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2012年7月12日 (木)

日経『大詭小詭』

710日の日本経済新聞『大機小機』は、食料品の消費税に軽減税率を導入すると、かえって高所得層に恩恵を与える(隅田川氏)と主張している。

記事によると、月収20万円、食料支出4万円の低所得家庭の場合、食料品にかかる消費税額は10%として400円、家計に占める割合は2%となるのに対して、月収60万円、食料品支出8万円の高所得家庭の場合、消費税額は800円、家計に占める割合は1.3%となって、逆進性(低所得者ほど税負担が重くなること)が生じる。

ここまでは、ごく普通の解説だ。違うのは、これからである。

…そこで、逆進性を回避するため、食料品の消費税を5%に据え置くと、月収20万円家庭の食料品にかかる消費税額は200円となり、「得する額」は200円(400円-200円)となるのに対して、月収60万円家庭の消費税額は400円、「得する額」は400円(800円-400円)となって、後者の方が、「得する額」が多くなる。したがって、「軽減税率適用は、低所得層を助ける以上に高所得層に恩恵を与えてしまう」というのだ。

なんだって?

この主張は第1に、「逆進性を回避するため、食料品の消費税を5%に据え置く」という前提が間違っている。当たり前のことだが、食料品に消費税を課す限り、エンゲル係数の高い家庭(低所得層)の税負担率が重くなるから、消費税率を5%にしたところで、逆進性は回避できない。

2に、消費税を5%に据え置いた場合、10%にした場合に比べ、一般的に支出金額の多い高所得家庭の方が、金額的なメリットが大きいのは、当たり前のことだ。それを不平等だというなら、消費税率は永遠に下げられない。隅田川氏は、それで良いのだろうか。

第三に、消費税率を「据え置く」ことは、国民に対する「恩恵」でも何でもない。むしろ、必要最低限のコストで国家を運営しろと政府に命じるのは、民主主義国国民の権利である。隅田川氏は、軽減税率の問題点を指摘する便法として、軽減分を「国庫からの補助金」と喩えているが、同様に間違いだ。

要するに、隅田川氏の論法は詭弁である。軽減税率の当否について、それぞれの立場から議論することは大いに結構だ。でも、詭弁はいけませんよ。詭弁は。

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コメント

あたかも食料品に「だけ」消費税がかかって、非食料品部分には課税されないかような誤った前提での論法なんですね。

高所得者の方が貯蓄性向が高いでしょうけれど、それを捨象すると、
1.一律消費税率10%の場合
 低所得者(月収20万円)の消費税負担 2万円 対家計比率10%
 高所得者(月収60万円)の消費税負担 6万円 対家計比率10%
2.食料品に軽減税率5%を適用した場合
 低所得者の食料品(月額4万円)の消費税負担 0.2万円
      非食料品(月額16万円)の消費税負担 1.6万円
      合計 1.8万円 対家計比率 9%
 高所得者の食料品(月額8万円)の消費税負担 0.4万円
      被食料品(月額52万円)の消費税負担 5.2万円
      合計 5.6万円 対家計比率 9.3%

と、2で逆進性は緩和されています。

実際には、高所得者ほど消費に回さないお金が多いでしょうから、1で同じ負担率になることはないですが、低所得者のエンゲル係数が高いという前提が間違いでなければ、高所得者は非食量品の家計支出(収入ではなく)に占める割合が低所得者より高いはずですから、1より2の方が逆進性が緩和されるという結論は変わらないと思います。

確かに詭弁ですね…

投稿: しんたく | 2012年7月17日 (火) 18時36分

コメント有難うございます。しんたくさんの分析の方が、批判としてよほど的確です。

投稿: 小林正啓 | 2012年7月17日 (火) 18時41分

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