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2012年10月29日 (月)

韓国の司法制度改革について

韓国の政府官僚は、日本のやろうとすることをじっと観察し、日本が議論したり試したり失敗している有様を参考にして、到達点だけ取り入れることがある。たとえるなら、要領の悪い兄貴と、よい弟の関係だ。司法改革の分野でも、ロボットの分野でもそうだから、きっとどの分野も同じなのだろう。韓国では、「日本に先んじた」ということが、評価される一つの基準なのかもしれない。

だが、韓国人はズルい、と不平を言うのは大人げないというものだ。韓国が先んじてくれた結果、日本ではまだ経験できない未来を、韓国に見ることができる。

国立国会図書館海外立法情報藤原によると、20123月、韓国初のロースクール出身弁護士が誕生した。

韓国では、2009年に25校のロースクールが誕生した。政府により定員は2000人と決められ、ロースクールと法学部の併置は禁止された。日本の「失敗」を避けるため、定員数を厳格に管理した結果、20121月に行われた弁護士試験の合格率は70%を超え、併存する旧制度(司法研修院)出身者と合計して2500人の法曹が誕生した。韓国の人口は日本の3分の1強だから、日本に換算すると約7000人になる。この法曹人口増加政策の結果、2010年に約1万人だった開業弁護士数(人口比で換算すると現在の日本とほぼ同じ)は、2020年代前半には約3万人に達するという。また、韓国では法曹一元化が段階的に実施され、2022年以降は、10年以上検察官又は弁護士の経験のある者から裁判官が選任されることになる。

韓国は、実に見事に、日本の失敗や試行錯誤や骨抜きを回避して、日本が掲げた理想通りに司法改革を実行したことが分かる。その結果、ロースクールの設立は日本より3年遅いものの、法曹一元の実現では日本を追い越すこととなったし、法曹志望者の減少も、日本ほど急激にならずに済んでいる。

では、韓国法曹界で起きつつある、日本ではまだ見ぬ未来はどうか。

記事によると、韓国は米韓FTAにおいて合意された国内法律市場の開放を実施するため,2009年に「外国法諮問士法」が設立され、EU韓では20167月、米韓では20173月以降は、国内外法律事務所が合同で事務所を設立し、国内弁護士を雇用して訴訟業務も担当できるようになる。韓国国内法律事務所は、大規模化と海外進出で対抗する構えだという。

もう1点、「弁護士仲介制度導入の動き」があると記事は伝えている。これは、弁護士を紹介する事業を、一定の条件の下で許可する制度であり、韓国弁護士会がすでに実施している「弁護士専門分野登録制度」と連動させる予定だという。これらは、日弁連レベルでも同様の取り組みがなされているが、様々な議論があって足踏み状態にあるものだ。この点も、試行錯誤する兄貴を要領の良い弟が追い越した例だろう。その先に何が待っているのか、兄貴としては、じっくり観察したいところである。

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コメント

以前サムスンに対する電子部品の営業と納入の仕事をしていました。
そのとき感じたのは、日本社会と韓国社会では目的達成に向けた行動力が全く違うということです。彼らは目的達成に対して貪欲です。それが日本人から見ると、非常に図々しく見えたり、傲慢に見えることがありますが、逆に日本人の役員や上司たちはいつも何かを諦めているような気がして、苛立ちを感じたのを思い出しました。

ひとつの狭い業界内の出来事を社会一般に拡大して解釈してはいけないかもしれませんが、個人がそうであるだけでなく、社会全体にそういう動力が備わっている気がします。そういう傾向が韓国社会にあるとすれば、10年後、20年後により良い社会になっているのは韓国のほうかもしれません。

日本の社会にはほとんど全く欠けているものが韓国にはあって、しかもそれはすごく重要なことなのではないかという気がします。というよりも目的や目標という中心部分が永遠に欠けたままなのが日本の社会とも言える気もします。

何が言いたいのかよくわからない文章になってしまいましたが、このような記事を読むといつもそんなことを思います。

投稿: y | 2012年10月29日 (月) 12時04分

コメントありがとうございます。ご謙遜ですが、おっしゃりたいことはとても明確だと思いますし、大いに共感できます。これからもよろしくお願いします。

投稿: 小林正啓 | 2012年10月29日 (月) 13時37分

ご返答恐縮です。
このブログのファンの一人としてエントリーを考えながら、楽しく読ませていただいています。
今後もバシバシ発言お願いします!

投稿: y | 2012年10月29日 (月) 18時02分

>法曹志望者の減少も、日本ほど急激にならずに済んでいる。

 ん!? 
 韓国は、司法制度改革に成功して、法曹志望者もうなぎ登りではないのですか。

投稿: なしゅ@東京 | 2012年10月30日 (火) 22時40分

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