セコムの自律型の小型飛行監視ロボットと道交法について
防犯サービス大手のセコムは昨年12月26日、民間防犯用として“世界初”をうたう「自律型の小型飛行監視ロボット」の試作機を報道陣に披露した。
試作ロボットは、敷地内への侵入に迅速に対応し、不審者や不審車両の特徴を確実に捉えることを目的とする。建物に侵入される前の段階、例えば、駐車場への侵入などの段階から早期に対応・対策したいという同社の長年の願いを実現するロボットだという。
この手のロボットは、スパイ映画では最初にあっさり撃退されるのがお約束だが、それはさておき、法的に気になるのは道路交通法との関係だ。敷地の上空はさておき、敷地外の公道上を飛行することは、道路交通法に違反する可能性がある。
道路交通法は、「道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図り、及び道路の交通に起因する障害の防止に資することを目的とする」(1条)法律であって、道路上での工事、広告物の設置、露店、映画撮影等のため一時的に道路を使用する場合には、所轄警察署長の許可が必要とされている(77条1項)。ポイントは、電線やアーチなど、道路の上空に存在して道路に触れていないものであっても許可の対象になる点であり、ビルの窓ふきゴンドラも対象になり得るという。高層ビルの窓ふきゴンドラが本当に道路交通法の対象になるのか、厳密に考えれば疑問無しとしないが、道路交通の安全を守るという立法趣旨に照らせば、道路の上空を一時的に使用するに過ぎないものであっても、道路交通法による規制の対象になることは明らかだ。つまり、SF映画に登場するようなエアカーやホバークラフトは、車輪がない以上、道路交通法上の「車両」に該当するか疑問だが、道路交通法の趣旨に照らせば、車輪を有する自動車と区別すべき理由はない、ということになる。
他方、たとえば航空機は、道路の上も私有地の上も、お構いなしに飛行している。本来、土地の所有権は土地の上下に及ぶ(民法207条)から、宇宙の果てまで土地所有者のものだが、航空法により、航空機の通過は道路交通法による許可の対象外にされていると解される。だが、航空法の定める「航空機」とは、「人が乗って航空の用に供することができる飛行機、回転翼航空機、滑空機及び飛行船その他政令で定める航空の用に供することができる機器」(2条)をいうとされているから、無人飛行機を含まない。したがって、セコムの自律型飛行ロボットは、管轄警察署長の許可がなければ、道路の上空を飛べないことになる。
実際のところ、こんなものが突然、ドライバーの目の前に飛んできたら危なくて仕方ない。セコムの自律型飛行ロボットが敷地外の道路上を飛ぶのは、違法と解するほかないだろう。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
素人です。本当に教えていただきたくて書いています。
「所轄警察署長の許可が必要とされている(77条1項)」道路使用許可のことですよね。セコム条文中の「作業」にばっちり当てはまると思います。
あと「アーチ」は第2項に列挙されていますが「電線」は占有の話ではないでしょうか。それともやはり使用の話でしょうか。
個人所有のマルチコプターが、ロケや撮影会ではなく、上空を通行する場合って、77条1項に当たらないのですが(たぶん)、どう整理すればよいのでしょうか。
あと、エアカーやホバークラフトが車両同等とするなら、そもそも「一般的使用行為」になるので、許可など不要という判断になると思いますが、間違っていますか?
投稿: kazu | 2015年7月 2日 (木) 00時26分