« ヤマハ発動機不正輸出事件のまとめ(2) | トップページ | 内藤頼博の理想と挫折(8) »

2012年9月21日 (金)

ヤマハ発動機不正輸出事件のまとめ(3)

ヤマハ発動機事件において、捜査当局は逮捕時、貨物等省令第3条「イ」に該当するとしていた。しかし、本件無人ヘリが「自律的な飛行制御及び航行能力を有する」との要件を満たさないことは、前述の通り明白だった。そこで捜査当局は、会社を起訴するときは、上記「ロ」に該当するとしている(2007317日朝日新聞)。

では、本件無人ヘリが、「ロ 視認できる範囲を超えて人が飛行制御できる機能を有する」にあたるかを検討しよう。

この「視認できる範囲を超えて」という文言の解釈は、具体的事例をいろいろ想定してみると、なかなかやっかいだ。たとえば、「視認できる範囲を超えて」とは、操縦者の肉眼で視認できる範囲を超えることを意味するのか、双眼鏡で視認できる場合はどうなのか、航空機にカメラを積んだり、目標地点の地上に監視カメラを設置したりする場合はどうか、等々。

貨物省令3条は、当該無人航空機が、サリンなどの有毒物質を散布する方法によるテロや軍事行動に使用されることを防止する趣旨であって、操縦者の安全を確保するために操縦者と無人航空機が相当程度離れることを想定していることから、「ロ」に「視認できる範囲を超えて」とは、当該無人航空機が操縦者の肉眼または双眼鏡など機械的方法をもっても直接に視認できないほど物理的又は距離的に離れていることをいい、当該無人航空機がカメラを装着した結果、操縦者がカメラを通じて当該航空機を視認できる場合は、「視認できる範囲を超えて」に該当するだろう。

他方、目的地の地上にカメラを設置するなどして、当該カメラを通じて間接的に当該無人航空機を視認できる場合は、当該貨物自体が所定の機能を「有する」とはいえないから、貨物省令3条にいう「貨物」には該当しないと考える。

したがって、「視認できる範囲を超えて人が飛行制御できる」とは、当該貨物にカメラや、GPSと距離計を装着するなどして、操縦者が直接目視しなくても、手元のモニターや計器を目視することによって操縦することが可能であることを意味すると解される。なお、「イ」は「飛行制御及び航行能力」とあるのに対して「ロ」には「飛行制御」とのみあることから、「ロ」の場合には「航行」を制御できなくてもよいことになるが、上述した目的からすれば、単に姿勢や方向や高度を制御できるだけでは足りず、操縦者が意図する地点に当該貨物を移動させられる機能を備えていることは必要だろう。

また、GPSを備えるだけで距離計等を備えない無人航空機は、操縦者の視認できない範囲において山や木、建物等の障害物を把握し回避することが不可能であって、上述した目的を達成することはできないから「ロ」の要件を充たさない。さらに、これらの機器を装着した結果、ペイロードが20㎏を下回ってしまう場合にも「ロ」の要件を充たさないことはいうまでもない。

さて、本件で問題となった無人ヘリコプターであるRMAX L181(RMAX type)と、RMAX L175(RMAX typeG)は、いずれもカメラ等を備えておらず、そのままでは、「視認できる範囲を超えて人が飛行制御」することはできない(ちなみにRMAX G1は、自律飛行が可能である上、カメラを搭載して「視認できる範囲を超えて人が飛行制御」することが可能だが、ペイロードが10㎏なので、貨物等省令3条本文の要件を充たさないことは、前述した通りである)。RMAX L175は、GPSを備えてはいるが、その情報を操縦者に伝える機能はないと思われるし、仮に高度を含めた位置情報を操縦者に伝える機能を有していたとしても、障害物を把握する機能を有しない以上、「視認できる範囲を超えて人が飛行制御できる」にはあたらないと解される。

以上により、結局のところ、ヤマハ発動機が輸出したのがRMAX L181であろうが、RMAX L175であろうが、RMAX G1であろうが、いずれも、貨物等省令3条の定める貨物には該当せず、同条項によっては輸出を規制されないことになる。

|

« ヤマハ発動機不正輸出事件のまとめ(2) | トップページ | 内藤頼博の理想と挫折(8) »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/192469/55706188

この記事へのトラックバック一覧です: ヤマハ発動機不正輸出事件のまとめ(3):

« ヤマハ発動機不正輸出事件のまとめ(2) | トップページ | 内藤頼博の理想と挫折(8) »