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2012年11月30日 (金)

福岡県弁護士会木曜会講演原稿より(5)

1116日、福岡県弁護士会木曜会設立40周年記念講演『弁護士の近未来予想図~弁護士に明日はあるか?』で40分間の基調講演を行う機会を頂きました。実は、この企画は2年前にあったが、私が倒れたためキャンセルされていたものです。折角の機会だったのですが、リベンジということで、気負いが先に立ってしまい、やや盛り込みすぎの内容になってしまいました。そこで、以下数回に分け、原稿に基づき、実際の講演内容に加除修正を加えてブログに記します。

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第三に、個々の弁護士の近未来を考えてみたいと思います。

現在の弁護士の経済的困窮の主要因が、司法制度改革にあるのか、長期不況にあるのかは、一概には言えないと、私は考えています。しかしいずれにしたところで、弁護士が生き残るためには、業務形態の大幅変更が求められていることは、間違いないのだろうと思います。

まず考えるべきは、「弁護士はなぜ儲からないのか?」という点だと考えます。私を含め、「働いても、働いても、全然儲からない」と考える弁護士は多いと思います。その原因は、「弁護士は頭脳労働者である」点にあると考えます。脳みそは一つしかなく、かつ一日は24時間しか無いので、弁護士一人の業務時間は当然限定されます。その範囲でしか収入がないから、儲からないのです。

言い換えれば、「不労所得がない」ということです。具体的にいうと、弁護士は他の職業に比べ、無資格者に同種の労働をさせることが、法律で厳しく制限されています。大手事務所や過払い専門事務所は、弁護士業務を事実上、無資格者にやらせることで利益を上げていますが、一般の弁護士は、そのようなやり方を軽蔑しています。それ自体は結構なことですが、そういった旧来型の弁護士は、依頼者からの事情聴取や、サラ金担当者への電話や、弁論への出頭を、全部弁護士自身がやらなければなりません。それが、自らの首を絞めていることに気づいていないのです。

実は、旧来型の弁護士には、不労所得がありました。それが顧問料です。顧問先を10社以上持ち、しかも相談はほとんど無い、という状態が、事務所経営の基礎を支えていたのです。ところが、この「顧問料ビジネスモデル」は、消滅しつつあります。その結果として、中堅以下の弁護士は、事務所経営の危機にさらされているわけです。

このように考えてくると、業務形態変更の方向性は、多少見えてきます。一つは、弁護士法72条を改正ないし撤廃して、非資格者による弁護士業務代行を合法化することです。具体的には、事務員や代行業者に出頭代行を委託するのです。眉を顰める向きもあると思いますが、遠くの支部の弁論に行くだけで一日を使うことが、どれほど我々の足かせになっていることか、考えたことがないのでしょうか。もう一つは、同じく72条を改正して、事件紹介業を合法化することです。また、事件紹介業を合法化することは、事件獲得のアウトソーシングとして、一つの合理的な選択とはいえないのでしょうか。すでに、たとえば「弁護士ドットコム」は事実上弁護士紹介業として機能しています。ただ、現時点では弁護士法72条により、完全無償であるため、経済的事業としては成立しえていません。また、経費削減としての、弁護士会費の大幅削減も、当然、議論の俎上に載ってくると思いますし、会務活動に投じる「時間」も、当然、削減の検討対象になります。会務が減れば、会議室も必要ないので、弁護士会館も小さいもので足りることになります。

実は、日弁連や大阪弁護士会は、弁護士紹介限定つき解禁の検討を始めています。韓国は、日本より一足早く、弁護士紹介業の一部解禁に踏み切ろうとしています。しかし、弁護士広告解禁の例が示すとおり、一定限度に保ちつつ解禁などということは、あり得ないと考えます。

私は、弁護士法72条を廃止してしまえと言いたいのではありません。私が言いたいのは、かつて日弁連が、すべてに優先して守ろうとした弁護士自治や弁護士法72条を、弁護士自身がうち捨てることが、現実問題となりつつある、ということです。(続)

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コメント

「個々の弁護士の近未来」と言いながら、マクロな方向性についての考察ですね。これまでの護送船団方式の延長線上の議論でしかないと思います。

個々の弁護士ということですと、「お客様に顔を向けることで伸びていく弁護士」と、「国と弁護士会の方ばかり見て没落していく弁護士」の二極化が進むということで、間違いないはずです。

投稿: ファンの弁護士 | 2012年12月 2日 (日) 19時57分

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