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2014年11月10日 (月)

NICTのJR大阪駅実証実験に関する調査報告書について(1)

独立行政法人情報通信研究機構(NICT)が公表した『大規模センサー実証実験調査報告書』について、執筆者の一人という立場から、考えを述べる。これは委員会の総意ではなく、個人的見解であることをあらかじめお断りする。

 

20141024日、独立行政法人情報通信研究機構(NICT)は、JR大阪駅ビルの「大阪ステーションシティ」に92台のカメラを設置し、一般利用客を撮影して電子処理を行い、人流統計情報を生成する実証実験について、「実施状況公表などの説明責任を尽くすことを条件に容認」(1025日日本経済新聞)する調査報告書を公表した。

報道によれば、「第三者委は実験については、個人情報保護法違反や肖像権の侵害にあたらず、違法ではないと結論づけた」(1025日毎日新聞)とされている。

しかし、民法違反(プライバシー権侵害)はないと判断した部分と、個人情報保護法(正確には、独立行政法人等個人情報保護法)違反ではないと判断した部分とでは、その論理構成が大きく異なる。前者は、プライバシー権侵害に当たりうることを認めたうえで、実質的な違法性はない、と判断したのに対して、後者は、撮影画像以外の情報について、そもそも個人情報でないから、およそ個人情報保護法違反にはなりえない、と判断しているのだ。言い換えれば、プライバシー権侵害については、構成要件該当性を認めたうえで、違法性を阻却すると判断したのに対し、個人情報保護法違反については、構成要件該当性を否定している。

そこでまず、この違いについて、コメントを付すが、その前提として必要な限りで、撮影画像に対する電子的処理の説明をしておきたい。

本実証実験では、デジタルビデオカメラによって利用客を撮影し、撮影画像を生成する。この撮影画像は、写っている人が誰か判別できるものである限り、個人情報に該当することは争いがない。しかし、本実証実験において、撮影画像は、「特徴量情報」が生成された後、直ちに自動消去されることとなっており、その存続期間は10秒以内と想定されている。

「特徴量情報」とは、文字通り、その人の身体的特徴を数量化したものである。ごく簡単にいうと、その人の顔画像と、あらかじめ用意した「平均顔」との差分を数値化し、これを100箇所以上について行ったものである。

この数値は、理論上はその人固有のものだが、特徴量情報からもと画像を再現することはできないし、人が特徴両情報を見ても、誰の顔かを判別することはできない。つまり、ある人の特徴量情報は、他人の特徴量情報と識別することはできるが、もとの画像が消去された後は、誰の特徴量情報かを知ることはできない。そのため、本報告書は、いわゆる「非特定識別情報」に該当するものとして、特徴量情報の個人情報該当性を否定している。

 

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