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2012年7月30日 (月)

日米弁護士市場比較

727日、大阪大学が主催するトランスプロフェッショナルリテラシー科研の第3回拡大ワークショップに参加して、「訴訟リスクは次世代ロボット開発を阻害しているのか?」という話をした。

参加者は、参議院議員の鈴木前文部科学副大臣をはじめ、先日6歳児の心臓移植手術を執刀した澤芳樹教授ら。何を話せばいいのかと悩んだのだが、結局こんな話をしてきた。

次世代ロボット(非製造部門)の市場規模は、2010年には2兆円に達すると予測されていたが、実際には数十億円にしかならなかった。その原因として、PL訴訟リスクが研究開発者を萎縮させているという指摘もあるが、賛成できない。試しに日米のPL訴訟リスクを比較してみると、大雑把な比較ではあるが、日本のPL訴訟提起件数は1年で多くて100件。これに対してアメリカでは数万件から十数万件。つまり提訴件数では数百倍から一千倍以上違う。

また、PL法施行後10年間で内閣府が把握した90件の訴訟のうち、和解額又は判決額として原告への支払いが命じられた金額は合計7億円余。これに対して、アメリカで提起されるPL訴訟全体のうち、判決に至るのが約5%(提訴件数を10万件として約5000件)あり、このうち13%(先の仮定で約650件)が懲罰的損害賠償を命じられ、その賠償額の中央値が約3700万円という。ここから、ごく大雑把な計算で割り戻すと、懲罰的損害賠償の総額が約240億円、仮に懲罰的損害賠償事案の3倍(1950件)で原告が勝訴し、1件当たりの賠償額が懲罰的賠償額の3分の1として約240億円、締めて480億円となる。

つまりはアメリカの賠償額は、日本のそれの60倍以上。これに、トライアル以前に和解した金額を入れたら、100倍を軽く超えることは間違いない。

つまるところ、アメリカのPL訴訟リスクは日本の100倍以上ある。では、アメリカにおける次世代ロボットの開発は、日本より100倍遅れているのか。そんなはずはない。それどころか、アメリカの方が進んでいる。そうだとすれば、PL訴訟リスクが次世代ロボットの研究開発者を萎縮させているという指摘は、およそ間違いということになる。

ちなみに、アメリカの弁護士数は日本の約30倍だ。日本の弁護士は仕事がなくて苦労しているが、PL訴訟だけで日本の百倍の市場規模があるなら、アメリカの弁護士は食うに困らないはず。弁護士から見ると、実にうらやましい話である。

打ち上げでは鈴木寛議員らと遅くまで飲んだ。鈴木議員と話をするのは初めて(民主党の法曹養成PTのメンバーとして、5月30日の私の話は聞いて下さったとのこと)だったが、議員というよりは教師に近い印象の方である。基調講演で、これからの国民に必要な素養として「哲学」を掲げたことには少し驚いた。趣旨には賛成なのだが、政治家の口から「哲学」という言葉を聞くとは思わなかったからだ。

法曹養成問題についても、興味深い話を伺ったが、それはオフレコである。

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