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2014年11月17日 (月)

NICTのJR大阪駅実証実験に関する調査報告書について(2)

独立行政法人情報通信研究機構(NICT)が公表した『大規模センサー実証実験調査報告書』について、執筆者の一人という立場から、考えを述べる。これは委員会の総意ではなく、個人的見解であることをあらかじめお断りする。

本実証実験に関し、上記報告書は、撮影画像以外の情報について、そもそも個人情報でないから、およそ個人情報保護法違反にはなりえない、と判断した。なぜなら、撮影画像をもとに生成される「特徴量情報」は、被撮影者固有の情報だから識別性はあるものの、顔画像が消去されて、顔画像との結びつきがきれてしまえば(実際、撮影後10秒以内に消去されることが予定されている)、その特徴量情報を見ても、誰かが特定できるわけではない、すなわち「識別非特定情報」に該当する(報告書40頁)からだとされている。これは、「個人情報」の定義に関係している。

すなわち、個人情報保護法は、「『個人情報』とは、生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)をいう」と定義している。

この「特定の個人を識別することができる」文言の解釈について、内閣府IT総合戦略本部パーソナルデータに関する検討会の技術検討ワーキンググループ報告書は、「特定」と「識別」を区別してそれぞれに定義を加えたうえ、次の3つの組み合わせについて、次のとおり説明した。

識別特定情報   個人が(識別されかつ)特定される状態の情報(それが誰か一人の情報であることがわかり、さらに、その一人が誰であるかがわかる情報)

識別非特定情報  一人ひとりは識別されるが、個人が特定されない状態の情報(それが誰か一人の情報であることがわかるが、その一人が誰であるかまではわからない情報)

非識別非特定情報 一人ひとりが識別されない(かつ個人が特定されない)状態の情報(それが誰の情報であるかがわからず、さらに、それが誰か一人の情報であることが分からない情報)

この分類によれば、本件「特徴量情報」は、一人ひとりは識別されるが、個人が特定されない状態の情報に当てはまることになる。また、技術検討WGは、上記の「識別非特定情報」は、「個人情報」に該当しない、と理解している(佐藤一郎国立情報学研究所教授のプレゼンより)。

本報告書は、上記の技術検討WGの理解に従い、「特徴量情報」を「個人情報」に該当しないと判断した。

この理解によれば、「特徴量情報」はもとより、「特徴量情報」に電子的処理を加えて生成される情報は、およそ「個人情報」に該当しないことになる。たとえば、本実証実験では、別のカメラに撮影された、同じ特徴量情報の持主を同一人と判断し、カメラからカメラへの移動経路や時間を記録する「移動経路情報」を作成することを予定しているが、この「移動経路情報」は、誰か一人の移動経路の記録でこそあれ、誰の移動経路かは分からないから、「個人情報」には該当しない、という論理的帰結となる。

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コメント

顔は指紋と同じぐらい有力な、個人の情報だと考える。
被撮影者が拒否できないシステムであれば、例え電子処理され特定微量情報にあたいしても対等な立場での議論にはならないでしょう。
なぜ悪用される可能性があることを示唆しないのでしょうか。どんなに完璧に見える制度であってもミスは起こるというもの。法律の抜け穴もあるでしょう。
顔の見えない第三者に、勝手に撮影されることに強い恐怖と、不快感を感じます。

投稿: クローバー | 2014年11月18日 (火) 09時18分

顔は指紋と同じぐらい有力な、個人の情報だと考える。
被撮影者が拒否できないシステムであれば、例え電子処理され特定微量情報にあたいしても対等な立場での議論にはならないでしょう。
なぜ悪用される可能性があることを示唆しないのでしょうか。どんなに完璧に見える制度であってもミスは起こるというもの。法律の抜け穴もあるでしょう。
顔の見えない第三者に、勝手に撮影されることに強い恐怖と、不快感を感じます。

投稿: クローバー | 2014年11月18日 (火) 09時20分

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