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2014年7月 7日 (月)

来るべき戦争のありかたを具体的に予測することについて

100年前の6月28日、ボスニアで起きた暗殺事件をきっかけにして、第一次世界「大戦」がはじまった。もっとも「大戦」と呼ばれたのは後の話。当時、ほとんどの人は、この戦争が1000万人を超える死者を出す悲惨な大戦争になるとは思っていなかった。しかし、機関銃の登場が、文字通り死体の山を築き、これに対抗するため掘られた塹壕を攻撃する毒ガスが用いられ、多数の兵士を殺した。戦争の長期化と戦線の拡大は、多くの一般国民を戦場に投入させ(発達した交通機関がそれを可能にした)、莫大な人的損失と、国家財政の破綻をもたらした。

一方、このとき日本軍は、来るべき戦争の形態を的確に予想していた。その10年前の旅順攻略戦で、機関銃で守られたロシア要塞を攻略しあぐね、膨大な人的損害を被っていたからだ。第一次世界大戦中、青島での対独戦を指揮した神尾光臣中将は、「慎重作戦」と揶揄されながら、多数の長距離砲の設置を優先し、砲弾の力でドイツ軍を圧倒した。

もっとも、このような洗練された戦いができたのは、第一次世界大戦が日本にとっては局地戦だったから。総動員戦となった第二次世界大戦には通用しなかった。ただし、その中でも、機動部隊を使った海上航空戦という戦争のありかたを考案したのは日本海軍であり、一時的に英米軍を圧倒したのは著名なエピソードである。

まとめると、100年前の兵器と交通手段の飛躍的発達が、戦争の形態を根本から変えた。それは、第二次世界大戦まで続いたが、その最終局面において、再度、戦争の形態を根本から変える兵器が登場した。核である。

核兵器(とその輸送手段である長距離爆撃機と弾道ミサイル)の発達により、核兵器保有国同士の全面対決は、全人類の滅亡に直結することになった。そのため、皮肉なことに、核兵器が戦争を抑止することになり、第二次世界大戦以後80年間、「大戦」は起きなかった。

もちろん、その間「戦争」は起きている。だが、ベトナム戦争と湾岸戦争は、戦争の形態が全く異なるし、湾岸戦争とイラク戦争も違う。湾岸戦争当時の「パウエル・ドクトリン」を否定したラムズフェルドは、その正しさをイラク戦争で証明したが、フセイン政権打倒後の占領政策では失敗を認めざるを得なかった。

これらのエピソードが示す教訓は、「来るべき戦争のありかたは予測できる。ただし、常に当たるとは限らない」ということだ。

さて、わが国では、集団的自衛権行使容認によって、「戦争」に巻き込まれると懸念する声が強い。その懸念は尊重に値するけれども、もっと大事なのは、「どのような戦争」に巻き込まれるかを具体的に予測することではないか、と思う。

安倍首相は記者会見で、「戦争になることは絶対にない」と断言した。この言い方が使い古されたマヤカシであることは、「戦争」を「原発事故」に置き換えてみれば明らかだ。しかし他方、反対する側も、「どのような戦争」になるかの予測を怠っている点では、政府と同罪である。実体験に基づいて、「赤紙、焼夷弾、民間人を巻き込む悲惨な地上戦」と言う人がいるけれど、それは、過去の戦争(人類史上、たった50年間にしか起きなかった戦争)であって、未来の戦争ではないと、私は思う。他方、洗練された局地戦のみとも思われない。大量破壊兵器や、無差別攻撃兵器が実際に使用される可能性は否定できない。

過日、韓国の軍関係企業のプレゼンをみたが、彼らはとても具体的に、来るべき戦争のありかたを予測していた。戦う相手も戦う場所も、ほぼ決まっているわけだから、具体的に予想できて当然だが、わが国でも、当面具体化しそうな戦争のありかたを予測することは可能だろう。というより、政府には具体的に予測しておいてもらわないと、困るのである。そして、政府の予測が正しいとは限らないし、性質上公開できない部分もあるだろうから、民間シンクタンクによる予測が不可欠だ。

外国では、来るべき戦争の形態を真剣に検討している民間人や民間のシンクタンクがあると聞く。日本ではどうなのだろう。「民間企業が請負う航空戦だけの戦争」や、「公務員どうしのゆるーい内戦」といった、非現実的な予測しかないのだろうか。

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