弁護士会広報と裸の王様
日弁連の機関誌『自由と正義』2012年2月号は、「弁護士会広報を考える」という特集記事を組んだ。いま、弁護士会広報のありかたは、日弁連はもちろん、各地の弁護士会にとって、重要な政策課題になっている。だが、一般市民には、弁護士会が何を広報したがっているのか見えないし、弁護士会自身、どうすればいいのか分かっていないのが現状だ。
2011年8月、日弁連法務研究財団は、「日本の弁護士のイメージ」に関するインターネット調査の結果を発表した(JKL叢書18号 商事法務)。これによれば、国民の持つ弁護士のイメージは、「庶民の味方でも敵でもなく、弱者の味方でも敵でもなく、正義の味方でも敵でもなく、尊敬できるともできないともいえず、どちらかといえば頼りになり、国際的に活躍しているともいえないともいえず、あこがれを感じるとも感じないともいえず、親切だとも親切でないともいえない」。また、「どちらかといえば大企業の味方で、どちらかと言えば金持ちの味方で、悪者の味方とも敵ともいえず、国・行政の敵とも味方ともいえず、どちらかといえばずるがしこく、どちらかといえば偉そうにしている」との集計結果が出た。これについて、上記レポートは、「弁護士の自己認識と大きく乖離しているイメージであるとの意見が出た」としている。
『自由と正義』の上記特集を企画した、日弁連広報室長の生田康介弁護士は、この調査結果を「少なからずショッキングな結果」であるとして、日弁連広報の目的を「人権擁護」「弱者救済」「反権力」「在野」などの弁護士のイメージを市民に理解してもらうことと位置づけている。
どう思われるだろうか?私は、とんだお笑いぐさだと思う。一般国民から見れば、弁護士が「ショッキングと思う」ことがショッキングではないだろうか。
「どちらかといえば大企業・金持ちの味方で、庶民・弱者・正義の味方とはいいきれない」という一般国民のイメージは、かなり正確に弁護士の実態を把握していると思う。庶民や弱者の訴訟代理人弁護士が50人いれば、対する大企業や金持ちの代理人弁護士も50人、というより、大事務所が付くため100人くらいになるのだから。一方、「人権擁護・弱者救済・反権力・在野」という「自己認識」は、一部の弁護士の実態にすぎず、そうでなければ、一部の弁護士がもつ「理想の弁護士像」にすぎない。つまり、いずれにせよ、弁護士一般のイメージとしては、虚像でしかない。だとすれば、生田広報室長が語る弁護士会広報の位置づけは、正確に事実を把握している国民に対して、虚像を理解してもらおうとする試みとなる。たとえるなら、子どもに向かって、「朕は素晴らしい着物を着ているのだぞ」と説得し、「どうしたらこの素晴らしい着物が見えるようになるのだろう?」と悩むようなものだ。
滑稽なだけの広報なら、やめた方がよいぞ。
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