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2017年9月 4日 (月)

クレーマーの防犯カメラ映像を保存することの合法性について

百貨店などに設置されている防犯カメラの映像は、一定期間が経過すると自動的に消去されるが、例外として、万引などの犯罪行為が録画された場合、その映像は保存される。かかる保存行為が合法であることについて、議論の生じる余地はすでにないと思われる。

しかし、百貨店など施設管理者が保存する映像は、実は犯罪行為だけではない。クレーマーや、店内で宗教勧誘やナンパを行う者の映像を保存していると公言する事業者もいる。

もとより万引犯にも肖像権やプライバシー権はあるが、店側にも被害回復のため証拠を保全する権利がある。万引など犯罪行為の場合に、店側の権利が優先することについて争いはなかろう。だが、必ずしも犯罪とはいえないクレーマーや、宗教活動やナンパについては、来店客の肖像権やプライバシー権が優先するとはいえないのだろうか。

個人情報保護委員会のQ&A6-7には、「いわゆる不審者、悪質なクレーマー等からの不当要求被害を防止するため、当該行為を繰り返す者を本人とする個人データを保有している場合」を前提とする記載がある。このことから、個人情報保護委員会としては、「いわゆる不審者、悪質なクレーマー等が当該行為を繰り返す場合」に記録することは適法と解釈しているものと思われる(もっとも、このQ&Aはカメラ映像ではなく、氏名、電話番号及び対応履歴等としている)。

しかし、百貨店などの顧客は、店に対して買物に専念する債務を負うものではないから、店内で求愛行動をしたり、宗教的勧誘行為をしたりしても、直ちに違法になるわけではないし、店の対応に非があれば、苦情を述べる正当な権利を有する。これらの映像を保存することは、明らかに行き過ぎだろう。

店側の立場に立ち、犯罪行為の記録は当然として、犯罪に至らない民事上の違法行為については証拠保全の権利があると考えたとしても、店内でのナンパや宗教勧誘行為、苦情を述べる行為が、すべて民事上の違法行為になるわけではない。

このように考えてくると、個人情報保護委員会が「悪質なクレーマー等の…繰り返し」に限定してQ&Aを作成しているのは、いいかえれば、「悪質ではないクレーマー」や、「悪質なクレームでも繰り返しにあたらない場合」に記録することは違法、と限定する意図を含むものと解される。

だがそれでも、「悪質」性や、何回目からが「繰り返し」かを誰がどの基準で判断するのか、という問題が残る。店側が専権的に判断でき、だれもチェックできないなら、歯止めがないことと同じだからだ。

また、「防犯カメラ」という利用目的でありながら、犯罪でない行為の保存が許されるのか、という問題もある。

結局のところ、「悪質なクレーマーの…繰り返し」行為についてのみ、記録・保存は合法であるとする個人情報保護委員会の見解は、その妥当性を客観的に判断する仕組みが無いかぎり、中途半端である、といわざるを得ない。

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コメント

もとより、防犯カメラの有効性については今更論ずるまでもないでしょう。それよりも、そのカメラを扱う、一般市民や警備員という名の民間人が、その取り扱いについて、どれほどの閾値を持っているかということです。私からすれば警備業法という法律があるとしても、その縛りと緩さは、誰がどう見てもユルユルなことは異論の無いことと断言できます。そこは、行政や司法に片足でも突っ込んでいる人とは雲泥の差があります。過去、ここで私が述べたようにその痴態は反吐が出るほどの低レベルであったこと、そして、買い物時の不快な思いを赤裸々に述べるコメント諸氏から類推しても、そう断ぜざるをえないと思考されます。庭木がはみ出しているから、「切ってもいいのよね」との間違った法解釈によって、ボキボキと折る人もいますし、ネコを愛するあまりに、糞害を他人に強要し、多大な精神的肉体的衛生的金銭的苦痛を平気で与えておきながら、私は動物愛護の善人ですと、地域の庇護を受けている人たち。政府が作った大量休日にいったいどれほどの人が六法や判例集を見ているでしょうか?

クレーマーという括りについても異論と隙ありありですが、かつて商人はクレームということによって、成長し、より高品質の商品と接客にたゆまない努力を惜しみませんでた。もちろん土下座強要は論外でしょうが、その怒りの原因について、一歩引いて、命の次に大切なお金を扱うというアキンドの誇りが、そこにはあるのではないでしょうか。

全てにおいて、俺は売っている、万引き不審者排除という視点では、企業の成長はありえませんね。そう思うに、今の時代は売るほうは、かつての時代からすれば、苦情は害悪、全ては、お達しの通りにせよ、エスカ右空け似非善人面の東京圏万歳であり、いずれ、全ての面において、この国の行く末は暗澹たる暗雲が立ち込めていると言っても過言では無いと思います。弁護士でも個人の人権権利救済を土台としての発想と、全体国家安泰を一義的思想とする人たちとの違いと言ってもいいでしょうね。とにかく、毎回面白いです。

投稿: やっこさん | 2017年9月 5日 (火) 17時21分

顧客のクレームや苦情を排除する絶対的な自己企業へのねじれた自信と愛と評価。
企業自身の正義感を過大評価し顧客に指導・制裁を加えているとすら考えている。
問題なのは、加害企業は登録した時点で、消費者 顧客を傷つけていると思っていないこと。

小売企業、防犯企業にとっては正義の行為であっても、被害者 顧客にとっては恐怖や嫌悪の精神的暴力行為なのだ。

投稿: 山河 | 2017年11月 1日 (水) 12時20分

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