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2014年12月25日 (木)

NICTのJR大阪駅実証実験に関する調査報告書について(6)

独立行政法人情報通信研究機構(NICT)が公表した『大規模センサー実証実験調査報告書』について、執筆者の一人という立場から、考えを述べる。これは委員会の総意ではなく、個人的見解であることをあらかじめお断りする。

 

個人情報保護法は、個人情報を「生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)をいう」と定義する。

この定義が本来予定していた「個人情報」とは、私の考えで一例を挙げれば、このようなものだ。

 

「マリナーズのイチロー選手は、2004101日、本拠地セーフコ・フィールドで迎えたテキサス・レンジャーズ戦で、84年間破られることのなかったジョージ・シスラーのメジャー歴代シーズン最多安打記録の257安打を更新した。」

 

内閣府IT総合戦略本部パーソナルデータに関する検討会の技術検討WGの佐藤一郎主査は、「識別」(誰か一人の情報であること)と「特定」(誰であるかがわかること)という基準で情報を分類し、「氏名、住所、顔画像」は個人情報だが、パスポート番号、クレジットカード番号や指紋は個人情報ではない、とした。

だが、この定義に従えば、「スズキイチロー」は明らかに個人情報ではない(同じ読みの氏名は多数いるから識別性がない)し、「イチロー」も個人情報ではない。だが、「マリナーズのイチロー」となれば、俄然、個人情報となる。そして、上記の例で特に注目していただきたいのは、「マリナーズのイチロー」という部分を削除しても、この記載は、個人情報性を全く失わない、という点だ。

この例が示すように、氏名や住所、生年月日等のバラバラの情報は、もともと、個人情報保護法の立法者が想定する「個人情報」ではなかった、という点は、留意しておく必要があるように思う。立法者の感覚では、このようなバラバラの情報が、それだけで、誰かの情報だと特定されることはなかったのだ。個人情報保護法の文言上も、氏名や住所等のバラバラの情報は、誰か特定の人の情報と識別するための情報と位置付けられている。

もとより、氏名や住所などの識別情報は、バラバラだからと言って、直ちに個人情報性を失うわけではない。歴史的な視点から見ると、かつては、バラバラの識別情報だけで、それが特定個人の情報であるとされることはなかったが、デジタル・データベース社会の到来と発展によって、バラバラの識別情報だけでも、特定個人の情報とわかることが可能となった、ということなのだ。

一言で総括すると、情報技術の進歩に法律が追いついていない典型例ということになるのだろう。この状況が、個人情報保護法の解釈に混乱を及ぼしているともいえる。

 

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コメント

人は誰しも、自分や家族、友人だけが知っていて、人に知られたくない事柄がある。それが顔の画像という個人情報なのです。本人の承諾もないまま不特定多数の人々に公表されると、苦痛を感じ生活上大きな支障をもたらすことがあるのです。
まして真実とは違う情報が添付され、弁護してまわることができない多数の人々に伝えられてしまったという事実は耐え難いものです。社会生活に参加する個人は、職業、近隣との交流や活動、生活などの過程で様々な評価を受けています。その積み上げは、人格統合の一部をなし、その人の自信や自己評価にも反映しています。
つまり顔の画像を無断で盗み撮り利用することは、人が生きてゆく精神的エネルギーを奪っているのです。

投稿: クローバー | 2015年1月11日 (日) 09時19分

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