ヤマハ発動機不正輸出事件のまとめ(2)
ヤマハ発動機製RMAX L181(RMAX typeⅡ)とRMAX L175(RMAX typeⅡG)は、
イ 自律的な飛行制御及び航行能力を有する
ロ 視認できる範囲を超えて人が飛行制御できる機能を有する
かのいずれかの要件を満たせば、外為法48条1項の定める「特定の種類の貨物」に該当し、許可を得ずに輸出すれば、外為法違反の犯罪行為になる。
そこでまず、「自律的な飛行制御及び航行能力を有する」か否かを検討してみる。
「自律的な飛行制御及び航行能力」とは、「自律的な飛行制御能力」と「自律的な航行能力」の両方、という意味だ。そして「自律」とは、「他律」の反対語であること、規制対象が「無人航空機」であること、「ロ」の要件に「人が飛行制御できる」とあること、に照らせば、「自律」とは、「人の制御に依存しない」ことを意味すると解される。典型的には、米軍のトマホークミサイルのように、目標の座標を入力して発射すれば、自力でその座標まで飛んでいく能力を意味する。
カタログによると、RMAX L175(RMAX typeⅡG)は「YACS-G」という飛行制御システムの解説として、「飛行中に電波障害が発生した場合は、機体は自動的に静止し、その後ゆっくりと水平降下」する機能を有するとある。捜査当局は当初、これをもって「イ」の要件をみたすと解釈して、ヤマハ発動機3名の逮捕に踏み切ったと報じられている。
しかし、この解釈は誤りだ。YACS-Gは「自律的な飛行制御能力」にあたるかもしれないが、非常時に自動降下する機能をもって「自律的な航行能力」とはいえないからだ。ヤマハ発動機の従業員は逮捕前、「GPS付きの自動車だからといって自律走行可能といえないのと同じこと」と述べているがその通りだ。「自律的な航行能力」を有するといえるためには、当該無人航空機の航続範囲内の任意のA地点(「地点」というが、もちろん空中の1点でもよい)とB地点を人が設定し、A地点に当該無人航空機を設置したら、後は人の力を一切借りず、B地点まで移動できることが必要と解される。B地点はA地点の真下を含まない。もし真下に移動することも「自律移動」というなら、ニュートンのリンゴは「自律移動」したことになる。
以上により、RMAX L175(RMAX typeⅡG)は、「自律航行能力」を有しない。
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