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2012年7月11日 (水)

次世代ロボットの安全認証機関について

次世代ロボットの安全性認証機関を設立したらどうか、という話がある。

次世代ロボットがいま一つブレイクしない理由の一つは、事故による訴訟リスクを恐れているからだ。そこで、安全認証機関を設立して、安全性を保障してやれば、企業も安心してロボットを販売するのではないか、というわけだ。

わが国において、訴訟リスクはほとんどないことは以前書いたが、訴訟リスクがない、ということと、訴訟リスクを恐れている、ということとは別次元の話だから、実際にメーカーが訴訟リスクを恐れてロボットを作らないという現実があるなら、安全認証機関を作るのも、一つの解決策だろう。

問題は、安全認証機関が安全を認証する、ということに、どのような効果を持たせるかである。

もう数年前のことだが、ある安全工学の学者さんは、「安全認証を受けたロボットが事故を起こしても、メーカーは法的責任を免除されるようにすればよい」と述べた。しかしこれは大間違いである。行政機関や第三者機関の安全認証は、裁判所を拘束しないから、欠陥があると裁判所が認定すれば、メーカーは責任を免れない。もし法的責任を免れさせたいなら、原子炉のように、特別法を制定するほかないが、現実的ではない。

次に考えられるのは、安全を保障する以上、万一事故が起きたときには、認証機関が賠償責任を負う、という制度だ。要するに保険である。保険事業は、本来、損保が担うべきだが、現時点では、次世代ロボットの市場がないので、保険リスクの算定のしようがない。そこで当面は、国家予算を引当にして、安全認証機関がリスクを引き受けるわけだ。

産業発展のために、黎明期のリスクを国家が引き受けるというのは、ありうる考え方だとは思うが、問題は、財政逼迫のおり、そんな予算がでるか、という点だろう。

そこで次善の策として、規格認証、というやり方がある。これは、一定の安全規格を公定し、当該ロボットがその規格を満たしていることを証明するやり方だ。この認証方法は、直接的には安全を保障しているわけではない。だが、安全であるための規格は満たしていると宣言することで、間接的には、安全を保障しているともいえる。もっとも、万一事故を起こしても、規格認証機関が責任を負うことはない。

規格認証は、一時、ISO何とかで大いに流行ったが、最近はあまり聞かない。結局のところ、ISO何とかを取得したところで、安心・安全やコンプライアンスが実体的に保障されたわけではなく、宣伝効果も薄いので、企業が興味を失いつつあるのだろう。このように、実体のない規格認証は、すぐ飽きられるし、次世代ロボット産業の発展には寄与しないと思われる。

ちなみに、原発については、政府自身が安全認証機関となり、原発は絶対安全ですと保証してみせた、本当に重大事故が起きたとき誰が最終責任を負うか(保険金を支払うか)を中途半端にしか決めなかったので、今になって、被害者そっちのけで、東電と責任の押し付け合いをしているわけである。酷い話だが、「原発政策推進」を是とする限りにおいては、国家が安全を宣言することには意味があったとも言える。ちなみに次世代ロボットは、どんな大事故を起こしたところで原発メルトダウン級の被害は起きないのだし、米国に比べたら、人の命の値段など、安いものだ。次世代ロボット産業を育成する気があるのなら、安全認証機関が事故の損害を引き受けるのが、最善の策だと思う。

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