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2012年10月15日 (月)

陰謀史観はダメなんだってば(2)

弁護士自らに苦境を及ぼした大増員に、当の日弁連自身が賛成したのはなぜか。それは、経済的基盤を確立したベテラン弁護士が、子どもに事務所を嗣がせるため、司法試験を易しくしたかったのではないか、と指摘する「元『法律新聞』編集長」氏のエントリに対し、「陰謀史観には与すべきでない」と批判したところ、「陰謀史観に与しないという主張は、それ自身が、陰謀を隠蔽し擁護することになる」との反論をいただいた。

わけ分からない議論だなあ、と読者は思われるかもしれないが、この議論のポイントは簡単だ。要するに、編集長氏のいう「日弁連中枢が、子どもに事務所を嗣がせるため弁護士大増員に賛成したという事実」(以下「陰謀」という)があったか、なかったか、という問題である。

編集長氏は、「陰謀」の存在を、確信とまではいかないかもしれないが、かなり信じておられるようである。

これに対して筆者は、「陰謀」の証拠が示されていない、と言っている。陰謀の認定には慎重であるべきだから、それ相応の証拠を示さなければダメ、というのが筆者の主張だ。筆者自身、平成61221日の日弁連臨時総会において、800人の特別決議が圧倒的多数の賛成で議決されたのは、辻誠、前田知克弁護士による陰謀だと主張したし、相応の証拠を示したつもりだ。また、「陰謀論って、ええーっ、何のこと…」という永尾廣久弁護士(福岡県弁護士会)に対しては、再度反論を行った(この論争は永尾弁護士の記憶違いにより、同弁護士は上記総会に出席していなかったとのオチで途絶えてしまったが)。

筆者は陰謀論を全否定しない。軽々に与してはダメ、と言っているだけだ。

だが、編集長氏は、ただの一個も証拠を示していない。ただの一個も証拠を示さずに、陰謀があったと主張することは許されない。これは「弁護士らしい反論」でも何でもない。弁護士でなくても、ジャーナリストであれば、ジャーナリストでなくても、健全な常識人であれば、当然のことだ。

編集長氏は、「『皆様のご子息が弁護士資格を取り易くするためにも、是非、この決議にご賛同を頂きたい』などという呼びかけがなされるわけもない」と述べている。これは、「証拠を示せと言っても、あるわけないじゃん」という趣旨かもしれない。だが、直接証拠がないからと言って、証拠がないとは言えない。情況証拠でも間接証拠でも、探せばいくらでもあるはずだ。

3000人決議を受け入れた当時の久保井一匡日弁連会長自身は、陰謀の当事者ではないことを、編集長氏はお認めになった。だが、久保井会長を支え、その後の日弁連会長になっている何人かの会長のご子息は、弁護士になっている(現会長のご子息も弁護士だ)。もし、陰謀の存在を主張するなら、これらの親子にどういう問題があったのか、なかったのかを調べ、問題があれば指摘していただかなければならない。編集長氏は、個人攻撃をする気はないと弁解されるが、ちょっとズルいと思う。これら歴代会長に、もしご指摘のような問題があるなら、ジャーナリストたるもの、その事実を白日の下に晒して批判すべきだ。ご子息には気の毒だが、日弁連会長を父親に持ったのが不幸と諦めていただこう。

もちろん、個人攻撃をしなくても、証拠を示す方法はいくらでもある。たとえば、新司法試験開始後の二世弁護士の割合を調べてみたらどうか。もちろん、旧試験時代から二世弁護士は多いが、同期に占める二世弁護士の割合が、新司法試験開始後有意に増えた、というなら、それは「陰謀」を示す一つの間接証拠になりうるだろう。

繰り返すが、筆者が言いたいのは、陰謀論は一切ダメ、ということではない。証拠も示さず、陰謀論を主張してはいけない、ということだ。証拠を探す努力さえしていないなら、なにをかいわんや、である。

編集長氏は、法曹でないにも関わらず、この業界の内情に通じ、しかも、数的多数のジャーナリズムに対抗して、司法制度改革の問題点を指摘し続けるという、極めて貴重な存在である。貴「重」な存在であるからこそ、その発言は重みを保ってほしいと熱望する。

上記陰謀論をまことしやかに語る若手会員が存在する、という事実は、私も知っている。だが、証拠もなく上の世代を批判するだけの行為は、居酒屋で上司の悪口を言い合うのと同レベルの情けない行為だ。ストレス解消にはなるだろうが、翌日の会社は、何も変わっていない。

 

追記;このエントリに対し、早速編集長氏からコメントをいただきました。ご指摘の通り、陰謀論是非論みたいな議論を戦わせること自体には、あまり意味がないし、問題意識は共有できたようなので、打ち止めにしたいと思います。考えてみれば、証拠の積み重ねで事実を明らかにしていくアプローチもあれば、まず仮説を立て、次に立証していくアプローチもあってよいわけです(前にせよ後にせよ証拠は必要だと思いますが)。その意味で、編集長氏には、司法改革の暗部を指摘し、これを証明してみせるという成果を期待したいと思います。

 

 

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コメント

時々読ませていただいてます。
確かに証拠もなく陰謀だと決めつけるのはジャーナリストとしてバランスを欠いているように思えます。
証拠がなくていいなら、いくらでも想像で言えますから。だったら司法改革そのものも陰謀だ、原発開発も陰謀だ、オスプレイの配備も陰謀だ、バブル崩壊も陰謀だと都合の悪い事は全部陰謀にできますものね。
発言に重みを持つのなら確かに先生のおっしゃる通り裏付けが必要だと思います。

投稿: | 2012年10月15日 (月) 11時34分

陰謀論は私も苦手です。
実証できないからです。

ただ、実証できないことによる気持ち悪さは、
司法改革推進側に対しても感じております。
「需要がある」「弁護士を増やしてあまねく
法の光を」といった類の言説です。

投稿: 弁護士HARRIER | 2012年10月16日 (火) 16時32分

世の中に陰謀があるは常
陰謀に証拠を残すものなどいない。だから求めること自体愚か

結局、業界自体がその因果応報を受けるのだから自業自得
私は、弁護士と接することが多くあったが、非常識な連中である

同じ弁護士に「猿でもできる弁護士」といった本があったが、こ
れが正解なのかはともかく、情報化社会の中で危うきに近寄らず
との風潮が広まっている。

統計からも本人訴訟は多く、弁護士の仕事は減っている。今はど
ちらかというとごね得、バリアーに利用している。

つまり、善人より悪人が利用する

弁護士が増えて、業界の浄化作用になることを期待している

投稿: 平砂俊三郎 | 2012年10月23日 (火) 13時30分

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