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2013年5月 9日 (木)

筋電義手で夢つかむには

5月5日の毎日新聞大阪朝刊は、「筋電義手が夢つかむ」との見出しで、先天的に片手の肘から先のない2歳児が装着するロボット義手を紹介していた。

解説によれば、筋電義手とは、脳からの指令を受けた筋肉が実際に収縮するときに発生する微弱な電気(筋電)を利用し、ロボットハンドを操作するシステムであり、習熟すれば卵を割るなど人の手に近い微細な動作も可能という。一台約150万円だが、医師の意見書があれば市町村判断で補助金が支給され、上限37200円の自己負担で購入できるとのこと。

この種の技術は、障がいを持つ人にとって朗報だろうが、普及させるには法整備が欠かせないと思う。

たとえば、筋電義手を装着して自動車を運転していた人が事故を起こした場合、義手の不具合を主張して責任を免れうるか、という問題がある。装着者がハンドルを切ろうと思った途端、義手が思い通りに動かなくなって衝突事故を起こしてしまった場合、装着者は義手の不具合を主張立証して責任を免れることができるのだろうか。

この問題については、おそらく、事故の被害者を最も保護するべきなのだろう。事故の真の原因が筋電義手にあるにせよ、ないにせよ、ドライバーが筋電義手を装着しているという、被害者のあずかり知らぬ事情によって、不利に扱われるべき理由はないからだ。したがって、この設問のドライバーは、事故の被害者との関係では、筋電義手の不具合を理由に責任を免れることはできないと考えるべきであろう。いうなれば、義足ではない、生身の足の持主が、「ブレーキを踏もうと思ったら足がつって、踏めませんでした」と弁解しても、事故の責任を免れないのと同じである。

但し、筋電義手の装着者は、義手に不具合があったことの立証に成功すれば、筋電義手のメーカーや貸与者に対して、被害者に支払った賠償金を求償することができる。

もっとも、筋電義手の欠陥を証明することは困難と思われる。従って、筋電義手のユーザーは、事前に損害賠償責任保険に入って、リスク分散を図るべきことになる。強制保険制度も検討の対象になろう。

筋電義手が、障がい者の夢をつかむには、技術の進歩だけでなく、法整備もまた、不可欠なのである。

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コメント

筋電義手の普及によって特有の法的問題が発生し得ることまでは理解できますが,民法や刑法,製造物責任法といった既存の法律の解釈・適用によるのではどのような不都合があるというのか,十分に説明されていないような気がします。
特別法による強制保険制度の必要性が認められるのは,自動車のように事故の危険性が相当程度高い場合や,不動産業者のように被害事例が多発している場合ですが,現時点において筋電義手がそこまで危険性の高いものであると決めつけるのは若干無理があります。

投稿: 黒猫 | 2013年5月 9日 (木) 21時36分

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