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2015年11月24日 (火)

「空」とは何か?(再)―改正航空法施行規則の解釈について―

ドローンを『無人航空機』として規制する改正航空法が1210日に施行されるのに伴い、航空法施行規則(国土交通省令)が改正され、国土交通省がその「解釈」や「Q&A」を公表した。

本エントリでは、その中で「空」の問題に再度触れておきたい。

というのは、Q&A上、「ゴルフ練習場のようにネットで囲われたようなところで飛行させる場合も許可 が必要ですか」という問いに対して、「無人航空機が飛行範囲を逸脱することがないように、四方や上部がネット等で囲われている場合は、屋内とみなすことができますので、航空法の規制の対象外となり許可は不要です」という回答が掲載されていたからだ。

この回答は、形式論理上は、「屋内は空ではないから、航空法の適用がない」という理解を前提にしている。だが、屋内とは、建物の内部をいう。わが国で建物といえるためには、「屋根壁を備え、風雨をしのげること」が要件とされている。ネットで囲われた空間は、風雨をしのげないので、建物とはいえないから、その内部も屋内ではない。それにもかかわらず、ネットに覆われた空間を国土交通省が屋内と見なすのは、実質的に見て、無人航空機が外部に飛び出すことがない以上、周囲の安全に影響がないからであろう(ちなみに、国土交通省は「四方や上部がネット等で囲われている」と記載しているが、「や」ではなく「と」の誤りと思われる)。この見解によれば、仮に、1キロ四方をネットで囲んだドローン練習場を造れば、その内部では、許可なくドローンを飛行させることができることになる。

ところで、同じQ&Aには、「地上とワイヤー等でつながれているような無人機も「無人航空機」に含まれますか」という問いに対して、「地上とワイヤー等でつながれているような無人機も無人航空機」に含まれます」との回答が掲載されている。これは「無人航空機」の定義に関する問答という体裁をとっているが、「地上とワイヤー等でつながれているような無人機」にも航空法の適用があるという趣旨であろう。しかし、地上とワイヤーでつながれていれば、その長さ以上には飛び出せないから、ワイヤーの長さが適切なものである限り、周囲の安全に影響はない。つまり、「ネットで囲われた空間でドローンを飛行させること」と、「地上とワイヤーでつないだドローンを飛行させること」は、周囲の安全という観点から差異がないにもかかわらず、国土交通省は、その取り扱いを異にしていることになる。いいかえるなら、国土交通省は、周囲の安全という実質的な観点よりも、「囲われた空間は屋内、囲われていない空間は空」という形式論理を優先させたことになる。

ところが、別のQ&Aでは、「航空法に従って飛行すれば、第三者が所有する土地の上空を飛行してもよいのでしょうか」という問いに対し、「航空法の許可等は地上の人・物件等の安全を確保するため技術的な見地から行われるものであり、ルール通り飛行する場合や許可等を受けた場合であっても、第三者の土地 の上空を飛行させることは所有権の侵害に当たる可能性があります」との回答が記載されている。しかし、この回答が正しいとすれば、同じ空を飛行している一般の有人航空機も、所有権侵害の疑いを免れないことになろう。国土交通省は、「許可を受けて空を飛行している以上所有権者は文句が言えない」という航空法の形式論理より、土地所有権者の立場を優先しているように思える。

民法207条は「土地の所有権は、法令の制限内において、その土地の上下に及ぶ」と定めている。土地の所有権は理論上、地球の中心から宇宙の果てまで及ぶ。航空法は、これに対する「法令の制限」を定めたものと理解されている(他の制限としては、「大深度地下の公共的使用に関する特別措置法」や「鉱業法」などがある)。すなわち航空法の適用される「空」の航行には地上の所有権は及ばないので、土地所有者は上空の飛行を違法と主張できない。「囲われていない空間は空」という国土交通省の見解に従えば、ドローンが許可・承認に従い適法に飛行する空間においては、土地所有権を主張できないと回答しなければ、一貫しない。

以上からうかがい知れることは、国土交通省の「空」の定義が曖昧だ、ということである。果てのない(=物理的に区切られていない)空間が空だというなら、土地所有権の主張を否定するべきだし、地上の安全を重視するというのなら、ワイヤーでつながれたドローンには航空法の適用がないと言うべきである。

確かに、空は海とは違い、どこからが空、というはっきりした境界がない。しかし今後、ドローンのように低高度を飛行する機械が登場した以上、どこからが航空法の適用される「空」で、どこからが「空」ではないか、法律上明記する必要があるように思われる。

 

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