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2015年4月22日 (水)

危険?なドローンに対する法規制のあり方について

本日の報道によると、首相官邸の屋上にドローンが落ちているのが発見されたという。いつ落ちたのかは分からない。ついに日本でも、という事件だが、法律的には、どうみるべきなのだろうか。また、この事件をきっかけにドローンの法規制が検討されるとすれば、どのような規制が想定されるのだろうか。

ところで、首相官邸に落ちたドローンから微量の放射性物質が検出されたとか、発煙筒を積んでいた、とかいう報道もあるようだが、現時点ではいささか眉唾である。以下の考察では、カメラを積んでいる無線操縦のドローンだが、爆発物や毒物の類(そのように疑われるものも含む)は搭載していないものとして検討する。

まず、誰かがドローンを操縦して、故意に首相官邸上空を飛行させ、その屋上に着陸させたとする場合、何かの犯罪が成立するだろうか。

本件で警察は威力業務妨害罪の疑いで捜査しているとの報道もあるようだが、爆発物や毒物の類は搭載していないことを前提にする限り、捜査はさておき、威力業務妨害罪で「犯人」を逮捕し起訴するのは、いささか無理筋だと思う。誰の業務をどのように妨害するのか、まるで不明だし、いつ飛来していつ落ちたのか分からないというのであれば、業務は現実に妨害されていないし、その具体的危険が発生したともいえないからだ。また、威力業務妨害罪には未遂処罰規定がないから、もし「犯人」が官邸を驚かそうと思ってドローンを飛ばしたのだとしても、いつ飛来していつ落ちたのか分からないレベルでは、処罰に値しないだろう。もちろん、爆弾の類を積んでいたというのであれば、話は別である。

本件が刑法上何かの犯罪に該当するとして、感覚的にピンと来るのは建造物侵入罪(刑法130条)だが、残念ながらこれも成立しない。建造物には「人の体」の侵入することが必要と考えられるからだ。

もちろん、ドローンをどこに飛ばしても犯罪にならない、ということはない。たとえば、航空法99条の2は高さ規制を定めているから、これに違反すると50万円以下の罰金(航空法15010号)となる。この犯罪が成立するためには、高さ制限を破れば足り、航空機の飛行を妨害する意思が一切無くてもかまわない。これに対して、航空機の飛行を妨害する意思でドローンを飛ばせば、航空機の強取等の処罰に関する法律(通称「ハイジャック防止法」)違反となって、1年以上10年未満の懲役が科せられる場合がある。

このほか、鉄道の近くでドローンを飛ばし、誤って線路に落としたりすれば、過失往来危険罪(刑法1291項)が成立しうる。道路の上を飛ばしても、道路交通法違反として処罰されうる。このように、ドローンを飛ばした者に刑事罰が科せられる場合はいくつかある。だが、現行法上は、首相官邸の上だからといって、ドローンを飛ばしただけでは犯罪は成立しない、といわざるを得ない。したがって、今後同様の事件が起きると想定するなら、立法による規制を検討することになる。

では、ドローンに対する法規制は、どのようなものが考えられるだろうか。

まず考えられるのは、政府機関もしくは国有・公有建造物、公共建築物の上空に「ドローン飛行禁止区域」を設定することだろう。立法技術的には、規制範囲を広げることも、狭めることも可能だが、刑罰とのバランスや、報道を含めたドローンの有効利用の可能性を考えると、飛行禁止区域は、本当に必要な範囲に限定した方がよいと思う。

ドローンの製造販売や運用そのものを許可制にするという方向性もありうるが、有効利用の観点からは賛成できない。

このほか、現実の運用にあたって重要だと思われるのは、飛行禁止区域に侵入した、あるいは侵入しようとしているドローンを発見した場合、これを物理的に阻止したり、捕獲したり、あるいは排除したりする法的根拠を定めることではないかと思う。平たくいえば、正体不明のドローンを撃ち落とせる法的根拠が必要、ということだ。なにしろ相手はドローンなので、「止まれ!止まらんと撃つぞ!」と脅したところで聞く筈もないのだから、ある条件のもとでは無警告で捕獲したり、撃ち落としたりできるようにしておかないといけないだろう。

もちろん、そのドローンが爆発物や毒物を搭載していたり、その合理的な疑いがあったりする場合には、根拠法がなくても、正当防衛や正当業務行為として捕獲したり撃墜したりすることは許される。だが、一見そこまでの危険性が認められない場合でも、要警護性の高い施設であれば、進入しようとするドローンを捕獲したり、場合により撃墜したりすることが認められてよいだろう。

これに似た制度として、現行法上も、令状なくして犯人の遺留品等を押収する手続として「領置」(刑事訴訟法101条、221条)が規定されている。しかし、仮にドローンの飛行禁止区域を定め、違反者を罰する法律が成立したとしても、「いままさに首相官邸上空に侵入しようとしているドローン」が「犯人の遺留品」だというのは、文言上、いささか無理があると思う。

以上の検討からすれば、ドローンを規制する法律は、①飛行禁止区域を設けるものであるとともに、②その区域に侵入したり、侵入しようとしているドローンを捕獲したり、物理的に排除したりする権限を、警察官その他一定の者に与えるものになるだろう、ということになる。

 

 

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コメント

旬な話題なので大変参考になりましたφ(・ω・ )メモメモ。2007年ヤマハ無人機ヘリ不正輸出事件のころに、現場、技術者レベルではこのような危機感はあったのではないでしょうか?

投稿: 山茶花 | 2015年4月23日 (木) 07時30分

山茶花様、コメントありがとうございます。現場や技術者レベルの危機感の有無については承知していませんが、この事件に先立ち、農薬散布用ヘリの軍事転用が危惧され国際会議で禁止されたことがあり、それが日本の法規制改正につながった、と側聞しています。

投稿: 小林正啓 | 2015年4月23日 (木) 09時43分

この件で威力業務妨害罪が無理筋だという結論はご指摘のとおりと思います。

もっとも、業務妨害罪は抽象的危険犯と解されているようですので、業務が現実に妨害されていないことや、その具体的危険が発生していないことは理由とはならないのではないでしょうか。

投稿: しんたく | 2015年4月23日 (木) 09時56分

法律家さんは、本当に大変ですね(笑
裁判官の任命権や、ww2のわが国の国体を見ても明らかなように
三権分立や司法の独立は、果たして本当ですか!?
たまにはきちんと応えてくださいよ、花水木さん(苦笑

投稿: やっこさん | 2015年4月23日 (木) 13時39分

ま、法律家からすればそういう展開にするんだろうけどね
市井の庶民感覚では、何も官邸に限らず
上からピンポイントで狙えば
どこも粗末な防空体制だなぁ、と感じますよ。

テレビでもしかり、お隣の神社にお参りついでに
ものものしい警備を横目にいつも、そう思う人は多いでしょ。

果たして、世の評価はともかくも、法律家は森羅万象に
どこまで追いつき、迫れるか!?

投稿: やっこさん | 2015年4月27日 (月) 17時34分

しんたくさん「具体的危険が発生していないことは理由にならない」というご指摘はそのとおりで、不正確でした。ただ『抽象的な危険すら発生していない」という書きぶりでは法律家には分かっても、一般市民には理解できないので、こういう書き方をしてしまった、というところはあります。小型ドローンが一機飛んできたくらいで、しかも、わが国でトップレベルの警戒厳重区域で誰にも気付かれず、数日間発見されなかったような行為が、なぜ業務妨害になりうるのか、とでも書けばよいのでしょうが。

投稿: 小林正啓 | 2015年5月14日 (木) 15時57分

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