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2014年8月17日 (日)

ロボット兵器に関する国際会議についての覚書

国連の特定通常兵器使用禁止制限条約会議は、2014513日から16日までの4日間、「自律的致死性兵器」(Lethal Autonomous Weapons System(略称LAWS)に関する専門家会議を、ジュネーヴで開催した。

Geneva Centre for Security PolicyNils Melzer博士によれば、ロボット兵器とは、遠隔操作され、又は事前にプログラムされた機械であって、人間の監督の下に、さまざまなレベルで自律的な動作を行うものをいい、次の3つに大別されるという。

1は、Human-controlled(“human-in-the-loop”)systemsであり、一定の自律的動作を行うものの、人間のリアルタイムな指示に依拠するタイプ。

2は、Human-supevised(“human-on-the-loop”)systemsであり、照準プロセスを自律的に行うが、ロボットの判断に優先する人間の操縦者が常に監督しているタイプ

3は、Autonomous(“human-out-of the-loop)systemsであり、攻撃目標の探索、特定、選択と攻撃を、人間の指示なしに行うタイプ

ロボット兵器に関連する国際法は、二つある。第1は、1949年のジュネーヴ諸条約1977年追加議定書36条だ。

36条の原文は、次のとおり。

Article 36 -- New weapons

In the study, development, acquisition or adoption of a new weapon, means or method of warfare, a High Contracting Party is under an obligation to determine whether its employment would, in some or all circumstances, be prohibited by this Protocol or by any other rule of international law applicable to the High Contracting Party.

外務省による訳文は、次のとおり。

36条 新たな兵器

締約国は、新たな兵器又は戦闘の手段若しくは方法の研究、開発、取得又は採用に当たり、その使用がこの議定書又は当該締約国に適用される他の国際法の諸規則により一定の場合又は全ての場合に禁止されているか否かを決定する義務を負う。

もう一つは、国際人権法(International Human rights Law)と国際人道法(The Martens Clause)であり、こちらは特定の具体的な法典はない。また、会議で頻繁に用いられている”Jus in Bello”というラテン語は、「戦時国際法」(Law of War)という意味である。

会議は、各国代表等による総論的な意見交換(General Exchange)の後、分科会を行った。米国代表団意見は、大要、次のとおり。

「我々は、3つの視点を呈示した後、1つのポイントを指摘したい。第1に、LAWSを明確に定義しなければならない。我々は、未来の武器を議論するのであって、遠隔操作の飛行兵器を議論するためにここにいるのではない。第2に、議論は始まったばかりであり、性急な結論は控えるべきである。第3に、ロボット兵器の規制は、民生技術開発を制限しうることを念頭に置くべきである。重要なポイントとは、リスクである。LAWSの持つリスクを軽減するための法整備は、非常に重要である」

米国は、この会議がプレデターなどの遠隔操作兵器の規制に及ぶことや、民生技術の規制に及ぶことを警戒していることが分かる。また、米国の言う「リスク」の意味は分かりにくいが、上記発言で引用された国防総省通達3000.09によると、リスクとは、「予期しない戦闘を行ったり、システムのコントロールを失わせたりする故障のリスク」を意味するようである。

ちなみに、日本代表団の意見は、大要、「LAWSの定義が重要。日本としては、完全自律兵器に限定するべきだと考える」というものと、「自律システムの平和利用は、人類に幸福をもたらす。福島原発事故で活躍したロボットのように」というものであった。他国の意見までは見ていないが、米国と同調しているように見受けられる。

このほか、会議にはロシアや中国の代表団も出席しているが、開催時のスピーチは行わず、閉会時のスピーチは原稿が公開されていないため、内容は分からない。

分科会は、技術問題、哲学・社会学的問題、法的問題、運用・軍事的問題に分かれ、法的問題は、国際人権法部会と、その他の法の部会に分かれて意見交換が行われた。

国際人権法部会では、まず、上述したGeneva Centre for Security PolicyNils Melzer博士によって、「LAWSの使用は一般的に違法か?と、LAWSは違法に使用されることがあるか?という二つの問題がある」と指摘された。続いて、コロンビア大学のMatthew C. Waxman教授は、「国際人権法は、①武器の禁止、②国際人道法、③武器の使用規制、④武器の法的評価を要求しており、LAWS もその対象になる」とした。ジュネーヴ国際法大学Marco Sassòli教授は、LAWSの開発・運用に伴う国際人権法上のさまざまな問題点を指摘した。特に、攻撃が許される条件としての「敵対行為」の問題点に焦点を当てている。その後、オーストラリア代表団からは民間人の戦闘行為参加の問題、ドイツ代表団からは無差別攻撃への懸念、スウェーデン代表団は、「人間の関与しない殺害行為は独特の問題を提起するだろう」を指摘し、「国際人権法)36」という団体は、最終的には人間に責任を負わせるため、同条項は人間がコントロールする武器の使用を前提としている(=法律の根拠なき限りLAWSの使用は禁止される)との主張を展開した。

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