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2013年6月 7日 (金)

憲法96条改正のメリットとデメリットについて

憲法96条改正論議が盛んである。

いろいろな意見が出されているが、理論的な検討は学者さんにお任せするとして、憲法96条を改正して国会の発議要件を緩和した場合のメリットとデメリットについて、一点ずつ指摘してみたい。

まず、メリットとしては、現行憲法が真に、国民の制定した憲法になる、という点が指摘できる。

反対論の中には、96条が改正されると、時の多数党の思うままに憲法改正が可能になるとの主張もあるようだが、そんなことはない。憲法改正には、国民投票が必要だからだ。国民は、国会によって憲法改正が発議されるたび、国家運営の基本的あり方を自ら考える機会を得る。その結果、改正され、あるいは改正が阻止された日本国憲法は、真に、国民自らが制定したという正統性を獲得するだろう。もちろん、憲法96条を改正しなくても、いつの日か、国民が憲法改正投票を行うときが来るかもしれない。だが、この70年間近く、その機会がただの一回も来なかったというのは、いささか長すぎやしないだろうか。

ところで、国民自身が憲法を制定するというと、まるで「押しつけ憲法論」のようだが、私は、これに与するわけではない。

現行憲法が占領下で制定されたことは事実だけれど、多種多様な憲法草案が日本国民から自主的に提案されたことも事実だし、その中で、「憲法研究会案」がGHQの大いに参考にするところとなったことも事実である。なにより、新憲法は当時の国民の多数に、熱烈に支持された。「押しつけ憲法論」は、歴史認識として間違っているか、あるいは、一種の陰謀論だと、私は考えている。

しかし、戦後の憲法が当時の国民の支持を受けたと言っても、その当時、自らの問題として憲法を考え、支持した人たちは、ほぼ全員鬼籍に入ってしまった。乱暴にたとえるなら、現行憲法は、お爺ちゃんまたは曾お爺ちゃんが若いとき、諸般の事情で下宿していた理想家肌の外国人宣教師と合作した「家訓」のようなものである。現在それは、先祖が作ったものであるというだけで、正統性を保っている。立派なおじいちゃんがつくった家訓だから守るのだ、という意見もあっていいけれど、少なくとも国民主権の原理に照らすと、よろしくないのである。なぜなら、国民主権の「国民」とは、今生きている我々のことだし、「権」とは、究極的かつ具体的には、憲法を制定改廃する権利を意味するからである。先祖がつくったから守るのと、改廃の権利を敢えて行使せず守るのとは、全然違うのだ。

わたしは「押しつけ憲法論」には与しないけれども、現行憲法は出生時から、一種の宿痾を背負っていることも事実である。今後、憲法が民主主義的正統性を獲得するには、我々現役世代が、自ら改正し、または、自ら改正を阻止したという経験が必要ではないだろうか。

他方、デメリットとしては、政治の混乱または停滞が指摘される。衆参両院で過半数を制することが憲法改正発議の条件になるとすれば、最短で6年ごと、つまり参議院選挙が2回行われるたびに、憲法改正発議が可能になる。選挙は憲法改正だけを争点に行われるわけではないし、政権政党の支持率は、選挙後右肩下がりになるのが通常だから、政権政党が本気で憲法を改正しようと思ったら、国会の過半数を制したら直ちに国会に憲法改正案を上程する必要がある。そうなればおそらく、他の法案の審議は全部ストップして、さながら憲法改正国会となるだろう。

もちろん、憲法改正という大仕事のためには、他の政策が全部ストップするのも仕方ない、という意見はあって当然だが、6年に1度は多すぎてちょっと疲れる。私の感覚としては、わが国が憲法改正論議一色に染まるのは、国民一人の一生に二度、つまり30年に一度くらいで、ちょうどではないかと思う。

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コメント

メリットが観念的で、「それが本当にメリットなのか?」と思ってしまいました。

投稿: | 2013年6月22日 (土) 15時56分

憲法96条改正で検索して拝見させていただきました。

まさに、30年に1度ぐらいの憲法改正がちょうど良いと思います。
そのためには、国会、衆議院・参議院の6割、
そして、国民投票も6割にすると
ちょうどバランスが良いのではないでしょうか?


現行か過半数という単純な二者択一ではなく、
今後、中身のある国民的論議を期待しています。

投稿: 建岳 | 2013年9月13日 (金) 11時25分

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