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2014年2月12日 (水)

日弁連会長選挙の開票結果について

2月7日に投開票が行われた日弁連会長選挙は、いわゆる主流派に属する村越進候補が、武内更一候補を大差で破って当選したが、全国の投票率は46.64%と、現行制度では史上最低を記録した。

元「法律新聞」編集長氏は、この投票率を、「会員が抱える現実の深刻さと裏腹の無力感、無気力感が広がった今回の選挙こそ、強制加入団体として、末期的ともいえる日弁連の現実である」と指摘している。

私は、編集長氏に正面から異議を唱えるわけでもないが、かといって、全面的に賛成するわけでもない。開票結果をさんざん分析してみたけれど、何か特定の傾向を見いだすことができなかった、というのが、今回の感想である。

たとえば、武内候補について、選挙初挑戦で知名度がないのに善戦した、という見方がある。そこで、武内候補の正統な先輩である高山俊吉弁護士が日弁連会長に初挑戦した平成12年(2000年)の日弁連会長選挙結果と比較してみる。この選挙で、高山候補は3459票を集めたが、7996票の久保井候補に敗れた。ほぼダブルスコアだが、トリプルスコアに近い武内候補よりマシだ。その意味で、武内候補は善戦したという評価は間違いである。

平成12年の日弁連会長選挙結果と平成26年度の日弁連会長選挙結果を比較した場合、最大の差は、会員数だ。平成12年当時の17135人に対し、平成26年は34693人だから、倍である。その意味するところは、会員の半数にあたる17000人が、登録14年目までの若手だということだ。

しかし、今回の選挙において、若手特有の投票行動は発見できなかった。例えば、もし若手の選挙離れが著しいなら、会員増加率の高い単位会ほど投票率低下は著しくなる筈だ。しかし、会員増加率343%で全国一位の島根県弁護士会の投票低下率16.07%に対し、会員増加率140.8%で最下位の沖縄弁護士会の投票低下率は14.82%で大差ないし、他の単位会にも、会員増加率との相関関係は見られない。

また、前回、前々回の会長選挙で見られた、地方対東京、という構図も現れなかった。

近年、法曹人口問題に関する決議を行う単位会がある。しかし、そのような単位会の投票率が高いとか、一方候補者の得票率が高いとか、という相関関係もみられない。

また、投票率が下がったといっても、単位会によって相当差がある。平成12年会長選挙と比較して、投票率低下5傑は愛知県(93.66%23.62%)、札幌(88.5738.11)、兵庫県(86.24%37.20%)、大阪(84.36%42.40%)、佐賀県(72.22%33.33%)だ。平成12年度は大阪出身の会長候補者だったから、大阪の低下は当然として、愛知県の下落ぶりはすごい。だが何故かは分からない。

一方、栃木、高知、岐阜、富山、新潟、京都、山梨、東京は、平成12年と平成26年の選挙とで、投票率の変化がほとんどない。特に東京弁護士会は、平成12年度投票率64.76%、平成26年度投票率64.38%であり、差異が最も少ない。この12年間に、東京弁護士会の会員数が3879人から7136人に増え、増えた人の大半が12年目までの若手であることを考えれば、投票率が維持されていることは驚異的ですらある。

一方、勝利した村越候補の出身母体である第一東京弁護士会の投票率は44.39%であり、平成12年度の68.20%を大きく下回っているばかりか、東京弁護士会の投票率64.38%にも、はるかに及ばない。第一東京弁護士会が前回日弁連会長候補を出したのは平成16年(2004年)の梶谷剛候補のときだが、このときの投票率は63.32%だった。

これらの事実は、村越候補の当選は、出身母体の第一東京弁護士会ではなく、東京弁護士会に負っていることを意味している(ちなみに第二東京弁護士会の投票率は29.27%で、お話にならない)。さらにいえば、東京弁護士会内の最大派閥である法友会(平成22年度会員数2398)が、集票マシンとしての実力を発揮したことを示している。

以上見てきたように、今回の日弁連会長選挙の開票結果は、子細に見れば注目点もあるが、全体としてみれば、史上最低の投票率という以外、何らかの傾向を読み取るべき材料を見いだすことができない。「特段新規な公約を打ち出さなかった主流派候補と、新左翼の対立候補では、勝敗は見えていた」ことが、史上最低の投票率の原因という、実も蓋もない分析結果で、お茶を濁すしかないようだ。

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コメント

 小林先生は言及しておられませんが、今回の選挙の最大の注目点は、52単位会中51単位会で、村越候補が最多得票を獲得したことだと思います。
 これをどう分析しどう評価するかが、今後の日弁連選挙の指針となりうるものと考えます。

投稿: なしゅ | 2014年2月15日 (土) 16時33分

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