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2012年9月12日 (水)

平成24年度司法試験合格者発表

911日、今年度の司法試験合格者が発表された。

合格者は2102人。昨年より39人増えた。合格率は過去最低だった昨年を1.6ポイント上回り、25.1%。

これらの数値は、合否ラインに多数の受験生がひしめくことを考えれば、誤差の範囲だろう。要するに、昨年並み、ということだ。

他方、昨年と異なるのは新たに登場した予備試験組。合格率68.2%は、法科大学院トップの一橋大法科大学院の57.04%を10ポイント以上上回る。しかも、未確認情報だが、2124歳の受験生31人のうち、30人が最終合格(96.8%!)し、現役大学生28人中26人が最終合格(92.9%)したという。

これら30人は、司法を背負って立つトップエリートとして、裁判所・検察庁、そして大手渉外事務所の争奪戦にさらされるだろう。彼らが法曹への進路を選択してくれれば、の話だが。

大学生である間に予備試験に合格すれば、トップエリートの地位がほぼ手中にできるとなれば、来年以降の予備試験受験競争は白熱必至である。他方、従来のトップエリート、つまり、法科大学院ルートから好成績で司法試験に合格した者は、セカンドエリートに転落することになる。彼らは、その地位に甘んじることはできないから、予備試験に落第すれば、法科大学院に行かず、他の世界を目指すことになろう。こうして、法科大学院の受験生から、人材が去って行くことになる。

下表は、平成18年以降の法科大学院等別司法試験合格率(合格者数/受験者数)を、合格率の高い順に並べたものである。合格率50%以上の上位校4校に対して、10%以下の下位校が20校もある。

97日の報道によると、文科省は最大25校への補助金を削減するという。すでに5校が撤退を表明しているから、それを加えれば最大30校に退場が勧告されることになる。これを下表に当てはめてみると、北海学園大法科大学院以下30校が削減対象になる(もちろん、補助金削減基準は単年度合格率のみを対象とするものではないし、法科大学院の中には、受け控えの強要によって無理矢理合格率を維持しているところがあるかもしれないから、あくまで大雑把な予測である)。

注目すべきは、「削減ライン」のすぐ上に、宗教団体と関係の深い法科大学院があることだ。これは筆者が以前予想したとおりである。政府は、当該宗教団体と関係の深い政党を刺激しないギリギリのラインで、法科大学院削減を進めるつもりなのだ。

ちなみに、下位校30校が撤退した場合、本年度なら1915人が合格することになる。つまり、年2000人の合格ラインは、当面動かせないことが分かる。

弁護士の中からは、日弁連は何をやっているんだ、山岸会長は選挙の時に、1500人からさらなる減員を目指すといったじゃないか、という声も聞こえる。だが、そう言う人は、『こん日』を読み直してほしい。司法試験合格者数決定に関する日弁連の権限は1998(平成10)に失われ、現在全く無いのだから、誰が会長になろうが、何もできないことに変わりはない。このことは、宇都宮だろうが山岸だろうが同じことだ。宇都宮だったら減員できていた、という人にはこう聞きたい。給費制運動で、「あの政党」とがっちり手を組んでおきながら、「あの法科大学院」を潰すような政策が実現すると、本気で思っていたのか?

法科大学院25校(撤退確定組を含め30校)の削減と司法試験合格者数2000人の維持は、現時点で政府がとれる現実的選択の中で、おそらく最良のものだろう。

もちろん、現時点で最良の選択をしたからといって、事態がよい方に進むとは限らない。操縦桿を目一杯引いたところで、翼を失った飛行機は墜落を免れないのだ。

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コメント

予備試験突破者というのは、一度、模擬試験を受けさせた上で、その上澄み層だけに、新司法試験を受けさせているようなもの。
(予備試験の択一→予備試験の論文→予備試験の口述→新司法試験の択一・論文)。
こうした予備試験ルートの「合格率」と、法科大学院生の合格率とを対比・比較させるのは全くのナンセンス。
昨日からの各所のtwitter,blogにこれを単純比較した記事が散見されましたが、どうも納得がいきません。

投稿: 通りすがり | 2012年9月12日 (水) 06時50分

司法試験との関係で、法科大学院で履修することが無価値であること(統計的に見れば、法科大学院に行っても行かなくても合格する人はするし、しないひとはしない。)、そのことを法曹を志そうとする人たちもわかっていること(わかってしまったこと)に意味があるのではないでしょうか。

投稿: しんたく | 2012年9月12日 (水) 08時09分

通りすがりさんへ

 予備試験の合格レベルについて、法務省は法科大学院修了と同程度の学力を有する者としています。
 ですので、同程度であるはずの法科大学院の修了者と比べることは何ら問題ありません。
 

投稿: 大阪の弁護士 | 2012年9月12日 (水) 17時41分

給費が問題なのか、法科大学院が問題なのか、合格人数が問題なのか、よくわかりませんが、うちの事務所は不景気だ。

投稿: ◎ | 2012年9月13日 (木) 01時29分

 某サイトに、合格者1498人!!とかいう書き込みがあり、一瞬真に受けてしまいました。日弁連の1500人にすべきという緊急提言もあったし、さすがにそれを考慮せざるを得ない状況なのだな、と。でも実は2100人と知って、今度は fatal という言葉が頭をよぎりました。
 譬えが適切かどうか分かりませんが、法科大学院という商社が弁護士というブランドの独占製造販売権を握って大量生産し、ブランドの価値を低下させたように見えます。そして弁護士ブランドが売れなくなったから今度は教職ブランドの独占権を取りにいくのでしょうか。
 
 以前、「こんな日弁連に誰がした」を興味深く読ませていただきました。私はずっと、日弁連が法曹増員に賛成したということは、それによって幹部の誰かが儲けたはずだと思っていたし、今もその考えを捨てきれません。「ホーソーイチゲンのため」であったとするこの本を読んでからも、ホントなの??そんなのがホントにホントなの???という気持だったのですが、この3~4年の動きを見ているうちに、いやもしかして本当だったのかもしれない…と思うようになってきました。「地獄への道は善意で敷き詰められている」というのは、たしかに世の中の色んなところで見かける事実です。

 今年は修習辞退者がどのくらい出るのだろうか、と思ったら、「弁護士近未来小説」に既にそのネタもあって笑ってしまいました。さすがに半数が辞退は無いでしょうけれど、でも、弁護士になって生活していける人数を考えたら、笑えないリアルな数字だと思います。

投稿: Marika | 2012年9月13日 (木) 09時37分

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