« 2016年3月 | トップページ | 2016年5月 »

2016年4月20日 (水)

ドローン飛行禁止法について

311日に成立していたドローン飛行禁止法「国会議事堂、内閣総理大臣官邸その他の国の重要な施設等、外国公館等及び原子力事業所の周辺地域の上空における小型無人機等の飛行の禁止に関する法律」が、47日に施行された。

指定された飛行禁止区域は、国の重要な施設(国会議事堂等)、外国公館等及び政令で定める原子力事業所と、その周辺地域されている。東京中心飛行禁止区域を見ると、皇居から神宮外苑までの範囲が、周辺区域に含まれている。裁判所と日弁連会館は飛行禁止区域だが、隣の日比谷公園や厚労省は区域外だ。ま、どうでもいいけど。

ドローンについては、改正航空法によって、重量200グラム以上のドローンが事前許可・承認の対象となっているが、ドローン飛行禁止法は、重量200グラム未満のドローンも対象にしている。

違反に対しては、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科せられる。ただし、これは故意犯なので、過失によって飛行禁止空域に迷い込んだ場合は処罰されない。

この法律の特徴は、警察官、皇宮護衛官及び海上保安官に撃墜の権限を与えたことである。具体的には、①警察官等が違反者に対して退去等を命じ、②その命令に従わない場合や命じることができないとき、命じるいとまがないときに、③対象施設に対する危険を未然に防止するためやむを得ないと認められる限度において、当該小型無人機等の飛行の妨害、当該小型無人機等の飛行に係る機器の破損その他の必要な措置をとることができる、とされている。

このような有形力の行使は、たとえば警察官については、警察官職務執行法に一般的な定めがある。同法は、「察官は、犯罪がまさに行われようとするのを認めたときは、その予防のため関係者に必要な警告を発し、又、もしその行為により人の生命若しくは身体に危険が及び、又は財産に重大な損害を受ける虞があって、急を要する場合においては、その行為を制止することができる」と定めているし、一定の場合には武器の使用を認めている(7条)。だから、ドローン飛行禁止法の成立を待たなくても、犯罪の防止や犯人逮捕等のために警察官がドローンに対して実力を行使することは許されていた。したがって、ドローン飛行禁止法で撃墜措置が認められた意義は、過失によって飛行禁止区域に迷い込んだドローンであっても、対象にすることができる点にある。実際、ドローン飛行禁止法は、同法に違反して飛行禁止空域を飛行させた者に対しては、ドローンを破壊しても補償義務を負わないと定める一方、そうでない者に対しては、補償義務を定めている。実際のところ、飛行禁止空域上空にドローンが現れたとき、それが故意犯によるものか過失によるものかを判別することは困難な場合が多いから、予防的に撃墜することも、許されてしかるべきであろう。

ただ、本法が撃墜の権限を警察官、皇宮護衛官及び海上保安官に限定したことについては、将来問題が発生するかもしれない。今後おきる事件の内容いかんによっては、自衛官や民間人にも、撃墜権限が広げられる可能性はあろう。

ドローンによる違法行為の特性は、「匿名性」にある。被害者側からみると、ドローンの操縦者が見えないし、誰か分からないし、その意図が読めない。この「匿名性」は、実はインターネットの世界では、既に指摘されてきた問題点であるが、その問題点がリアルな世界にも現れたのがドローンの問題点の本質にある、ともいえる。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年4月11日 (月)

自動運転自動車に関する警察庁の調査研究報告書について

4月7日、警察庁はホームページで、『自動走行の制度的課題等に関する調査研究報告書』とその概要を公表した。同報告書には「自動走行システムに関する公道実証実験のためのガイドライン案」が掲載されていることから、9日の日本経済新聞は、公道実験がやりやすくなったと、歓迎する社説を掲載している。厳密にいうと、この報告書は株式会社日本能率協会総合研究所が作成したものであって警察庁が作成したものではないうえ、「案」に過ぎないから、法的には警察庁は何も言っていないのだが、同庁のホームページに掲載した以上は、警察庁が一定条件下での公道実験に「目をつむる」ことを事実上表明したものと見てよいのだろう(だいたい、このようなファジーなやりかたは『法の支配』の見地からいかがなものか、という議論はあるが、ここでは措く)。

すくなくとも、トヨタ首都高行った自動運転実証実験が業界のリーダーとしてあるまじき行為警察庁の激怒を買ったことにくらべれば、「ガイドライン案」の公表は進歩があった、と評価すべきなのだろう。しかし、藤原靜雄中央大学法科大学院教授と稲垣敏之法制大学法科大学院教授という二人の法学者を招聘したにもかかわらず、法律的論点に関しては、いささか物足りないといわざるを得ない。

そもそも、全192ページの報告書のうち、「刑事上の責任」「行政法上の責任」「民事上の責任」については、それぞれ、1ページ前後しか費やされていない。そのうえ、たとえば「刑事上の責任」(報告書77ページ)については、「レベル3では、運転者の過失責任が認められるかどうかは、…システムと運転者との間における車両の操作権限の委譲に関する具体的な技術開発の方向性を確認しながら、交通事故等における道路交通法上の責任の在り方を検討する必要がある。レベル4については、道路交通に関する条約に係る国際的な議論を踏まえつつ、具体的な技術開発の方向性を確認しながら、交通事故等における道路交通法上の責任の在り方を検討する必要がある」と、当たり障りのないことを述べるだけで、法的見解が何一つない。

ちなみに、この報告書にいう「レベル3」とは、平時の運転はすべて自動車が行い、人間は非常時に備え待機する段階をいう。したがって、自動運転時の事故は、レベル4と同じになり、非常時に人間に権限委譲を終えた後の事故は、レベル2と同じになる。レベル3固有の問題点は、システム側から人間側へ権限委譲をしている、まさにそのときということになる。

まず技術的に検討すると、この権限委譲をいかに確実に行うかが重要だ。なぜなら、権限委譲がいつの間にか終了していたというのでは、危険極まりないからである。

この点については、自動運転の残り時間を運転者に告知する仕組みが検討されている。2015年1月8日付の「日経テクノロジーオンライン」によると、ドイツAudi社は自動運転中にシステムから人への運転権限委譲に必要な時間は「10秒ほど」と考えており、これに呼応するようにフランスValeo社は自動運転解除までの残り時間をメーターディスプレーで通告する機能を開発したという。

しかし、この仕組みで安全な権限委譲が確保されるかは疑問だ。運転者が躊躇していたり、寝ぼけていて事態を把握できなかったり、そもそも通告に気付かなかったりするうちに10秒が経過してしまえば、自動車は無制御状態になるからだ(10秒経過後も安全に自動運転が継続できるのであれば、それはレベル4であり、レベル3ではない)。また、路面の陥没など外的な要因の場合、権限移譲に10秒もかかっていては対応が遅すぎるだろう。

次に、法律的に検討すると、事故の法的責任が自動車メーカーから運転者に転換する時点はいつか、が問題となる。仮に権限委譲の通告後10秒経過すれば、事故が起きた時の責任が運転者に移転すると定めるれば、自動車メーカーはこぞって通告の閾値を下げるだろう。だが、「運転を代わってくれ」と頻繁に要求する自動運転車は煩わしいので、これを購入したいと思う人は限られるから、このような打ち手は、結局、自動運転自動車の普及を妨げることになる。

おそらく自動運転車が運転者に事前通告して運転の権限を委譲するシステムは、燃料不足や電池残量の低下、電子システムの異常など自動車の内的要因、または大地震など特定の外的要因にまつわる場合に限定されて導入されることになるだろう。また、通告後一定時間が経過しても「路肩に停車する」などの安全措置が講じられるまでは、自動車メーカー側が一定の法的責任を負うことになるだろう。

以上、警察庁があまりに慎重なので、代わりに言ってあげました。

 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2016年3月 | トップページ | 2016年5月 »