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2014年6月 2日 (月)

宮澤節生教授の法社会学国際賞受賞について

日本ではまだ報道されていないが、宮澤節生青山学院大学法科大学院教授が、わが国とアジアにおける法社会学の普及と組織化の業績を評価され、法社会学会の国際賞を受賞されることが、29日、決定されたという。日本人では千葉正士東京都立大学名誉教授に続いて二人目という名誉。この場を借りて、お祝いを申し上げたい。

宮澤節生教授は、法科大学院制度創設の功労者として知られる。法科大学院制度創立後、自らも早稲田大学、大宮法科大学院大学と渡り歩き、現在は青山学院大学法科大学院教授の職にある。

もっとも、昨今の法科大学院問題に関して、宮澤教授は沈黙しているように見える。マスコミに対する宮澤教授の発言としては、「日経テレコン21」で調べた範囲では、「弁護士過疎の解消、被疑者国選弁護の拡大、裁判員裁判の導入など、多くの弁護士を必要とする司法制度改革の実施が迫っており、3000人合格の目標は死守すべきだ。現在の法科大学院の定員を維持したままでは、新試験の合格率は2割台に低下する。実質的な予備校化が進行すれば教育の理想から遠ざかり、法曹を志す者の減少が続く。全校が大幅な定員削減に取り組むべきだ」(200918日毎日新聞)、「(法科大学院の)「定員削減はまだ不十分。現状を放置すれば法曹志望者は今後も減り、特に未修者が遠ざかって、多様な法曹を養成できなくなってしまう」(2009923日東京読売新聞)が最後のようだ。

これらの発言に対する私の感想は、「宮澤節生教授の変節と破綻」に書いたとおりであり、特に変更する必要を感じないから、ここでは述べない。

一方、法科大学院問題では沈黙している宮澤教授だが、最近は犯罪学の分野で積極的に発言されているようだ。特に、「厳罰化ポピュリズム」に対し警鐘を鳴らしているとのことである。

2009514日の朝日新聞によると、同年3月に龍谷大学で開催されたシンポジウムにおいて、宮澤教授はこう述べたという。「(日本でも)凶悪犯罪の被害者が声を上げるようになる中で『被害者は仲間。それに対決する弁護士は敵』と考える空気が市民に生まれ、裁判官もポピュリズムにかじを切った」と分析し、「この流れで、何の対策もなく裁判員制度が導入されれば、厳罰化の方向へ進む懸念が強まっている」と危惧を示したという。また、宮澤教授は、市民参加が「絶望的な刑事司法」を変える、と司法制度改革を推進してきた。「裁判員制度をつくる段階では予想できなかった。だが、裁判員が、被害者だけでなく被告(人)も『市民の一人』だととらえられるようになれば、流れは変わるかもしれない」と述べたという。

実務家の感覚からすれば、一般市民に量刑させた場合、厳罰化することは当然予測できたはずだし、当時そのような議論がなかったはずはないと思うが、宮澤教授には予想できなかったらしい。

そうなると、宮澤教授はどのような国家社会を目標として、司法改革を推進されたのか、問い直したくなる。何を予想し、何を予想できなかったのか。予想できなかった原因は何か。日本を代表する法社会学者となった以上、司法制度改革を総括することは、宮澤教授の責務である。法曹養成制度がこうなっちゃったことを、まさか予想できなかったということもあるまいが。

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コメント

法曹大学院制度にして、いったい誰が得をしたのか疑問。予備校に、人気が集まるのも自然な成り行き。頭のいい人て案外、単純であほなのかもしれない。

投稿: はるな | 2014年6月 3日 (火) 10時36分

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