« 桜と牛レバ | トップページ | 内藤頼博の理想と挫折(1) »

2012年7月 4日 (水)

株主総会定足数排除の定款について

先日の株主総会終了後の茶飲み話で話題となったネタ。

会社法は、株主総会の定足数を、「議決権を行使することができる株主の過半数」と定めている(3091項)。しかし、同条項には「定款に別段の定めがある場合を除き」とあるから、定款に定めれば、この定足数要件を排除できる。では、会社法の定める定足数要件を排除したいとき、定款にどう定めればよいか。

どのサイトを見ても、ひな形の文章は同一だ。

「株主総会の決議は、法令又は定款に別段の定めがある場合のほか、出席した議決権を行使することができる株主の議決権の過半数をもって決する」とある。

この文言に、取締役の一人が疑問を述べた。「この定款には、『法令に別段の定め』がある場合は法令が優先すると書いてある。すると、会社法の規定があれば、それが優先することになる。だが、会社法3091項には、『定款に別段の定めがある場合を除き』と書いてあるから、定款が優先する。これでは、どちらが優先するのか、分からないじゃないか」

この取締役の疑問は、実にもっともだと思う。確かに、詳細は省くが、解釈論を駆使すれば、定款の規定は、会社法3091項を排除する趣旨と読むことができる。しかし、株主総会の定足数要件は、「基本中の基本」のルールだ。交通法規でいうなら「車は左側通行」や「赤は止まれ」に匹敵する。このような基本的なルールは、一義的に明確でなければならない。ごく平均的な日本語能力を持つ者が理解できなかったり、解釈論を持ち込まなければ正しい答えが出なかったりというのは、基本的ルールのあり方として、根本的に間違っていると思う。

問題の定款の規定は、例えば、こう定めたら良い。「株主総会の決議は、会社法3091項の規定にかかわらず、出席した議決権を行使することができる株主の議決権の過半数をもって決する」。こう定めれば、解釈の余地は一切なく、会社法の規定を排除できる。

あるいは、「株主総会の決議は、会社法の規定にかかわらず、出席した議決権を行使することができる株主の議決権の過半数をもって決する」でもよい。

こう定めれば、もし会社法改正により条文の位置がずれても、定款変更をしないで済む。一方、特別決議に関する定足数の定めは強行法規であって、当然に定款より優先するから、不都合は起きない。

「株主総会の決議は、法令又は定款に別段の定めがある場合のほか、出席した議決権を行使することができる株主の議決権の過半数をもって決する」という定款の定めは、どのサイト、どの会社でも同一のようだ。そうだとすると、この定めは、特定のひな形を倣っているのだろう。だが、このひな形は、解釈の余地を残す点で、かなりデキが悪い。

こんなデキの悪いひな形を作った方も作った方だが、定款作成時、何の疑問も差し挟まなかった弁護士たちも、何をチェックしていたのだろう。

|

« 桜と牛レバ | トップページ | 内藤頼博の理想と挫折(1) »

コメント

「309条1項の規定にかかわらず」や「会社法の規定にかかわらず」としてしまうと、特殊決議等を定款で排除しようとしているように読めるからではないでしょうか。もちろん、定款で排除できるわけではないので結果は変わりませんが、一般的に見た分かりやすさ、という意味でいうと、やはり難があるようにも思われます。

投稿: WA人 | 2012年7月 4日 (水) 14時25分

下記の事がらが許されるなら、
『株主総会の決議は、会社法の規定にかかわらず、出席した議決権を行使することができる株主の議決権の過半数をもって決する』

取締役が過半数持っていれば、法のきまりに反することでも可決されてしまいますよね。
歯止めが無くなってしまうのでは無いでしょうか?

投稿: 藤井國雄 | 2014年1月19日 (日) 11時59分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/192469/55115003

この記事へのトラックバック一覧です: 株主総会定足数排除の定款について:

« 桜と牛レバ | トップページ | 内藤頼博の理想と挫折(1) »