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2012年11月 2日 (金)

なぜ下鴨神社には大国主命が祀られているのか

京都家庭裁判所は、下鴨神社の境内にある。裁判の後、時間が余ったので、下鴨神社にお参りをした。

下鴨神社の本殿は二棟あり、「西本殿」には賀茂建角身命(かもたけつぬみのみこと)、「東本殿」には玉依媛命(たまよりひめのみこと)が祀られている。この二人は父娘だ。そして、玉依媛命の子である賀茂別雷命(かもわけいかづちのみこと)は、上賀茂神社に祀られている。つまり、祖父・母・息子の三世代が、鴨川のほとりの二つの神社に祀られているのだ。

ところで、本殿前には、7つの小さな社があって、十二支を祀っている。説明によると、これらは大国主命(おおくにぬしのみこと)の7つの別名だという。つまり、下鴨神社は、大国主命も祀っているのだ。だが、大国主命と言えば、出雲大社が本家。なぜ、下鴨神社に大国主命が祀られているのだろうか?

これは、京都の治水政策と深く関わっていると思う。

京都は巨大な盆地に、北から鴨川、西から桂川が流れ込んで作った複合扇状地である。盆地内の複合扇状地の河川は、氾濫しやすい。しかも北山から南東に流れ下る鴨川は、北東から流れ来る高野川と合流してYの字をなし、そのまま真南に流れ下っている。この合流地点は危ない。両河川の上流で豪雨があれば、たちまち合流地点から氾濫するだろう。白河法皇すら「賀茂河の水、双六の賽、山法師」は思いのままにならないと嘆いたという。古来、鴨川は暴れ川として知られていたのである。

このYの字の結節点に臨む三角地帯に建つのが、下鴨神社であり、鴨川側のやや上流にあるのが、上賀茂神社である。

この場所に両社を置いた大和朝廷をはじめとする統治者の目的は、鴨川の治水にあったというべきだろう。

古今東西、治水は政府の重要な任務であった(「政治」の「治」は、水を防ぐ台、すなわち堤防をあらわす)。したがって朝廷は、堤防の建設など、鴨川の治水に尽力したのだろうが、豪雨の方は、どうにもならない。文字通り、神頼みしかない。豪雨の先触れとなるのは雷だから、雷神を鎮める神力が必要だ。上賀茂神社の祭神である賀茂別雷命は、「雷を別けるほどの力を持つ神」という意味であり、雷神に対抗させるには、これほどふさわしい神はいない。そこで朝廷は、上賀茂神社に賀茂別雷命を祀り、下鴨神社にその母親と祖父を祀って、親子三代の力で雷神を鎮めようと考えたのである。ごろごろごろ、と遠雷が響くと、上賀茂・下鴨神社の神官は総出で祈りを捧げ、雷神を鎮めようとしたのだ。馬鹿にしてはいけない。これは、当時としては最新の気象学に基づく、合理的な対策なのである。

さて、最初の疑問に戻ろう。なぜ、下鴨神社に大国主命が祀られているのだろうか。大国主命は、大和朝廷に対する「国譲りの神話」で古事記に記録されている。だが、「国譲り」とは勝者の勝手な言い分で、真相は大和朝廷による政権奪取だったという説もある。そうだとすれば、負けた大国主命は、怨霊となって祟るのがセオリーだし、怨霊の中で最もポピュラーなのが雷神だ。ちなみに、菅原道真は讒訴され左遷されて死に、天神すなわち雷神となって祟ったため、これを鎮めるため建立されたのが北野天満宮であり、これも、天神川のほとりに建てられている。

また、大国主命の本籍は出雲国だ。出雲国とは、文字通り雲出る国であり、雲は雨を呼び、雨は川を氾濫させる。雷の多くは西からやって来るが、京都から見て西が出雲国だ。大国主命について脛に傷持つ朝廷としては、神社に祀って魂を鎮め、雷になって暴れないよう、下鴨神社に祀った、とは考えられないだろうか。

ちょっと待てよ。すると下鴨神社には、雷を鎮める神様と、雷になった神様と、両方祀ってあるというわけかい?そんな呉越同舟みたいな解釈はおかしいんじゃないの、という批判は甘受しよう。それこそ、いかにも日本の神社らしいところで、という言い訳くらいしか考えつかない。いずれにせよ、アマチュアの戯言だと思って勘弁してほしい。

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コメント

下鴨神社の別雷命は別名をアジスキタカヒコネと言い賀茂氏の祖神です。
奈良から京都に都が移された経緯から、氏族の移動や勢力を考えると、なぜ下鴨神社に賀茂氏が祀られているか見えてくるでしょう。

投稿: | 2016年6月 5日 (日) 00時18分

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