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2014年5月 7日 (水)

自動運転自動車が事故を起こした場合の法的責任について

自動車の自動運転技術が、実用化の域に達しつつある。ただし、事故が起きた場合の法的責任については、検討すらなされていないというのが、わが国の現状のようだ。

たとえば、 Google car のような完全自律運転自動車が事故を起こした場合、被害者は、誰に対して損害賠償請求できるのだろうか。完全自律運転自動車ではなく、運転支援技術が使われている場合はどうだろうか。

完全自律運転自動車の場合、運転していない人間には、原則として、法的責任はない。例外として、事故前から自動車の異常に気づいていて、しかも、緊急停止や手動切り替えが可能であったのに行わなかった、というような場合には、法的責任を負う場合があり得る。 Google car のビデオをよく見ると、運転席と助手席の間に目立つ赤いボタンがあり、非常停止ボタンと推測される。だが、これはあくまで例外であり、完全自律運転である以上、搭乗する人間が事故の法的責任を負うことはないのが原則だ。

そこで被害者としては、自動車のメーカーや販売者に対して、法的責任を追及することが考えられる。この場合考えられる法的構成は、過失を理由とする不法行為責任と、欠陥を理由とする製造物責任だが、現行法を前提とする限り、過失または欠陥の立証責任は、被害者側にある。では、被害者は、コンピューターの過失を、どうやって立証するのだろう?また、「過失」と「欠陥」の関係はどうなるのだろうか?これは、非常に難しい問題である。

伝統的な考え方に従えば、「過失は人間を前提とする概念だから、コンピューターの過失は観念できない」ということになるだろう。この考え方に従えば、完全自律運転自動車のメーカーや販売者が事故の法的責任を負うか否かは、設計者の「過失」またはコンピューターの「欠陥」の有無によってのみ決まる、ということになる。だが、たとえば、「蛇行する対向車に「気を取られて」(正確にはCPUまたはメモリに負荷がかかって)前方道路を横断する人間を認識して減速するタイミングが遅れた」というような場合、それは、その自動車自身の「過失」ではないのだろうか?それとも、「同時多発的異常事態に完全に対応できない欠陥」もしくは、「そのような欠陥を持つコンピューターを設計した過失」と言うべきなのだろうか。仮にそうだとして、そこまで立証する責任を被害者側に負わせることは、フェアとはいえないのではないだろうか。

あるいは、当該自動運転自動車が交差点に進入した時点で赤信号だったことは、ドライブレコーダーなどから明らかだが、プログラムにバグは見つからず、また、同一の状況で再現実験を繰り返しても赤信号無視は発生しなかったとする。この場合、「欠陥」が立証できず、コンピューターの「過失」は観念しえない以上、メーカーが責任を負うことはない、と考えるべきなのだろうか。

私がこの点にこだわるのは、自律運転自動車が事故を起こした場合、被害者が自動車の「欠陥」または設計者の「過失」を証明することは、自動車自身の「過失」を証明することより難しいのではないか、と思われるからだし、だからといって被害救済の幅を狭めることは正しくない、と考えるからである。

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コメント

ちゃんと議論されていないと導入できませんよね…

法整備をしないといけないと思いますので,法律家のはしくれとして,自律自動運転自動車に関する私見を述べると以下の通りです。

民事的責任 原則として運転者が負う(無過失責任)
 過失責任主義というのが建前にはなっているものの,民717では無過失責任が認められており,報償責任(車運転という利益),危険責任(何100キロの鉄の塊という危ないもの持っている)という概念もすでにある以上,無過失責任を認めてもそこまで問題にはならないのではないかと考えております。人間がコンピューターを使用するという意味で使用者責任に一番近いと思っています。
 あとは自動運転者用の保険を整備して,それを強制加入にすればいいのではないかと考えています。


刑事的責任 負わない
 本人に過失が認められない以上,負わないでいいと思います。遺族の方の救済は民事で行えばよいと考えています。

行政的責任 負わない
 そもそも自動運転を前提とすると,免許が必要なのかもよくわからないので,書かない方がいいかもしれません。

過失責任主義との平仄でいえば,自動運転の車については特別法(規則も含む)を一本作れば足りると考えています。

投稿: 匿名希望 | 2014年5月 7日 (水) 15時16分

この手のCMを見ていると、「だったら免許なんかいらん」となる。便利は不便を地で行くようなものは、世の中かから排除すべし。
それでなくても自動車保険会社という存在が、加入者の利益を妨害しているのには、誠情けない。

投稿: はるな | 2014年5月 8日 (木) 11時35分

書いておられることは被害者の立場からは全くそのとおりです。
一方で自動車メーカの立場からすると、自動運転機能が「完全でない」ことが立証されて欠陥とされ責任を負うことになるのであれば、そのようなものを販売することはリスクが大きすぎて出来ないと思います。
そして森羅万象に対応することは技術的に不可能時ですから、「完全でない」ことはいつでも立証されてしまいます。
結局、車の運転者が責任を持つ以外の選択肢は無いと私は思います。
それで自動運転が普及するかどうかはともかく。

投稿: めたぼう | 2014年10月16日 (木) 00時34分

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