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2015年10月 5日 (月)

「空(そら)」とは何か? ―ドローンの飛行規制について―

ドローンを「無人航空機」として規制する改正航空法が公布され、本年1211日までに施行される。これをうけ、国土交通省令である改正航空法施行規則案の内容が公開され、1016日までのパブリックコメントに付されている。本エントリでは、その中の「飛行高度」について触れたい。

まず「上限高度」については、改正航空法1321項に基づき、省令により、地表又は水面から150メートル未満と定められる見通しとなった。これは、航空法81条と航空法施行規則174条の定める有人航空機の最低安全高度が地表又は水面から150メートル以上と定められているためである。ドローンによる事故のうち、最も重大なのは航空機と衝突することと思われるから、この基準は支持できる。

これに対して問題は、ドローンの「最低高度」だ。パブコメ中の改正航空法施行規則案は、「無人航空機と地上又は水上の人又は物件との間に保つべき距離を、30mと定める」こととしており、これによらない飛行の場合には、国土交通省所定の書式による、15日以上前の承認申請が必要となる。

だがこれは低すぎるだろう。これでは、ドローンによる工場や建物、橋梁などの外壁検査は全部、承認なしではできなくなってしまう。条文には「地上又は水上の人又は物件」とあり、この「物件」に土地そのものは含まれないとしても、建物や立木が含まれる以上、地上30メートル未満を飛ばすことは、よほどの辺地でなければ不可能だ。これでは、産業としてのドローンの発展に、大きな足かせとなると懸念される。

そこで、この点に関し、航空法の適用範囲である「空(そら)」とは何かという問題を提起してみたい。

航空法1条は、「航空機の航行の安全」を図ること等を目的にしている。「航空機」の定義は2条が定めているが、読んで字のごとく「空を航(わた)る機械」のことだ。ここで「航(わたる)」という漢字は、もともと船が進むことをいい、転じて空を進むことも意味するようになったが、面白いことには、「航海」「航空」という熟語はあるのに、船が河川や湖沼を進むことを「航川」「航河」「航湖」「航池」「航沼」とは言わない。つまり、「航」という漢字は、もともと、「果てがない場所を進む」という意味を持つ。

同じことは空にもいえる。智恵子は「東京には空がない」と言ったそうだが、ビルの谷間から見上げる空は、果てがないようには見えない。屋内も空ではない。従って東京ドームの中でドローンを飛ばすことについて、航空法上の許可は不要だ(もちろん、ドーム管理者の許可はいる)。

エアカーはどうだろう。スターウォーズエピソードの前半に出てくるような、地上数十センチを進むエアカーは、「航空機」ではないから、道路交通法等が適用されるというべきだろう。これに対して、エピソードⅠに出てくる、地上数百メートルを進むエアカーは、車体こそオープンカーに似せてあっても、航空法上の「航空機」にあたるというべきだろう。もちろん、現行道路交通法や航空法はエアカーを予定していないから、どちらも立法論としては、という前提での話だが。

以上の思考実験から明らかになることは、屋内はもちろん、地上に近い空間は「空(そら)」ではない、という素朴な感覚である。では地上何メートル以上が空なのか、と聞かれると難しいが、少なくとも、どんな地方都市でも五階建て十階建てのビルが当たり前に建つわが国では、地上30mまでは「空(そら)」ではない、という余地は十分にあると思われる。そうだとすれば、地上30m未満を飛行するドローンには、航空法の適用がないので、省令の規定にかかわらず、国土交通省の許可承認は不要という解釈は成り立ちうるのではないだろうか。また、ワイヤーなどで係留し、一定の距離以上に飛び去らず、落下しないようにしたドローンは、「航空機」に当たらないので、航空法上の許可は不要、という解釈も成り立ちうるのではないだろうか。

なお、以上はあくまで筆者の個人的見解であり、国土交通省や裁判所の解釈ではないから、本エントリの解釈に従ってドローンを飛ばした場合でも、一切責任は負いません。

 

 

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