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2012年11月28日 (水)

福岡県弁護士会木曜会講演原稿より(4)

1116日、福岡県弁護士会木曜会設立40周年記念講演『弁護士の近未来予想図~弁護士に明日はあるか?』で40分間の基調講演を行う機会を頂きました。実は、この企画は2年前にあったが、私が倒れたためキャンセルされていたものです。折角の機会だったのですが、リベンジということで、気負いが先に立ってしまい、やや盛り込みすぎの内容になってしまいました。そこで、以下数回に分け、原稿に基づき、実際の講演内容に加除修正を加えてブログに記します。

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自治の問題に関して、弁護士自身が案外問題視しないのは、単位会自治の問題です。単位会は他の単位会とは完全に独立しており、日弁連とすら、上下の関係にありません。これほど高度な自治権を保障されている理由は、理念的なものではなく、歴史的背景にしかありません。懲戒権の独立を保障するだけなら、全国一つの弁護士会でも差し支えないはずです。これほど高度な自治権が必要なのか?という議論が、もうすぐ出てくると私は予想します。

例えば大手企業のインハウスや、弁護士法人の勤務弁護士が、転勤のたびに入会申請と多額の入会金を要するには、どう考えても不合理です。また、高齢になり引退を考える弁護士のうち、事務所と自宅が他府県をまたぐ弁護士にとって、入会金の存在は、事務所を引き払って自宅で開業する妨げになります。そもそもグローバル化した現代社会において、弁護士会だけ県単位で強力な自治権を保障される意味なんてあるのでしょうか。

また、弁護士会費の大半が会館建設・維持費と職員の人件費に使われていることをお話ししました。この人件費が高い理由の一つは、総務的な業務が単位会ごとにバラバラで、統一できないことにあります。例えば九州で弁護士会を統廃合して一つにすれば、人件費は大幅に節約できます。これは道州制と同じ発想であり、政治家や役人はこの構想を真剣に考えているわけですが、なぜ弁護士が誰一人、同じ発想を持たないのか、私には不思議で仕方ありません。

イギリスの弁護士会が自治権を失ったことを、危機的に語る日本の弁護士は多いと思います。そう言う人に私は問いたい。「それで、誰か困っているのか?」と。少なくとも私は、自治権の喪失で困ったイギリス人がいるという話を聞いていません。

自治権イコール懲戒権だと考える弁護士が多いのも情けないことです。自治権の要件は、人事権の独立、規則制定権の独立、予算権の独立、そして建物の独立です。この中身を、もう少し真剣に考えてほしいと思います。

私は、弁護士自治がなくなってほしいとは考えていません。しかし、弁護士の経済的困窮は、間違いなく、弁護士会を自治権喪失に向かわせています。一方で弁護士は、自治権の本質やその存在意義を、余りに表面的にしかとらえていないように思います。こんな状態なら、給費制同様、弁護士会は自治権を保持することはできないでしょう。(続)

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コメント

私も、各県に一つの単位会というのは無駄だと思います。

というより、弁護士会に限らず、都道府県ごとにコミュニティを形成しているのは、制度的にそうなっているからに過ぎないのに、それを所与の前提としてしまって無駄を省こうと考えないのは本当に疑問です。

地元マスコミが各県でどういう力を持っているかを考えると、そういう議論が拡大していかない理由も分かる気がします。

投稿: いなかロー弁 | 2012年12月 4日 (火) 13時35分

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