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2014年7月 2日 (水)

「月5万円の法律事務所」を考えてみませんか?

大阪弁護士会の月報6月号に、標記の文章が掲載されたので転載します。末尾に書いてあるとおり、参加したいと思われる若手弁護士のご連絡をお待ちしています。ただ性質上、大阪弁護士会員に限られます。

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弁護士業務改革委員会第7部会では、「月5万円の法律事務所」を企画したいと考えており、興味ある会員の参加を募集します。

「月5万円」とは、なかなか刺激的だと思います。その必要性と可能性をご説明しましょう。

弁護士はこの10年で倍増しましたが、民事事件数は、過払事件の枯渇に伴い、急速に減少しています。収入が減る以上、生き残る術は、経費節減しかありません。経費の大半を占めるのは、家賃と人件費です。これらを徹底的に切り詰めたオフィスを構想する必要があります。

「アドレスフリー」というオフィス形態があります。これは、専用の机がなく、空いている席で執務する形態です。弁護士は、事務所を留守にする時間の長い職業です。留守の間、執務スペースはカラ家賃を払っています。30人の弁護士が、15の机を共有すれば、事務所の家賃は大いに節約できるはずです。また、IT化を推し進めれば、事務員は不要です。会費や電話代を合計して、固定経費を月10万円に収めれば、30万円の売上で、十分生活できます。

5月初旬、グランフロント大阪にあるインキュベーションオフィスを見学しました。最先端のビルだけあって、天井が高くて明るく、開放的な雰囲気です。ITベンチャーを中心に約70人の会員が、50脚以下の机を共有しているとのことでしたが、見学した時にはその半分も埋まっていませんでした。什器はカラフルで機能的なものが多く、IKEAか中古家具店で購入したとのこと。36524時間使用可能で、打ち合わせスペースやセミナールーム、複合機や電子レンジ、私書箱とロッカー、電源やWI-FI等が無料。電話の取次やお茶だしはなく、会員は自分のPCと携帯電話ですべての仕事をこなし、使用料は月額38000円。つまり、月額5万円の法律事務所は、決して不可能ではないのです。単純計算すれば、坪1万円なら、30人で100坪借りておつりが来る、ということになります。

アドレスフリーには他の利点もあります。それは、利用者同士の相談や雑談が、互いのスキルを高め、精神の安定をもたらすことです。見学したインキュベーションオフィスでも、会員同士で打合せを行う様子が普通に見られましたし、意気投合し共同して独立した例もあるとのこと。ブラック事務所や、インターネットカフェのような事務所に一人でいるよりは、精神衛生に良いはずです。

もちろん、問題もあります。たとえば、書面はすべてデータ化してクラウドに置き、原本は自宅に保管し、タブレットとノートPCで出廷することになりますが、それで事務処理が可能か、検証する必要があります。また、本は電子書籍か、「自炊」することになります。顧客のプライバシー確保も問題になります。

法制度上の問題もあります。たとえば、このようなオフィスを事務所住所として登録することは可能でしょうか。見学したインキュベーションオフィスは、法人の住所地として登記することを認めていましたが、法律事務所の場合、規制を受ける可能性があります。このほか、セキュリティの維持や、チャイニーズ・ウォールのあり方なども、検討を要する課題です。

このような問題点を洗い出し、解決の道筋を探ることが、この企画の当面の目的です。業界全体が地殻変動を迎え、良くも悪くも根本的な変革が求められているいま、何が悪しき旧弊かを見極め、変えていきたいのです。

この企画を進めるには、若手弁護士の参加が不可欠です。もし実現しなくても、固定経費を徹底的に切り詰めたオフィスの構想は、必ず役に立つはずです。参加希望のご連絡をお待ちしています。

弁護士業務改革委員会第7部会

副委員長 弁護士 小林正啓(44期)

kobayam@gold.ocn.ne.jp

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コメント

なんか、この話に似てますね。アメリカ化ですね。

http://americanlegalsysteminfo.blogspot.com/2013/02/1.html

http://americanlegalsysteminfo.blogspot.com/2013/02/2.html

投稿: | 2014年7月 3日 (木) 04時24分

経済的余裕のない弁護士にいい仕事など、できるはずがない。
過払い、交通事故、未払い残業代請求など、本人訴訟で十分。
本来の弁護士業務は、法の救いを求める難解な事件が主なのに、事務員もいないような事務所で打ち合わせをして、はたして依頼者の信頼を得られるか疑問だ。
まあ、事務所だけ立派で中身のないよりましと言う意見もあるにはあるが。

投稿: はるな | 2014年7月 3日 (木) 10時27分

最後の署名欄を読むまで、てっきり、いつもの近未来小説かと思ってました。
面白い試みだと思いますが、多数の弁護士が入り乱れる環境だと、守秘義務や利益相反もきちんと取り決めが必要な気がします。

投稿: | 2014年7月14日 (月) 17時19分

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