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2015年2月 2日 (月)

大阪弁護士会の選挙公報を読んでみた

大阪弁護士会の選挙公報が126日に出たので読んでみた。大阪弁護士会は、会長1名、副会長7名、以下常議員などを選挙で決めるが、今年度も全部無選挙だった。選挙公報に文章を掲載しているのは唯一の会長候補者である松葉知幸弁護士と副会長候補者7人だが、無風選挙を前提としているため、その中身は、事実上の所信表明となっている。

内容については、流石と思わせるもの、間違ってるのちゃうん、と思わせるものなどあったが、3点ほど指摘しておきたい。

第一に、法曹養成問題については、多くの候補者が言及している。その中で腹立たしく思ったのは、「現在、ロースクールの整理統合を進め、その質を高めるロースクール側の改革が進んでおり、ロースクールに入れば78割が法曹となれるという(司法制度改革審議会)意見書の描いた法曹養成制度が実現しつつあります」と述べるH弁護士の文章だ。

この文章はおそらく、平成19年には5713人だった法科大学院入学者が平成26年には2272人となり27年にはおそらく2000人を割れることを言っている。司法試験合格者数年1500人としても、2000人なら75分の合格率、と言いたいのだろう。

しかしこの計算は、「滞留受験者」を無視する点で間違っている。かつて法科大学院を卒業し、司法試験受験資格を取得したが、まだ合格していない受験資格者は、1万人を超える。もとよりその全員が受験し続けるわけではないが、受験資格喪失時期が「三振」から「五振」に延長されたこともあり、なかなか減らない。これら受験資格者が全部「ハケる」までは、司法試験合格率は上がらない。単純計算としては、早くて5年後だ。現在のこのどうしようもない状態がさらに5年続いた後ようやく好転することをもって「(司法制度改革審議会)意見書の描いた法曹養成制度が実現しつつあります」と言うなら間違いではないが、私はそれほど楽観的ではない。このH弁護士の主張は、他にも色々間違いがあるが、本稿では触れないでおく。

第二に、これもどうかと思ったのは、「(弁護士は)司法の一翼であり基本的人権の擁護と社会正義の実現を図るという役割と、民間のサービスプロバイダーとしての役割をどのようにバランスをとっていくかという点が、弁護士という職務の難しいところだ」とするN弁護士の文章。

この文章は二重の意味で間違っている。第一に、弁護士の職務を「人権擁護」と「サービス業」の二項対立で把握している点。第二に、この対立構造の「バランス」が大事だとしている点だ。なぜなら、このような二項対立を前提にするなら、バランスを取るというお話にはなりえない。弁護士法1条がある以上、「人権擁護」が優先するに決まっているからだ。いわゆる左翼系人権派弁護士は、二項対立構造を取りつつ人権擁護を優先させるから、間違っているけれど、それなりに一貫している。二項対立としつつ、そのバランスを取ることが大事だ、などという議論は、法解釈上ありえない。

『こん日』の最終章にも書いたが、「人権擁護」と「サービス業」は対立する概念ではない。弁護士法1条にいう人権は弱者の人権に限らない。強者の人権も含むし、相対立するあらゆる権利を含む。その権利者に代わって、それぞれの権利の正当性を戦わせるのが、弁護士の職務であり、この点において「人権擁護」と「サービス業」は対立するのではなく、同義の言葉として両立するのである。

この点、松葉次期会長は、「(弁護士は)その仕事によって収入を得るというだけでなく、法律の専門家として民主主義を支えるべき使命を負っている」と明言されており、さすがと感心した。現代日本で、弁護士の職務が民主主義に直結するという言説を公式に表明している弁護士は、私以外で初めて見た。

第三には、弁護士会の財政問題である。弁護士会の会員数は増え続けているから、財政問題は生じないはずなのだが、個々の会員の収入減少が、年60万円を超える会費の負担感を増しているため、松葉弁護士ほか複数の副会長候補者が、財政問題を喫緊の課題と認識している。なかでもT弁護士は、「会員間の経済格差が拡大すると共に、弁護士会に対する帰属意識についても、二極化が生じ、会務活動を全く行わない会員が増えています。『弁護士会は高い会費を取るだけで役に立っていない』、『弁護士会など不要ではないか』という声さえ聞こえてくる」と、問題点を端的に指摘した。

ここまでに異論はないが、問題は具体策だ。T弁護士は、年1億円程度の黒字決算であればその分会費を減額できると述べるが、会員数で割れば一人年25000円にしかならず、焼け石に水である。また、「委員会統廃合、(委員会への)事務局関与の見直し」、情報システム関連費用の抑制、法律相談センターを含めた事務の効率化」が必要とされるが、本当に必要なのは事務職員のリストラである。分かった上で書けない事情があると拝察するが、次年度理事者は、そろそろ、事務職員のリストラ問題に取り組んでいただきたいと思う。

 

 

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コメント

大阪弁護士会と聞くと、横領弁護士を多数だしているイメージしかない

投稿: はるな | 2015年2月14日 (土) 13時14分

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