« 自動運転自動車が事故を起こした場合の法的責任について | トップページ | 3Dプリンターで弁護士バッジ偽造 »

2014年5月 9日 (金)

アディーレ法律事務所が長野県・千葉県弁護士会を提訴した件について

伝聞だが、アディーレ法律事務所が長野県弁護士会に対して訴訟を提起したとのことだ。また、千葉県弁護士会に対しても訴訟を起こしており一審で敗訴し控訴中とのことである。提訴理由も伝聞だが、支店を出すに当たり、弁護士会の許可が不当に遅延した、ということのようだ。

いずれの訴訟も、アディーレ法律事務所の敗訴に終わるだろう。だが、この訴訟は弁護士自治に関する重大な問題をはらんでいる。

弁護士自治と聞くと、懲戒権の独占がどうやら、とオウム返しに言い出す弁護士がいる。こういう弁護士はかなり頭が悪い。懲戒権の独占は、弁護士自治の、ほんの一部に過ぎない。

弁護士会はもちろん、組織の自治権は、次の4つの独立要件を満たす必要がある。

第一に、人事権の独立。
第二に、予算編成権の独立。
第三に、規則制定権の独立。
第四に、建物の独立。

最後の要件については、異論があるかもしれないが、一から三について、異論はないだろう。懲戒権は、人事権と規則制定権の一部をなす権限に過ぎない。

人事権の独立は、入会を許し、退会を強制する権利の独立を含む。従って、誰を入会させるか、させないかを決めるのは、自治権の本質的内容だから、当該自治団体の裁量に属する。もっとも、弁護士会は純粋な私的団体ではなく、弁護士法に基づき設立された公的団体なので、職業選択の自由などの憲法上の規定に服する(=その限りで自治権は制限される)から、誰を入会させるかは、原則として当該弁護士会の裁量に属するが、濫用にわたり、憲法上の規定に違反する場合に限り、その裁量が違法となる場合がありうる、ということになる。「アディーレ法律事務所の敗訴に終わるだろう」と書いたのは、こういう意味である。

ただし、問題の本質はこの点にはない。アディーレ法律事務所が敗訴するのは、あくまで、長野県ないし千葉県弁護士会の自治を前提にした場合の話である。だが、この前提自体を疑えば、話は全然違ってくる。

弁護士自治が弁護士会に認められているのは、国家権力をはじめとする第三者から、個人の人権を守るためには、依頼された弁護士の独立と、その弁護士が属する弁護士会の自治が不可欠だからと理解されている。だが、この目的のためなら、日本に存在する弁護士自治は一個でよい。各単位会の弁護士自治は不要だ。法曹以外の人には初耳かもしれないが、長野県弁護士会などの地方弁護士会と日弁連とは、上命下服の関係にない。それぞれに独立した別組織であり、全国の弁護士は、それぞれの地方弁護士会と、日弁連の二つに加入しているのである。だが、弁護士自治の目的からすれば、必要なのは日弁連だけで、地方弁護士会は不要という結論が、論理的に導かれる。

「地方弁護士会の自治権が無いと、(多数の弁護士がいる)東京の思うままになってしまうではないか」と言い出す弁護士も多いが、こういう弁護士も、かなり頭が悪い。上述した弁護士自治の目的の中に、「東京の思いのままにさせない」などという目的はないからだ。もしこれも目的の一つというなら、地方弁護士会の弁護士自治は、国家権力等からの独立だけでなく、日弁連を含む他の弁護士会からの独立をも意味することになる。すると、日弁連は、各都道府県に居住する国民の人権を侵害する潜在的危険を保有している、という矛盾が発生してしまう。

現実には、地方の弁護士会は、人事でも予算でも建物でも、日弁連を含む他の弁護士会から独立している(規則については制限がある)。だが、この独立は、人権擁護という憲法上の目的から論理的に導かれるものではなく、歴史的なものでしかない。平たく言えば、既得権に過ぎない。そうでなければ、東京に三つも弁護士会が存在する理由の説明がつかない。その歴史的な根拠は、戦前の通信・交通手段を前提にしており、現代社会に通用するものではない。だから、交通や通信の発達に乗じて全国展開しようとする弁護士法人の戦略を、各地方の弁護士会が結果的にせよ妨害しているというのであれば、長期的に見れば、負けるのは弁護士法人ではなく、地方弁護士会の自治権である。

 

 

|

« 自動運転自動車が事故を起こした場合の法的責任について | トップページ | 3Dプリンターで弁護士バッジ偽造 »

コメント

ここの法律事務所、全国制覇でもする勢いで各地にあるが、本日、整骨院で週刊誌をみていたら「イケメン特集」でアディーレ法律事務所若手イケメン弁護士とやらが載っていた。最近のイケメンの偏差値てこのくらいなのかとあきれた。

投稿: はるな | 2014年5月10日 (土) 12時00分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/192469/59606527

この記事へのトラックバック一覧です: アディーレ法律事務所が長野県・千葉県弁護士会を提訴した件について:

« 自動運転自動車が事故を起こした場合の法的責任について | トップページ | 3Dプリンターで弁護士バッジ偽造 »