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2014年1月15日 (水)

顔認証技術の現在について(2)

一方、コンピューターの顔認識能力は、人間のそれに比べると、お話にならないくらい低い。顔の向きや光量、光源など、様々な要因によって左右されるし、まして、別の日に同じ場所を通った二つの顔が同じ顔だと判断するのは、大変なことなのである。

わが国における顔認証システムの公的な実証実験の最初は、平成18年(2006年)に地下鉄霞ヶ関駅で行われ、改札機の斜め上に監視カメラが設置された。「地下鉄テロ防止」などと銘打っているが、地下鉄の改札にカメラを設置した理由は他にある。地下なら光量や光源の位置は一定だし、自動改札を通過する人の向きは同一だし、一人ひとりバラバラに通過するので、当時の低レベルなプログラムが顔認証を行うには、うってつけの環境だったからだ。

本年4月、JR大阪駅のステーションシティにおいて、顔認証技術の実証実験が行われると報じられた。紙面の写真を見る限り、カメラが設置されるのは地下通路であり、光量と光源の位置一定なのは、霞ヶ関駅の時代とかわらない。但し、多数の人間が前後に通行する(横を向く人は、場所の特性上、少ないだろう)ので、そこから一人ひとりの顔を識別するのは、霞ヶ関の駅の実験に比べれば、ハードルが高い。

この8年間で、コンピューターの解析技術が飛躍的に高くなったともいえるが、所詮この程度、とタカをくくって差しつかえないレベルでもある。ネットの世界では、「大阪駅に行くな!顔認証で何してるか全部ばれるぞ!」などといった過激な言葉が飛び交っているが、実際のところ、恐れるほどのものではない。

もちろん、何十年か後には、『マイノリティ・リポート』並の監視技術が普及しているかもしれないし、そのような未来と技術を見越した議論を今から始めるのは大事なことである。ただ、その相手をろくに観察せず、脊髄反射的な反感を行動原理としているうちは、健康な議論は不可能だと思う。

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