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2015年2月16日 (月)

NICTのJR大阪駅実証実験に関する調査報告書について(8)

独立行政法人情報通信研究機構(NICT)が公表した『大規模センサー実証実験調査報告書』について、執筆者の一人という立場から、考えを述べる。これは委員会の総意ではなく、個人的見解であることをあらかじめお断りする。

 

個人情報保護法は、個人情報を「生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)をいう」と定める。

この中で、いま問題にするのは「…記述等により特定の個人を識別することができるもの」という部分だ。

技術検討WGは、この部分に関して、「識別」(誰か一人の情報であること)と「特定」(誰であるかがわかること)という基準を立て、この二つの基準が導く組み合わせのうち、「識別特定情報」のみを個人情報とするのが従来の議論であるとしつつ、「識別非特定情報」をも法的保護の対象とするべきだという主張を展開した。

しかし、この主張は立法論として傾聴に値するとしても、現行個人情報保護法の解釈論としては成立しえないことは、すでに述べたとおりである。

したがって、本件実証実験において生成される「特徴量情報」が現行個人情報保護法上の「個人情報」に該当するか否かは、技術検討WGの定立した基準とは別の、解釈論を用いて検討すべきことになる。

ところで(顔の)「特徴量情報」とは、撮影された実在の人物の顔画像と、「平均顔」とを比較して、その差分を数値化したものだ。差分とは、たとえるなら、「目と目の間の距離は平均顔より1ポイント短い」「右眉の起点は平均顔より3ポイント下」といったもので、現在の技術水準では顔画像一つにつき100箇所程度で差分を取るらしい。100箇所とは多いと思う人がいるかもしれないが、NICTの説明では、特徴量情報から元画像を再現することはできない。無理矢理再現しても、非常にぼんやりした画像しか生成できないから、人間が見ても、誰の顔かを判別することはできない。しかし、特徴量情報を与えられたコンピューターは、同じ人が再び現れれば、その人を見分けることができるし、他の人と混同することも(理論上は)ない。

法律的なポイントは、「元画像は再現できないが、同一人が再び現れれば、コンピューターには見分けがつき、人間にはできない」点だ。これをもって「特定の個人を識別することができる」といえるかどうかが問題となる。

価値判断としては、「同一人が再び現れれば、見分けがつく」という点において、「特徴量情報」は「顔画像」と差異がない。したがって、顔画像が個人情報であるなら、特徴量情報も個人情報というべきであろう。「コンピューターには見分けがつくが、人間にはできない」からといって、個人情報該当性を否定するのは、デジタルネットワーク時代の現状を無視した見解というべきであろう。

 

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コメント

最近思う。どのブログもほとんどイスラム国事件にふれないのはなぜなんだ

投稿: はるな | 2015年2月21日 (土) 11時17分

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