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2014年3月 6日 (木)

Google glassは違法か?

今年中の一般販売が噂されるgoogle glassだが、機能的には、ビデオカメラを縛り付けたメガネと同じで、顔の向いた先を常時撮影録音(以下撮影等という)することができる。当然、多くの他人が撮影されることになるから、これらの人びとのプライバシー権との関係上、違法ではないかが論じられている。

まず、人は、プライバシー権の一つとして、その意思に反して撮影等されない法律上の権利(=みだりに撮影等されない権利)を有する。もちろん、法律上の権利を有するといっても、例外なく100%保証されるのではなく、他のさまざまな権利や利益と調整するため制限を受ける。そこで、google glassによる撮影等を正当化する理由や理屈や条件が見つかるか、が問題となる。

たとえば、「公共の場所ならgoogle glassによる撮影等は許される。なぜなら公共の場所で人びとは撮影等されない権利を放棄しているからだ」という理屈がありうる。この理屈は、米国では通じるかもしれないが、少なくとも日本では通じないだろう。google glassを装着して他人に面と向かうことは、その他人にテレビカメラとマイクを突きつけていることと同じだ。公共の場所であろうと、テレビカメラとマイクを突きつけられて拒否する権利が無い、という理屈は成り立たない。承諾がなくては、撮影等することは許されないのが原則なのである。

承諾が必要、という考えに対しては、「たとえば観光地で記念写真を撮れば、背景に他人が写ってしまうこともよくあるが、そんなときでも承諾なく撮影しているではないか」という反論もあろう。しかし、観光地の場合は、口に出さずとも、互いに撮影等を承諾しあっているのであり、この理屈を公共の場所一般に当てはめることはできない。

「観光地でなくても、今やあらゆる道路や商店街に防犯カメラが設置され、通行人の承諾なく全てを撮影している。google glassで撮影しても同じではないか」という意見もあろう。確かに、街頭防犯カメラは、通行人の承諾なく撮影を行っている。しかも、街頭防犯カメラを一般的に適法とする法律も裁判例も、日本にはない。

しかし、街頭防犯カメラは、防犯という公共目的に基づく撮影を行っている点で、google glassとは異なる。この理屈では、たとえば勤務中の警察官がgoogle glassを装着することは許されるが、一般人が身につけることは許されない、ということになる。

「いまや通行人の大半はビデオカメラ付きの携帯電話を所持しており、頻繁に撮影しているではないか。ビデオカメラ付き携帯電話とGoogle glassとの違いは、いつでも撮影できるか、常時撮影しているかの違いだけではないか」という指摘もありうる。

確かにそのとおりだ。ただ、ビデオカメラつき携帯電話での撮影等は、外見から明瞭に分かる。そのため、撮影されたくない人は、避けることができるし、拒否することもできる。これに対して、google glassの場合、撮影等の行われていることが、外見からは明瞭には分からない(らしい)。いいかえれば、google glassの場合、撮影される人に、承諾したり拒否したりする機会が与えられていないということだ。

このように考えてくると、google glassも、撮影等を行っていることが、外見から明瞭に分かるようにすれば、被撮影者の承諾ありとみなされ、合法とされるという考えは成り立ちうるだろう。具体的には、たとえば撮影等しているときには赤いLEDが点灯するような機構を義務化することにより、撮影等を行っているか否かが、外見上明瞭に判別できるようにことが考えられる。

…とまあ、法論理的には、たぶんこういう考え方が正しい。ただ、現実世界が法論理通りに動くとは限らない。思い起こせば街頭防犯カメラは、法律的にも判例上も、違法としか考えられなかったのに、これを受容する社会的合意が形成され、今更違法にする訳にもいかないのが現状だ。とすればgoogle glassも、その圧倒的な魅力が、これを受容する社会的合意を形成すれば、法論理を覆し、合法的地位を獲得する、ということも、あるかもしれない。

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