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2016年6月20日 (月)

ドローン産業化と物流について

627日、大阪弁護士会の研修で、ドローンの将来について少し話す機会があった。

そこで話したことを記しておく。

 

「空の産業革命」と言われ、華々しく登場したドローンですが、今のところ、ホビーと撮影用途に使われているだけであり、「産業革命」というには、いささか寂しいといわざるを得ません。

インプレス社は、ドローンの市場規模は2020年度に1138億円に拡大すると予測しています。これは、他社の予測に比べ、甘い数字のようです。しかし、1000億円強の市場規模というのは、宅配水や競輪、Jリーグと同レベルに過ぎません。ちなみに、わが国で最大規模なのは、自動車・同付属品製造業の62.5兆円です。1000億円は大きいですが、到底「産業革命」とはいえません。

ドローンが「空の産業革命」の名に恥じぬためには、物流を担うことが必須です。日本の物流市場は、19.7兆円とされています。このうち1兆円程度をドローンが担うのであれば、「空の産業革命」と言っても過言ではないと思います。1兆円などあり得ないとの意見もあると思います。しかし、アマゾンとグーグルが本気で挑戦しようとしていると聞けば、あながちあり得ないともいえないでしょう。

ドローンが物流を担うためには、現在の技術水準を飛躍的に伸ばす必要があります。特に、要素技術として、可搬重量、航続距離、全天候性、自律性、安全性が飛躍的に向上する必要があります。この点について、内外の研究者が開発にしのぎを削っていますが、5年後には、おおむね実用レベルに達していると予想されます。

米国では、要素技術の成熟を前提として、すでに、社会的インフラの整備に取り組み始めています。その一つは「空域の分離」です。この図面はアマゾン社の提案する「ドローンハイウェイ構想」を表していますが、地上150メートル以上を飛行機の飛ぶ空域、地上60メートルから120メートルを物流用土ローンの飛ぶドローンハイウェイ、地上60メートル未満を、ホビードローンや低距離用物流ドローンの飛ぶ空域としています。

次に「ドローンによる分業」です。長距離用には、無人の貨物飛行機が検討されています。ドローンハイウェイを飛行するドローンとしては、翼を持つドローンが、配達用ドローンとしては、マルチコプター型が予定されています。無人の貨物飛行機については、日本でも検討が始まっています。

三つめは、「航空管制」です。ドローンが普及すれば、都道府県あたり数千機以上のドローンが同時に飛び交うことになりますから、航空管制が必須となります。しかも、ドローンは無人なので、人間の管制官が呼びかけても答えてくれません。したがって、ドローンの航空管制はコンピューターシステムが担うことになります。ちなみに小池良次氏のレポートによれば、アメリカでは、低空での管制には携帯電話用の電波とアンテナが有用として、基地局の取り合いが始まっているとのことです。

ところで、わが国のドローン開発の第一人者である千葉大学の野波健蔵教授は、ドローンが墜落する確率「1万分の1以下」を目指すとしています。しかし、ドローンが本格的に実用化すれば、都道府県あたり数千機以上のドローンが飛び交うことになりますから、「1万分の1」の確率では、毎日1機は墜落する計算になります。したがって、ドローンについては、墜落する前提で、制度設計や機械設計を行わなければならない、というのが私の考えです。たとえば墜落時の安全装置については、パラシュートではなく、エアバッグが有効と考えています。

わが国の場合、狭い地域に人口が密集しており、ドローンが墜落した場合のリスクが大きいですから、高空を飛ばす「ドローンハイウェイ構想」にはなじまないのではないかと、私は考えています。むしろ、川の上や海岸沿いの海上など、墜落しても被害の少ない場所に空路を設けてドローンを飛ばす方が合理的です。また、小さな家や集合住宅の多い日本では、当面、戸別宅配は難しいでしょう。したがってドローンは、物流拠点間の輸送を担当することになると予想します。

千葉市では、特区を設けたドローンの宅配実験を進めようとしています。航空法の関係は国土交通省の包括的許可が得られる見通しなのでしょうが、問題なのは警察です。海上を飛ぶといっても、橋の上空を通過するためには、警察に対する道路使用許可申請が必要と言われる可能性があるからです。私などは、「橋の下をくぐればよい」と言っているのですが、技術的にはそう簡単でもないようです。

話はかわりますが、今年の秋、ソニーからプレイステーション用ヘッドマウントディスプレイ(HMD)が発売されます。いよいよわが国にもVR(バーチャルリアリティ)元年が訪れることになります。このHMDは、ドローン搭載カメラと連動させることにより、自ら空を飛んでいるような没入感をもたらすことができます。現行航空法では、承認無くHMDを利用した目視外飛行を行うことは禁止されていますが、解禁されるのは時間の問題だと考えます。なぜなら、鳥になることは人類の本能的な夢ですし、諸外国で解禁されれば、産業育成の必要上、日本で解禁せざるを得なくなるからです。そして、HMDで操作するドローンが普及すれば、女湯を覗いたり、高層ホテルの寝室を覗いたりする輩が必ず現れます。ドローンとプライバシーの問題は、すぐそこまで来ているといえます。

ドローンとプライバシーの問題に関しては、監視社会化のツールとして使われるのではないか、という意見もあります。実際、警察庁は、東京オリンピックの警備にドローンを使用するとしています。しかし、現在のところ、監視用ドローンを運用するためには、最低3人必要です(操縦士、機器操作担当、連絡担当)。多数の高性能ドローンを導入する費用や、人材育成の費用、運用コストや墜落の危険を考えると、街頭監視カメラを増やす方がずっと安上がりで確実ですから、私は、ドローンによる監視社会が直ちに訪れることはないと考えています。もっとも、ドローンの市場規模が大きくなれば、進化のスピードも上がりますから、自動的に障害物を回避して飛行しつつ特定の人を追跡するような機能を備えたドローンが登場する日が来れば、ドローンによる監視社会が訪れるのかもしれません。

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コメント

だーかーらー、女湯なんて、だれも覗きたいと思わないってw
多段腹と二重顎なんて、金をもらっても御免ですww

それが大多数の人ですから、安心してください。

それよりも、通信免許とかにチャレンジしたりとか
そちらのほうの情報にも目を向けてくださいよ!

投稿: やっこさん | 2016年6月27日 (月) 15時48分

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