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2012年6月 6日 (水)

生き残る法科大学院はどこか

井上正仁教授が何を言おうが、政官界からみて、法科大学院制度の破綻は明白である。焦点はすでに、法科大学院をいくつ残すべきかに移っている。制度そのものを廃止してしまえという意見もあるが、いきなり廃止では、抵抗が強いだろう。手直しでうまく行くなら手直しで済まそうと考えるのが自然の情だからだ。したがって、法科大学院制度は、一定の手直しを経て、それでもダメなら、という順番になると思う。現に文科省は、下位校に対して、かなり露骨な圧力をかけ始めていると聞く。

そこで問題は、どの程度の手直しがなされるのか、その結果うまく行くのか行かないのか、ということになる。

添付の表は、姫路獨協大法科大学院を除く73法科大学院について、平成2223年度司法試験の結果に基づき、「合格者数」(2年間の平均)と「合格率」(最終合格者数÷受験者数)でランキングを行ったものだ。「割戻定員数」とは、この2年間の最終合格者数平均を7割で割り戻したものだ。これに基づいて、最上位校から数えた存続校数と総定員数との関係を予測してみる。

合格者数ランキングで見ると、13位の名古屋大学(以下「法科大学院」は省略する)までを存続させた場合の総定員数は1980人となり、45位の中京大学を存続させた場合の総定員数は3000人となる。

合格率ランキングで見ると、16位の大阪市立大学までで総定員数は1960人となり、48位の新潟大学まで存続させた場合の総定員数は3000人となる。

総定員数が2000人なら、合格率7割とすれば、司法試験合格者数年1500人となり、総定員数3000人なら、司法試験合格者数年2000人となる計算だ(滞留受験生を除く)。

ところで、注目すべきは、合格者数・合格率のどちらのランキングでも30位前後に、宗教団体系の法科大学院が存在する、という点だ。この宗教団体は、某政党と関わりが深い。この政党は、民主党政権下でキャスティングボートを握ることが多かったし、政権交代があっても同様だろう。しかもこの政党は、給費制問題の中核を担ったので、日弁連には大きな貸しがある。したがって、この法科大学院が存続の危機にさらされるような補助金カットや削減圧力は、政治的には発生し得ないし、日弁連も支持できない、ということになる。

その意味するところは、法科大学院数と定員削減は、35校前後まで、総定員数にして2800人前後までしか進まないだろう、ということだ。そうなると、司法試験合格者数は、2000人よりさほど減らないことになる。もちろん、実際には滞留受験生がいるから、合格者数を2000人とした場合、全体の合格率は4割程度までしか上がらない。

それでは、この程度の手直しでうまく行くか、ということになるが、もちろん、うまく行かないだろう。その結果として、法科大学院制度は、手直し後数年を経て、再度の見直しにさらされることになる。

以上は個人的かつ大雑把な予測だが、概ねこうなるだろう。問題は、このペースで物事が進んだ場合どうなるか、ということだ。いいかえると、今後数年間、司法試験合格者数年2000人(多少減らしたとして1750人前後)が続いた場合、弁護士会や弁護士業界、ひいては司法全体がどうなるか、という点だ。

この点について、私はとても悲観的である。

それにしても、宇都宮執行部は、給費制問題で、あの政党とがっちり手を組んだらどうなるか、考えた上で行動したのだろうか。

「lslanking.pdf」をダウンロード

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コメント

日弁連が某政党への借りを返すということは考えられるのでしょうか。

どうせそれができないならば、何度見直しても日弁連は正しい選択をすることができないのですから、最初の手直しの段階から、某政党の息がかかった某宗教団体系法科大学院だけを特別扱いする屁理屈を今のうちから考えておかなければならないような気がします。

それが見つかるのかどうかわかりませんが、先生の分析を知っている人には何を言っても屁理屈なのが見え見えなわけですから、逆に言えば、何だっていいと開き直ってしまえばいいわけです。
場当たり的すぎますが最初から場当たり的だとすれば仕方ないですよね。

投稿: y | 2012年6月 6日 (水) 10時34分

 先生にお尋ねするのが適切でないのかもしれないのですが、某政党には弁護士の関係者が多く、さすがに現状を肯定されてはいないと思うのです。それでも某政党は、弁護士関係者よりも宗教団体系の法科大学院の存続の方に重きをおくものでしょうか。
 また、そもそも当該法科大学院が、割戻定員数の30名程度で経営していけるのかどうか、というのも素朴に疑問に思っています。

投稿: H.T | 2012年6月 6日 (水) 18時14分

HTさん、コメントありがとうございます。前半の疑問は至極真っ当と思いますし、私もそれに期待したいと思います。後半については、定員30名が損益分岐点と思われます。

投稿: 小林正啓 | 2012年6月 6日 (水) 22時44分

以下ご教授ください。
「法科大学院数と定員削減は、35校前後まで、総定員数にして2800人前後までしか進まないだろう、ということだ。」
とありますが,現実に起きていることは実入学者が総定員を下回っていることで,今年の実入学者は3000人を下回っているという情報もあります。実入学者がこのペースで減っていくことの影響をどう考えるべきでしょうか

投稿: itou | 2012年6月10日 (日) 12時53分

itoh様、コメントありがとうございます。さるスジによると、今年の法科大学院入学者数は3150人との情報もありますが、いずれにせよ、このペースで減れば、2015年には2000人を下回ることになります。しかし実際にはこのペースは維持されず、一定のところで落ち着くと考えます。また、本文に述べたとおり、政府文科省による削減圧力は上述止まりになると予想します。一方、司法試験受験者のレベルは下がり続けるので、法務省・最高裁はある時点で、司法試験合格者数を減らす選択に迫られることになりますが、平成14年の閣議決定や歴史的経緯があるので、あまりおおっぴらには減らせません。以上の諸要素が均衡するのは、いつ、何人のレベルなのか。その点が、今私が関心を持っているところです。
回答らしい回答ではなく、申し訳ありません。

投稿: 小林正啓 | 2012年6月10日 (日) 20時56分

ご教授ありがとうございます。
現在の私の関心事は,予備試験の今後,及びこれからの若手法曹の就職事情です。
これからも鋭い分析を楽しみに拝見させていただきますので,よろしくお願いいたします

投稿: itoh | 2012年6月10日 (日) 22時08分

志願者が減って合格率完全100%になったら暇なので定年後の楽しみに法科大学院を目指します。誰も受けなくなったらさすがに合格者0人にはしないから私のようなサルでも受かるのでは。今でも質は悪いといいますが、まだまだこれからですよ!
byできの悪い中卒。

投稿: | 2012年8月16日 (木) 03時23分

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