

(1) 閣議決定に基づく、従前の検討体制より強力な、
(2)
 法科大学院及び法曹関係者以外の多様な意見も反映する組織で、
(3)
 1年以内に、法曹養成制度全体についての検討結果をとりまとめる

組織が検討する内容について、次の点に特段の配慮をすることとされている。

(a) 法科大学院教育、司法試験及び司法修習等の法曹の養成に関する各過程の役割と相互の連携を十分に踏まえる。
(b)
 司法を支える法曹の使命の重要性や公共性に鑑み、高度の専門的能力と職業倫理を備えた法曹を養成するために、法曹に多様かつ優位な人材を確保するという観点から、法曹を目指す者の経済的・時間的な負担を十分考慮し、経済的な事情によって法曹への道を断念する事態を招かないようにすること。
(c)
 司法修習生に対する経済的支援については、修習専念義務の在り方等多様な観点から検討し、必要に応じて適切な措置を講ずること。

要するに、「法曹養成フォーラム」より格上で、政府直結の「法曹養成制度検討審議会」的組織を作り、法科大学院・法曹三者に加え、いわゆる有識者による合議体によって、1年かけて、法曹養成制度全体の見直しを行い、政府に提言せよというのである。明らかに、「司法制度改革審議会」と同様の会議体を想定している。

注目すべきは、「経済的負担緩和策」の一例として、修習専念義務の検討が挙げられている点だ。来る審議会では、修習専念義務の撤廃が検討の俎上に上がることになる。

仮に修習専念義務が撤廃されるとしても、いきなり、肉体労働や水商売、受験予備校講師や採点のアルバイトが許されるようになるとも思われない。したがって、修習生の勤務先は最高裁判所の許可制となり、事実上、法律事務所・裁判所・検察庁の事務員や、企業法務部の従業員、行政庁の職員等に限定されることになると予想する。そして、数的多数は、弁護士の卵として法律事務所で働くことになろう。文字通り、戦前の「弁護士試補」制度が復活することになる。

だから言っているでしょう?「司法制度が現在直面している状況は、明治以降の司法制度改革史を、逆にたどっているだけ」だって。したがって、修習専念義務が廃止されようがされまいが、次に検討対象になるのは、統一修習の廃止だろう。

海渡雄一日弁連事務総長は、今回の自公民合意を、「次の闘いへの橋頭堡を築いた」と評価している。どう読むとそうなるのか、理解不能だ。政府直結の審議会委員の人選を、日弁連主導で行えるのなら別だが、できるわけがない。できるなら、なぜ「法曹養成フォーラム」のとき、やらなかったのだ?

ちなみにこの対応は、司法試験合格者数年3000人は確定したのに、法曹一元の夢は露と消えたにもかかわらず、「法曹一元への足がかりは残った」と強弁した平成12年当時の久保井一匡日弁連会長の対応と、そっくり同じだ。要は負けたのに、負けを認められないのである。

日弁連は、また負けたのだ。それを認めない宇都宮執行部は、旧執行部が犯した過ちを、繰り返しているのである。

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コメント

弁護士が最後に目指す場所は「三百代言」ですか?

しかし、弁護士資格は司法や行政で一定の役割(管財人等)を任されている存在なのに、資格を目先の金儲けの道具に使ってどうするつもりなのでしょう?

知識や能力が低レベルな法曹はまだ我慢できるけど、プライドが高くモラルの低い法曹が多くなるのなら、権限を剥奪して名称独占資格になってもらいたいです。

なんにせよ・・・、
関係者からすれば、今だけでも憧れの資格をちらつかせて美味しい思いが出来ればいいのだから先々のことなんか考えていないのでしょうね。

投稿: | 2012年4月24日 (火) 21時46分

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